2400m級でも能力減はない
注目の
ソウルスターリング(父フランケル)が好位のインからスパッと抜けて3戦3勝となった。レース全体の流れは「前半46秒7-後半47秒3」=1分34秒0。
改装直後の高速の芝で、まして勝ったのがウオッカだった2006年の1分33秒1を別にすると、最近10年では、2007年の1分33秒8(トールポピー)、2013年の1分33秒9(レッドリヴェール)につづく3番目の好タイムである。
バランスの取れたレースの流れにより、上位5着までに入ったのは、6番人気以内の高い支持を受けた人気馬ばかり(4番人気の
ジューヌエコールはかかって11着)。勝ったソウルスターリング、そして2着
リスグラシュー(父ハーツクライ)は、時計、レースの中身から、文句なしに来季のクラシック候補となった。
ソウルスターリング自身のレースの中身は推定「前半47秒4-(1000m通過59秒2)-後半46秒6(上がり34秒8)=1分34秒0」であり、同じ阪神の1600mで行われる桜花賞のレベルに早くも達していると考えられる。
父フランケル(その父ガリレオ)の種牡馬としての優秀性は世界でも確かめられつつあるが、ソウルスターリングの馬体はバランス抜群。力強いスピード型というより、バネの利いた鋭いフットワークが持ち味であり、2000m、さらには2400m級でも能力減はないだろう。C.ルメール騎手とのコンビで仏オークス2100mを4馬身差で制した母スタセリタ(父モンズーン)は、ヴェルメイユ賞2400m(短首差からの繰り上がり)制覇もルメールだった。全10勝中の8勝までが2000m以上の記録がある。どこまで似ているかは分からないが、ルメールは母スタセリタで3歳時に芝2000m以上のG1を3勝している。そんな無形の強みが加わりそうである。
ソウルスターリングのファミリーはドイツの名牝系として日本でも知られ、ブエナビスタの4代母ズライカ(54年独産。マンハッタンカフェの3代母でもある)は、ソウルスターリングの7代母シェへラザード(52年独産)の全妹である。
前出のトールポピー(08年のオークス馬)は、今回のソウルスターリングと同じように最初は1800m以上だけに出走のあと、初距離1600mの阪神JFを制している。3歳になり桜花賞に出走するトップグループは、順調にいくほど(チューリップ賞→桜花賞)、オークスの前に1800m、2000mのレースに出走は難しい。ソウルスターリングの大目標がやがてのオークス2400mとするなら、すでに東京1800mを楽々とこなしている経験が大きな強みとなるだろう。
2着リスグラシューは、スタートで約2馬身の出遅れ。ずっと最内を通って好位追走となった勝ち馬に比べると、18番枠から終始馬群の外を回ったので、走った距離の差はイメージ以上に大きい。直線、外から伸びて1馬身4分の1差。記録上は完敗とはいえ、上がり34秒5はメンバー中の最速である。ソウルスターリングも余力十分の完勝だったが、リスグラシュー(戸崎騎手)もロスを克服して連対確保(2番人気)が見えた時点でもうそれほど無理に追っていなかった。各馬ともに当面の目標のG1出走とあって、ほとんどの馬が馬体重減のなか、リスグラシューは素晴らしい追い切りをこなしながら、今回は当日輸送でプラス6キロ。434キロはデビュー以来最高だった。陣営は、敗戦を残念がるより、桜花賞に向けての手ごたえに納得だろう。
牝系はフランス色が濃く、母リリサイド は仏5勝。10年の仏1000ギニー6着(1位入線降着)がある。その父アメリカンポスト(英)は2004年の仏2000ギニー馬で、3代前の父がシーバード。昨15年の仏2歳種牡馬ランキング1位ではあるが、短距離タイプというわけではないマイラー系種牡馬。リスグラシューはハーツクライ産駒。今回の内容から、桜花賞の1600mだけでなく、3歳牝馬同士なら2400mもこなせる範囲と思える。ソウルスターリングとほとんど互角の評価の候補としたい。
3着
レーヌミノル(父ダイワメジャー)は、前回の京王杯2歳Sの2着が少々弱気な先行策と映ったが、その意識的に少しひかえて進んだレース運びと、中間の素晴らしい調教が上昇につながり、今回は好位追走から追って伸び1分34秒5。先着を許した2頭にはスケール負けの印象はあっても、阪神の1600mをこなした自信は大きい。好タイムで小倉2歳を圧勝した内容が強烈だったため、早熟系のスピード型とみられていたが、少なくともマイル戦までは平気。祖母プリンセススキー(父ロイヤルスキー)は2歳時にマイル重賞を制したあと、古馬になってからは不振だったが、故障の長い休養があったためで、早熟系というのではなかった。
人気のソウルスターリングをマークする形になった4着
ディーパワンサ(父ディープブリランテ)は、前回の脚を余した印象から、もっと追って伸びるかと思えたが、コースも流れも大きく異なるのに、デイリー杯2歳Sが1分34秒7、阪神JFも1分34秒8。まだこれから成長するはずだが、今回の内容はもう一歩だった。
4番人気のジューヌエコール(父クロフネ)は、好位追走から失速気味に1秒6差の11着。中間の動きは上々、当日の気配も決して悪くなかったが、前半からずっとかかり気味で鞍上とリズムが合っていなかった。若い2歳牝馬ゆえ、ちょっとしたことで凡走は珍しくないが、目標としてきたレースで乗り替わりを余儀なくされ、それで失速は痛い。