販売収益のすべては、メイセイオペラの記念碑の建立資金に積み立てられる
メイセイオペラの功績を称えたい
赤見:メイセイオペラの記念碑を設立しようと考えるキッカケは何だったんですか?
井上:7月に韓国でメイセイオペラが亡くなって、すごくショックを受けました。2年前の春に会いに行った時は元気すぎるくらい元気で、こんなに早く亡くなるとは思っていなかったので。最後は日本で余生を送って欲しいという想いをたくさんの方が持っていた中で、突然亡くなってしまったことは本当にショックだし残念でした。
その後日が経つにつれて、メイセイオペラのことを伝えて行くことが必要なんじゃないかと思うようになったんです。岩手競馬の場外馬券売り場が東北の各地にあるんですけど、そこにトークショーとかで行った時に、20年近く前のメイセイオペラの単勝馬券を見せてくれるおじいさんがいたり、すごく嬉しそうに想い出を話す方がたくさんいるんです。亡くなったことを知って悲しかったんですけど、想い出話を耳にする機会が増えて、そういう話を聞くのは楽しくて。メイセイオペラを愛する方々に接するうちに、何とかして伝えて行きたいなと思ったことがキッカケです。
赤見:まずはどんなことから始めたんですか?
井上:最初はメモリアルブックみたいなものを作りたいなと思ったんですけど、いろいろなことを考えているうちに、笠松競馬場にはオグリキャップ像があって、大井競馬場にはハイセイコー像があって、競馬ファンに今でも愛されている。わたしなんか生で見たことない名馬たちだけれど、像のところで写真を撮ったり、当時のことを調べたりして。そうやって今でも功績が称えられていることを考えたら、岩手にもメイセイオペラの功績を称える何かがあるべきなんじゃないかって、勝手な使命感に燃えまして(笑)。
赤見:勝手な使命感なんですか(笑)。
井上:そうですね、ナゾの使命感です(笑)。わたしは外から来た人間だから余計に思うのかもしれないです。近い場所からずっとメイセイオペラを見て来た方の中には、自分の中で想い出として大切にしていて、別に記念碑がなくても…という方もいるので。人それぞれいろいろな形があっていいと思うんですけど、でもあれだけの名馬なので、何かもったいない気がするんですよね。それで、岩手競馬に関係する方達に相談してみたら、ポストカードを売ってその収益で、水沢競馬場に記念碑を建てるのがいいんじゃないかということになりました。そしてメイセイオペラに深く関わった方々にご賛同いただいて、動き出したんです。
菅原勲調教師とメイセイオペラ
赤見:ここまで活動してみてどうですか?
井上:想像以上にたくさんの方々に協力していただいています。一番最初は南部杯の前日に東京競馬場で売らせてもらったんですけど、岩手場外がある101号投票所での販売だったので、岩手競馬ファンの方や、岩手出身の方がたくさんいらっしゃって。「メイセイオペラが勝ったフェブラリーSをゴール前で見ました!」とか、「競馬を好きになった頃に活躍していて大好きだった」とか、いろいろなお話を聞かせてもらいました。やっぱりメイセイオペラは特別な存在なんだなって思いましたね。
次の日の南部杯当日は盛岡競馬場で売らせてもらったんですけど、今度は『南部杯をゴール前で見てた!』とか、『今でもポスターを飾ってる』って話をおじさんたちが嬉しそうにしていて。そういうのを聞くのが本当に楽しいですね。西日本ダービー当日の園田競馬場、JBC当日の川崎競馬場でも売らせてもらって、ここまで40万円くらいの収益になりました。ポストカード販売だけじゃなく、募金の方もたくさんの方々が協力してくれています。
メイセイオペラのポストカード
赤見:第一の目標金額は150万円ですよね。
井上:150万円あれば記念碑が建てられるんですけど、どんな素材でどんな形になるかは、業者の方と相談したいと思っています。現時点では、「メイセイオペラの勇姿を彫刻して、小野寺オーナーがわけてくださった遺髪を納める」というイメージです。今年中に第二目標の200万円を越えた場合、馬像も検討する予定ですが、そのあたりはまだ流動的ですね。
赤見:ナゾの使命感に突き動かされたということですが、オークスさんにとってメイセイオペラとはどんな存在ですか?
井上:現役時代は、ちょうどわたしが競馬をやり始めた頃で、中央と地方の違いも全然わかってなかったんです。だから、メイセイオペラの本当のすごさもわからなかったし、「岩手にも競馬場があるんだ〜」くらいにしか思っていなくて。その後取材する側になってみて、どれだけすごい馬なのかヒシヒシと感じるようになりました。
例えば、お酒の席だったんですけど、斎藤修さんがメイセイオペラの話をしながら涙ぐんだことがありました。男の人がみんなの前で涙を見せるって、よっぽどのことじゃないですか。だからけっこう衝撃的で、「みんなどれほどの感動を味わったんだろう」と思いました。他の方も当時のことを楽しそうに話していて、そういうのを聞いていたら「わたしも府中で勲コールしたかったな」って思って。いつかメイセイオペラのような馬を取材したいってずっと思っているんですけど、なかなか出て来ないんですよ。なんていうか、追いかけても届かなくて、すごく眩しい…そんな存在です。
赤見:ちなみに今、岩手にお住まいなんですよね?なんでですか?
井上:なんでですかね(笑)。岩手競馬が好きっていうのが大きいですけど、東日本大震災があって、競馬ができない日々が続いた時があったじゃないですか。それもあって、「絶対競馬場を残さなきゃ!」って思って。これもナゾの使命感だったんですけどね(笑)。岩手って、地方競馬の中でも全国交流が多くて、外に開いている競馬場なんです。そういうところが好きですね。
赤見:中央競馬はもちろん、地方競馬も大好きですね。
井上:大好きですね〜。地方の面白さは、馬券が当たりやすいところです。上位の騎手を覚えれば、それだけで馬券が買えるようになるし。同じメンバーで戦っているというのは否定的に言われることも多いですけど、馬も人も比較しやすいので馬券が買いやすいんですよ。たとえ安くても、当たるのが楽しいです!
赤見:では、ファンのみなさんにメッセージをお願いします。
井上:競馬場やウインズで配布されている「うまレター」というフリーペーパーがあるんですけど、11月号の綴じ込み別冊が「追悼メイセイオペラ特集」なんです。楽天競馬さんが、全面的にバックアップしてくださって。関係者のお話も興味深いですし、森内智也さんの写真も最高にカッコよくて、永久保存版です!
1999年フェブラリーS優勝時(撮影:森内智也)
また、ゆうちょ銀行に口座を設けて寄付を募っています。そして11月20日(日)、ダービーグランプリ当日の水沢競馬場でポストカードを販売し、併せてオークションも予定しています。あとは年末から来年2月のフェブラリーSの頃にかけて、各地の競馬場でイベントを計画しているところです。ブログ(
http://ameblo.jp/meiseiopera2017/)やFacebook(
https://www.facebook.com/meiseiopera2017/)で発信していきますので、ぜひチェックしてみてください。
競馬ファンあるあるで、馬券の負けが込んで来た時とかに、「競馬場のあの柱は俺が建てた」とかって言うことあるじゃないですか(笑)。そういう感覚と同じで、「メイセイオペラの記念碑、俺たちが建てたよ」って思ってもらえたら、すごく近い存在になるんじゃないかなって。来春の水沢競馬開幕か、メイセイオペラが三連覇したみちのく大賞典に合わせてお披露目できたら…と思っています。ご協力よろしくお願いします!