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ド派手デビューなるか 松田厩舎久々の大器レッドヴァール/吉田竜作マル秘週報

  • 2017年08月30日(水) 18時00分


◆“マツクニ流”の洗礼すらクリアしてしまっている

 サラブレッドのトレーニングには明確な正解はなく、突き詰めていけば「馬によりけり」だ。

 基本的には群れで生活する動物なので、現在はそうした習性を活用した集団調教が主流に。つまり、馬と人の相性だけではなく、馬同士の相性や調教の狙いなどで、やり方もいろいろと変わってくる。そのため、どのキュウ舎でも火曜や水曜の午後は、一緒に調教に向かう馬の組み合わせから、キュウ舎を出る順番、そして併せ馬のコンビまで熟考した上で決めるスタッフの姿をよく目にする。

 そこまで複雑化している状況ではあるが…。難しい要素を取っ払った上で確実に言えることは、調教でかける負荷は日々、強くなっているということだ。

「ここまでくるとチキンレースみたいなものだよ。調教をやれば結果が出るのは間違いない。だから時間も負荷も、よりかけるようになっている。当然、故障のリスクも高まるが、そのギリギリのところを攻めていかないと勝てない。そこで降りてしまえば、終わりなんだよ」(某調教師)

 こうした流れをまず最初に作ったのは坂路調教のパイオニアにして“準3冠馬”ミホノブルボンをつくり上げた故・戸山調教師だろう。この人がいなければ、現在の坂路施設の充実も、そこから派生したトレーニング理論の進化も、かなり遅れていたに違いない。

 そして“中興の祖”と言うと大げさかもしれないが、より鍛えることにかじを傾けたのがクロフネ、タニノギムレット、キングカメハメハ、ダイワスカーレットといった数々の名馬を送り出した松田調教師ではないか。

 もちろん、松田調教師の功績の陰には故障という負の側面もついて回る。だからこそ、「馬は能力以上に走らないし、必要以上に鍛えても無駄。故障のないように数を使ってやるのが一番大事」と言い切る調教師も数いるわけだが…。

 一方で角居、友道、高野といった「マツクニキュウ舎」出身のトレーナーが、やはりハードな調教を課すことで実績を伸ばし続けているのもまた確か。こうした“松田フォロワー”の成功が、改めてその存在感、影響力の大きさを物語っている。

 そんな松田調教師が「これは大きいところに行けるかもしれません」と評する2歳馬がレッドヴァール(牝=父ディープインパクト、母レッドヴァージン)だ。

 先週23日には2歳未勝利馬とウッドで併せ、馬なりのまま手応えで圧倒。刻まれたタイム6ハロン86.5秒、上がり3ハロン38.4-11.7秒を見ても、父譲りの瞬発力が見て取れる。さらにこのキュウ舎らしいのが「ウッドで追い切る前に、坂路を1本(4ハロン74.4-14.8秒)上がってのものですからね」(松田調教師)。

 軽めのキャンターといっても、坂路を1本上がってから本追い切りという流れは、デビュー前の2歳馬にとっては大変な負荷になる。すでにこの馬は、そうした“マツクニ流”の洗礼すらクリアしてしまっているのだ。

 次週からは、いよいよ秋競馬が開幕。素質馬の多くは中央場所まで“温存”されるため、夏の小倉最終週の新馬戦(9月3日=芝1800メートル)は質量ともに手頃な顔ぶれになることが多い。久しぶりに出てきた松田キュウ舎の大器が、ド派手なデビューを飾る可能性はかなり高かろう。馬券的には堅軸になりそうだが、当コラム的には後々に語り継がれるような走りを期待している。

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