セレクションセールの会場風景
昨年を大きく上回る好成績を収めた今年のセレクションセール
去る7月19日(火)に新ひだか町静内の北海道市場にて開催されたセレクションセール(日高軽種馬農協主催)は、昨年を大きく上回る好成績を収め、活況を呈した。
その前週のセレクトセール終了後の囲み取材で、吉田照哉氏は「今回、買えなかった購買者の方々も多くいたので、来週のセレクションも売れるんじゃないでしょうか」と推測されていたが、果たしてその通りの結果となった。
会場ではまず当セール出身馬であるビッグアーサー(高松宮記念)とホッコータルマエ(ダートGI/JpnIを10勝)の馬主である中辻明氏と矢部道晃氏に対し木村貢・日高軽種馬農協組合長より記念品の贈呈からスタートした。
木村貢組合長より記念品を贈呈された、中辻明氏(右)と矢部道晃氏(中)
あいにく朝から小雨が断続的に降り続く天候となったが、定刻通り午前10時よりセールが開始され、いつも出足がやや鈍くなる例年とは打って変わって、1番のロードカナロア産駒(母シタール、牡鹿毛、松浦牧場生産、飼養管理者チェスナットファーム)からいきなり3000万円超の価格(落札は税抜き3100万円)まで競り上がり、会場内の人々を驚かせた。7割超えの売却率と20億円を初めて突破した昨年の同セールでもついに3000万円の壁は超えられずに終わったのだったが、今年はいきなり最初の上場馬からあっさり昨年の最高価格を上回る落札価格を叩き出した。
1頭目から昨年の最高価格を上回る3100万円で落札(シタールの2015)
セリ開始当初は、売却率こそやや低めに推移したものの、これはという上場馬には多くの購買者が競り合いに加わり、価格は見る見る間に上昇し続けた。24番の母ムーンザドリーム牡馬は父ルーラーシップで、すぐに最高価格が更新され3900万円(税抜き)まで数字を伸ばした。
その後も2000万円台、3000万円台の落札馬が次々に誕生し、ついに46番の母テンイムホウの牡馬(父ルーラーシップ、黒鹿毛、辻牧場生産)が登場すると1200万円からスタートした競り合いは5000万円(税抜き)にまで到達した。セレクトセールならばいざ知らず、このセレクションでは久しくお目にかかったことのない価格であった。
価格のばらつきはあるものの、次々に上場される馬たちはほぼまんべんなく売れて行き、終日大きな落ち込みもないままにセリが終わった印象である。
昨年20億5858万円(税込)を売り上げ、同セール史上初の20億円超えを記録したのだったが、今年は一気にそのレコードを塗り替え、終わってみれば、238頭(牡165頭、牝73頭)の上場馬のうち175頭(牡127頭、牝48頭)が落札され、総額25億2590万4000円まで数字を伸ばす結果になった。
昨年との比較では総額で4億6731万6000円の増、売却率も73.53%と昨年より1.63%上昇し、平均価格もまた昨年より203万2604円多い1443万3737円(牡1655万2913円、牝882万6750円)となった。
何より評価されるのは、今年は欠場馬の少なかったことである。他のセールと比較するとセレクションは比較的出場率の高いセリと言われてきたが、今年の場合は、名簿上242頭いる上場予定馬のうち欠場がわずか4頭にとどまった。従来、ともすれば庭先で“青田買い”され、当日欠場するケースが少なくなかった(しかも注目馬ほどそういう傾向があった)苦い歴史があるのだが、明らかに時代が変わったと実感させられた。
また、今年(に限らないことかもしれないが)のトレンドは、新しい種牡馬の産駒たちであったこと。初年度産駒がデビューしたばかり(すでに2勝している)ルーラーシップや来年デビュー予定のロードカナロアなどの産駒の注目度が高く、価格も概して高めであった。税抜きで3000万円以上の落札価格馬は全部で11頭に上ったが、そのうちルーラーシップとロードカナロアの産駒がともに3頭ずつを占めたことからも、こうしたフレッシュな種牡馬により目が向けられる傾向が強かった。ディープインパクトやキングカメハメハには到底手が届かない生産者でも、ルーラーシップ(当初250万円、今年は300万円)や、少し無理をすればロードカナロア(500万円)には手が届くわけで、これらの種牡馬には日高からも多くの牝馬が交配に通っていた。そうして生まれた生産馬が、市場に上場されるようになったわけで、前週のセレクトセールで買いそびれた購買者の目にとまった上場馬が高く評価されたということになるだろう。
繰り返しになるが、最高価格馬は46番テンイムホウの2015(牡黒鹿毛、父ルーラーシップ、販売申込者・(有)辻牧場)の5400万円(税込)、落札者は(同)雅苑興業。
46番「テンイムホウの2015」の落札場面
46番「テンイムホウの2015」の立ち姿
次点は229番レオソレイユ2015(牡鹿毛、父ロードカナロア、販売申込者・(有)谷口牧場、飼養管理者・(有)浦河育成センター)の4428万円(税込)であった。
229番「レオソレイユの2015」の落札場面
229番「レオソレイユの2015」の立ち姿
また牝馬の最高価格馬は191番エーシンラージシー2015(父サウスヴィグラス、黒鹿毛、販売申込者・栄進牧場、飼養管理者・(株)愛知ステーブル)の2808万円(税込)。因みに税抜き価格2000万円以上で落札されたのは全部で36頭いたが、牝馬はこの馬のみで、圧倒的に牡馬の方が高いセール結果であった。
今回のセールを振り返り木村貢組合長は「嬉しい結果であることはもちろんですが、逆にこの水準をどうやって維持して行けるかと考えると責任の重さも感じます」としながらも、「多くの購買者の方々に来場して頂いてひじょうに良い成績を残せたことに感謝します。またサマーセールにもぜひお越し下さい」と続け、90点の採点で結んだ。
なお、来るサマーセールにはこれまで最多の上場申し込みがあるようで、日程を4日間から5日間に延長することがすでに決定している。8月22日(月)より26日(金)までの長丁場だが、次は選抜された馬ではなく、日高を中心にした「普通の1歳馬」たちが多数上場されることになる。今回の好成績がサマーセールまで波及するのかどうかを見極めたいと思う。