▲豪遠征記の最終回!小崎騎手が4か月間の思いをぶつけます
またオーストラリアに戻ってくる気持ちがあります
netkeibaをご覧の皆さん、こんにちは。小崎綾也です。
8月末から始まったオーストラリア遠征も、今週が最後となりました。約4か月の遠征でしたが、終わってみればアッという間でした。
楽しみにしていた遠征ですし、不安もそこまではありませんでしたが、「遠征が終わったときに自分自身がどう変わっているのか」はオーストラリアに来るまで想像がつかなかったです。
遠征を終えた今の率直な気持ちとしては、本当に来てよかったと思っています!! 思っていた以上に素晴らしい経験となりました。最終回となるコラムでは、これまでのことや最後の2週間を振り返りつつ、自分の思いを伝えたいと思います。
まずはじめに、オーストラリア遠征を終えるにあたって、これまでサポートしてくださったすべての方に感謝したいと思います。
僕の「海外に行ってみたい」という意志を汲みとって今回の遠征のチャンスをくださった方々、クリス・ウォーラー厩舎と繋がるきっかけとなったヒュー・ボウマン騎手、日本の若手騎手である僕を4か月間受け入れてくださったクリス・ウォーラー調教師、そしてこちらに来てから日々支えてくださった方々…。僕一人の力では、今回の遠征が始まることも、終えることもできませんでした。
改めてすべての方々に感謝します。本当にありがとうございました。
オーストラリアに来た当初は、4か月間どういった時間を過ごすことになるのかわからなかったですし、どれくらい馬に乗ることができ、そしてレースに騎乗することができるのかもまったくわかりませんでした。実際は、こちらでの生活が始まって数日後に調教騎乗、3週間後にはレース騎乗もさせていただきました。
▲現地の関係者とは、密なやり取りをしてレースに臨んだ
僕は馬に乗ることが好きなので、馬に乗れる生活が始まってからは毎日が充実していて、レース騎乗が始まってからは、1週間が本当に早かったです。
今回の遠征で、クリス・ウォーラー調教師には計23回、またゲリー・ムーア厩舎など、他厩舎からもいくつかレースの騎乗依頼をいただきました。減量特典もないなかで、日本で大きな結果を残しているわけでもない僕にチャンスを与えてくださった方々には本当に感謝しています。
僕も一人のジョッキーなので、与えられたチャンスをものにして結果を出さなければいけない立場です。レース騎乗は自分にとって素晴らしい経験になりましたが、結果を残せなかったことはチャンスを与えてくださった方々に申し訳ないですし、自分としても一番悔しいです。レースを重ねていくなかで失敗することも多かったのですが、自分自身、“変化”はあったと感じています。
▲「チャンスをもらったのに結果を残せなくて悔しい」と小崎騎手
ただ、オーストラリアの競馬にすぐに対応できたかと言われると、決してそうではありません。どんなレースにも適応でき、どんな馬でも御せて、動かせる能力…。ジョッキーとして、そういった面の未熟さを痛感しました。
オーストラリアには、巧いジョッキーがたくさんいます。彼らと一緒にレースをしていると、自然と意識するポイントも日本とは異なってきます。観ていただけのオーストラリアの競馬のイメージと、実際に自分が競馬に参加して得た感覚は全然違いました。
同じ競馬とはいってもレースの中身は違いますし、何より日本以外の国で競馬に乗ることが自分にとってこれほどいい経験になるとは思いませんでした。
また、オーストラリアの競馬を経験したことで、日本の競馬の良さ、日本のジョッキーの良さも感じました。日本の競馬がどれぐらいいい環境で行われているか、普段僕がどれだけ恵まれた環境で乗れていたのか、外に出たからこそ気付けたことも数多くありました。
素晴らしい経験をさせていただき、いい思い出ばかりではありますが、やはり唯一悔いが残っているのは「勝っていないこと」。そして、勝利できるかの最後のチャンスが先週の土曜日にありました。
場所はケンブラグランジ競馬場。初騎乗も最後の騎乗もこの競馬場で、遠征中、もっとも多く騎乗した競馬場です。レースは外枠でしたが、無理せず逃げることができました。かなりスローペースの逃げで、手応えはあるように感じましたが…結果は鼻出血で最下位。最後の騎乗をいい形で終えることはできませんでした。
これまでのレースを振り返っても本当に悔しい記憶ばかりですし、レース後に情けなくなることも多々ありました。ですが、そのぶん改善点が明確に見えてきたり、自分の中身に変化があったりしました。
遠征を終えようとしている今、「一人の馬乗りとして、ほかの地で乗ることの価値」「行動してみることの大切さ」をものすごく感じています。今回の遠征では勝つことはできませんでしたが、自分のなかではまたオーストラリアに戻ってくる気持ちがありますし、ほかの国でも乗ってみたいという気持ちも湧いてきました。
もちろん日本の競馬にもすごく魅力があり、今は日本に帰って早く馬に乗りたい気持ちが強いです。日本にも巧いジョッキーがたくさんいて、当然ながらみんな努力をしていますし、トップジョッキーの方たちもさらに上を目指しています。
そんななかでNo.1になるのは簡単なことではありませんが、これからも変化を恐れず、ジョッキーとして“新しい経験”を積極的に求めながら、上を目指していきたいと思っています!