▲GI(格)10勝の名馬・ホッコータルマエを総力特集(撮影:高橋正和)
今年の東京大賞典を最後に現役引退が予定されていたホッコータルマエ。しかし、チャンピオンズCに向けた調教後に脚部不安を発症。大井競馬場での引退式開催も見送られ、そのまま種牡馬入りすることになりました。netkeibaでは歴代最多となるGI(格)10勝の偉業を成し遂げた名馬に敬意をこめ、引退式に代わる特集コラムを企画。関係者インタビューをはじめ、その功績を多方面から振り返ります。(取材・文:大恵陽子)
主戦・幸英明騎手「記録達成の時はホッとした気持ちが大きかった」
▲全39戦中ドバイを含む34戦で手綱を握った幸英明騎手(撮影:大恵陽子)
初めてホッコータルマエに乗った3歳500万下のレース(2012年4月7日)を勝って、力のある馬だなと思いました。ただ、そこそこ上のクラスでもやれるとは思ったのですが、この時はまだGIで活躍っていうイメージはなかったんです。レースを重ねるたびに、どんどん馬が強くなったという感じです。総合力の高い馬でした。
実は…引退した今だから言えるのですが、揉まれると力が出せない馬だったんです。気づいていたライバル陣営もいたかもしれませんが、なるべく現役時代は知られないように、と思っていました。でも、タルマエはスタートが速かったので揉まれずにレースができました。特に地方競馬に行くと、JRA勢を中心とした馬で先団を形成することが多く、少頭数で走れてレースがしやすかったです。後ろから馬が来ればハミを取ってくれますが気を抜くクセがあったので、地方競馬の短い直線も合っていたんだと思います。
印象に残っているレースの一つに去年のドバイワールドカップ5着があります。ずっと内を走っているカメラを気にして、顔は左を向いているんですが肩から体は外に逃げていました。
▲2回目の挑戦となった15年ドバイワールドC 「カメラを気にして、肩から体は外に…」(撮影:高橋正和)
制御しながら乗っていたのですが、集中して走ってくれていたらどこまで頑張ってくれたかな? って思います。でも、3年連続でドバイに連れて行ってくれて、たくさん経験をさせてもらい感謝しかありません。GI最多勝記録が見えてからは、タルマエだけでなくオーナーや調教師、関係者のみなさんのためにも記録をとりたい気持ちと、自分に責任があるという気持ちとで、記録を達成した時は嬉しさよりもホッとした気持ちの方が大きかったです。
年内あと2走で引退の予定だったので、さらに1、2勝積み重ねられればと思っていました。なので少し早い引退は残念でしたが、もしレースに出走していたら取り返しのつかない怪我になっていた可能性もあったと思うので、元気なまま引退できて本当によかったです。タルマエは今まで充分頑張ってくれましたから。これからはいい仔をたくさん輩出してほしいですし、タルマエの仔たちに乗せてもらえたら…!と思うとすごく楽しみです!
同馬管理・西浦勝一調教師「巡り会えてありがとう」
▲「誰も経験することがない事を経験させてくれました」と笑顔で語る西浦師(撮影:大恵陽子)
ホッコータルマエは