2018年3月に新規開業する調教師の中に、どうにも気になる新人トレーナーがいる。JRA史上初、開成高校・東京大学出身の調教師が誕生するのだ。その名も“りんてつ”こと林徹調教師。「スゴすぎる経歴」と「異色なキャラ」を併せ持つと噂のりんてつ調教師、その素顔を暴くべく、東大の先輩・須田鷹雄氏が立ちあがった!! (文:編集部)
ミッションじゃなくてパッション
須田 ここからは厩舎経営の話をしてみたいんだけど、これから誰を味方につけていくかという作業は相当重要で。スタッフ、ジョッキー、外部の人間、そういう人をどんどん探さないといけないですよね。
林 そうですね。例えば自分は競馬に乗ったことがあるわけではないので、自分がジョッキーに対して事細かく指示することが、はたしてジョッキーのやる気につながるのかどうか。牧場関係の方に教えていただいたのですが、「ジョッキーにはミッションじゃなくてパッションだぞ」って。その人をどれだけやる気にさせられるかが大事だと思うんです。
ただ、自分はまだまだ教えていただく立場でありますので。そういう意味でも、開業前の時期に様々な牧場さんにお伺いして、色々教えていただいたり、研修として実際に牧場の皆さんと一緒に働かせていただいたことは、とても勉強になっています。特に8月ぐらいからは全然美浦にいなくて。サマーセールの2週間前ぐらいからは静内に住んで、いろいろな牧場さんで馬を見せていただきまして。
須田 実際に静内に住んだの?
林 住みました。変な話、静内に住んだ調教師ってあんまりいないと思うんですけど(笑)。その後、秋には海外に行かせていただいたり、(栗東の)矢作先生のところでお世話になったり。それまで美浦トレセンしか知らなかったので、外に出ていろいろな温かい方に出会えて、お世話になったりご指導いただいたりっていうのは、一生の財産ですね。
▲「静内に住んだり、海外に行ったり、矢作厩舎にお世話になったり。一生の財産です」
須田 逆にそういうところを見ると、美浦にいて見える範囲って狭いんだなという風にも感じますか?
林 こんなやり方もある、こうしてもいいんだって。何より、生産・育成されている方の思いをひしひしと感じることができました。結局自分たちって、最後のいいとこ取りなんですよね。子どもの成長でいったら幼稚園、小学校、中学、高校があって、大学がある。トレセンって最後の大学みたいなところで、それを大学の先生だけが恩師面するのは違うんじゃないかって。
須田 今のはすごく重要な点だと思うんです。JRAの調教師とかジョッキーって、お金の面でも名誉の面でもいい思いをするじゃないですか。そこに至る過程に関わった人々の苦労をきちんと分かってくれている調教師がいるのは、競馬ファンとして大変うれしいことです。調教師として売れてもその初心を大事にしてください。今日みたいな席はいいけど、売れたときに「東大だ」とか持ち上げられるので、それでも初心を忘れないように(笑)。