▲矢作厩舎の門下生インタビュー、今回の登場は注目の若手トレーナー・松下武士調教師
『2016年全国リーディング 特別企画』
2014年以来、2度目のリーディングに輝いた矢作厩舎。調教師、ジョッキー、スタッフ、門下生らのインタビューから、“厩舎力”に迫る特別企画。“矢作イズムを引き継ぐ”門下生のインタビュー、今回の登場は開業3年目を迎える松下武士調教師です。
年々勝ち星を伸ばし、今年のクラシック戦線をにぎわせそうな馬も控えている、いま最も注目の厩舎。早期活躍の秘密は何なのか―話を進めていくと、要所要所に矢作厩舎のシステムを取り入れていることがわかりました。
(取材・文:不破由妃子)
調教師試験の面接練習を矢作先生が
──開業2年目の昨年は、勝利数を1年目の15勝から28勝に伸ばし、阪神ジュベナイルF(ディーパワンサ、4着)では、初めてGIの舞台にも立たれて。一躍注目の厩舎となりましたね。
松下 ありがとうございます。馬とスタッフが頑張ってくれた結果だと思っています。まぁ、自分としては、ちょっと出来過ぎかなという気もしますが(笑)。
──飛躍の決め手はどう分析されていらっしゃいますか?
松下 大きく見直したことなどはないんですが、牧場の方との感覚の擦り合わせが1年目よりスムーズにいった実感はあります。どんな状態で戻してほしいか、その感覚にズレがあると、いろいろと弊害が生じてきますからね。
馬の入れ替えをスムーズに行うには、やはり牧場の方との連携が必要不可欠ですし、放牧中の馬の状態もすべて把握していなければならない。そのあたりは、矢作先生を見習っているつもりです。
──開業前は9カ月間、技術調教師として矢作厩舎で学ばれたそうですが、矢作先生とはそれ以前から交流があったのですか?
松下 調教師試験では、二次試験として面接があるんですが、その練習をずっと矢作先生がしてくださっていたんです。2回目の試験で二次までいって5回目で受かったので、4年連続してお世話になりました。
そのきっかけを作ってくださったのが、今、矢作厩舎で助手をされている渋田さんで、渋田さんは安田伊佐夫厩舎のOBなんですよね(松下師は、2004年〜2009年まで安田伊佐夫厩舎に所属)。僕は、調教師試験の勉強会にまったく参加していなかったんですが、そんなときに渋田さんが「自分ひとりで勉強するのもいいけど、いろんな人の考え方を聞いたほうがいいよ。行ってみたら?」と声を掛けてくださって。そこで矢作先生ともお話するようになって。
──そうだったんですね。それにしても、矢作先生が面接の練習をしてくださるとは。
松下 そうですよねぇ。森田先生も一緒だったんですが、厩舎に伺うこともあれば、ご自宅に呼んでいただいたこともあって。お忙しいなか、毎年お時間を作ってくださいました。今となっては、森田先生、伊藤大先生、西村先生、青木先生と、門下生がだいぶ増えましたよね。
矢作先生はとにかく親分肌で、本当に面倒見のいい方なんです。──それはみなさんのお話を伺っているだけでものすごく伝わってきます。その流れで、研修先には迷わず矢作厩舎を選ばれたんですね。
松下 そうです。ご存じの通り、矢作厩舎は出走回数がすごく多くて、それがきちんと勝ち鞍につながっている。
馬主さんからすれば理想の厩舎だと思いますし、そのあたりを勉強させていただきたいなと思って。