ゴールドケープ(写真提供:東京スポーツ)
「素質は感じていたけど、運にも恵まれている」
1年後の未来を正確に予測することは、言うまでもなく難しい。どれだけ優れた経済学者でも、ますます高性能になっていくスパコンでも、恐らく来年の世界経済の状況を正確に当てることはできないだろう。毎日の天気予報ですら、なかなか正確にはいかないように、どの分野においても「予想」ほど難しいものはない。
誤解のないように言っておくと、記者の毎週の予想が当たらないのも当然、と遠回しに開き直っているわけではない。ちなみに橋下徹元大阪府知事がカジノ誘致の際だかに、ギャンブルを肯定する流れのなかで「賭け事は未来を予測する訓練になる」と言ったことがあったかと思う。これには目からうろこが落ちる思いがした。家庭では肩身の狭いお父さん方は、この言い回しをぜひ使ってほしいもの。家族からの白い目もいくらかは…。
話がそれたが、本題はここから。およそ1年前に「ひょっとしたら、いいところまでいくかも」と荒川キュウ舎の佐藤助手が“予言”した馬がいた。キュウ舎ゆかりの血統馬ゴールドケープだ。勝ち気だったジュエルオブナイル(小倉2歳Sなど、現役時4勝も、桜花賞は18着惨敗)の初子だけに、個人的には気性面が心配でならなかったが、「抜くところは抜ける、賢さがある。こういう馬は走ってきそうな感じがする」と佐藤助手は評したのだ。そのあたりのことを含めつつ、先週の投票所で本人を直撃したところ、こんな答えが返ってきた。
「早いうちから素質は感じていたけど、あの馬は運にも恵まれているんだ。前走(フィリーズR3着)はゲートで突っかけて、後ろに重心が移ったところでスタートが切られた。それで位置取りが一番後ろになって、馬も今までにないくらい前に進んで行かない感じ。正直、“こりゃダメだ”と思って見ていたら…。直線で内がゴチャゴチャしたのに対して、(最後方だった)ウチのは外を何の不利もなく回ってこれた。仮にいつものようにスタートしていたら、あの不利に巻き込まれていたかも…。だから運があるって感じるんだよね」
フィリーズR3着で桜花賞へのチケットをつかんだ要因を謙虚に「運」と言ってしまうのがこの人らしいが、素質をいち早く見抜き、気性のケアをしつつ、馬を鍛え上げてきた、佐藤助手をはじめとしたスタッフの尽力があってこそ、ゴールドケープの今があるのは言うまでもない。
恐らく当事者たちも意識はしていないのだろうが、「この馬なら」と手応えを感じ、信じ続けて世話をしてきたことこそが“予言”が現実となった最大の要因なのではないか。自らの頭と体を使って、現実になるように努めていける点では、うさんくさいアナリストよりも、ずっと信頼できる人たちなのだと改めて実感する次第だ。
果たしてゴールドケープは桜花賞でどんな走りを見せてくれるのか。これも興味深いところだが、POGコラムという性格上、また新たな予想をしなくてはならない時期でもある。そこで2歳世代の情報も。
音無キュウ舎の2歳馬は先週末にはもうノーザンファームしがらきまで4頭ほど来たそうだ。うちアンチェイン(母サムワントゥラブ)、マイグッドネスの15は、ともにディープインパクト産駒の牡馬。「5月初めに栗東に入れて、順調なら(6月にも)デビューの方向で」と音無調教師は今から気合が入っている。
悲願の日本ダービー制覇へ、現3歳世代にもアメリカズカップ、ダンビュライト、アドミラブルと「候補生」は多い音無キュウ舎だが、記者の当てにならない“予言”は、その1つ下の世代をより注目してほしい。