年末GIでも活躍しそうな馬を探せ/吉田竜作マル秘週報
◆暮れの大舞台で上位入線がイメージできる
開催最終日(23日)の函館競馬場では、2歳世代最初の重賞、GIII函館2歳S(芝1200メートル)が行われる。来年のクラシックに直結するレースかと聞かれれば正直、微妙だが、それでも一昨年の勝ち馬ブランボヌールは後に阪神JF3着、昨年の2着馬モンドキャンノも朝日杯FS2着と健闘した。ひところの「この時期に稼いで、その後は…」というイメージは脱した感もある。基本的には完成度の高さで人気が形成されるレースだが、暮れの2歳頂上決戦でも勝ち負けが期待できる馬を“逆算”して考えてみるのもひとつの手か。
函館開催開幕直前のことだ。めったに連絡してこない荒井記者が函館から電話を入れてきた。
「西園キュウ舎のリンガラポップス。いい馬ですね」
実際、開幕週の新馬戦で1番人気に推されたほどで、誰が見てもいい馬なのだが、調教にまたがる田中助手の見解はちょっと違ったそうだ。
「来る記者、来る記者が“いい馬だね。走るんでしょ?”と聞いてきたんですが、そのたびに“いやいや、見栄えはいいですけど、まだ乗ったら緩いし、速い追い切りも2本しかやってないんですよ”と返していたんです。それでも結局、1番人気ですもんね。周りも評価し過ぎですよ」
記者の立場から言うと、走りそうな馬は仮にネガティブな話を聞いても、「それだけ期待が大きいからなんだろう」と捉えがち。予想をする側がそうした判断をした結果、1番人気に祭り上げるお手伝いをしてしまった面もあろうか。
結果、新馬戦は人気的には“期待を裏切る3着”に終わったわけだが、誤解しないでほしいのは田中助手のリンガラポップスへの評価が低いわけではないこと。「ウチのは5月生まれですからね。初戦の勝ち馬と2着馬は(それぞれ2、3月と)生まれも早いうえに、栗東でもしっかり乗り込んでいた。ウチのは牧場から直接函館に入ってきて、この時期に使えたこと自体がすごいことなんですよ。そんな状況でも調教に耐えてくれているし、気性が素直で、センスもいい」と素材の良さは十分に認めている。
未勝利戦を勝ち上がり、3戦目で迎える今回の重賞挑戦。誤解を恐れずに言えば、陣営の狙いはここにはない。
「少なくともマイルまでは持ってほしいし、騎手(北村友)もそういうイメージで乗ってくれている。だから、あまり攻めたくもないんですよね。それにこの母系は緩い馬が多いらしいのですが、その中でパンとした馬は大成するそうなんです」(田中助手)
そう、確実に秋以降の活躍を見込んでいる発言。だからこそ暮れの大舞台でも上位入線がイメージしやすいし、まだまだ完成途上といえども、冒頭に挙げた近年の連対馬のパターンに当てはまる。
「今回が3走目。確実に上向いてきているとはいえ、馬にとってはきついところもあるだろうけど。もう1回頑張って、この先につながる走りをしてほしいですね」と田中助手。現時点での数字のインパクトは弱いかもしれないが、こういった狙い方も“アリ”ではなかろうか。