JRA育成馬に乗る研修生(西沢僚亮君)
最も気になっているのは、道立静内農高の生産馬「北斗」
来る4月24日(火)のブリーズアップセール(中山競馬場)を目指して、JRA日高育成牧場では連日調教が進められている。このほど2週にわたり調教の様子を見学させて頂く機会を得た。
日高育成牧場には、現在57頭の2歳馬が在籍しており、その他宮崎育成牧場の22頭と合わせ、最大79頭がブリーズアップセールに臨むことになる。
とはいえ、成長途上の若馬のこと、調教を進めて行くに従い、様々なアクシデントも発生したりする。昨年の例で言うと、実際に中山でセールに上場されたのは69頭であり、何頭かはこの本番に間に合わせることができずに終わった。これらはその後、5月下旬の札幌競馬場で開催された北海道トレーニングセールに回り、そこで上場、売却された。生きている馬なので、怪我や病気などは避けられないのである。
日高育成牧場の57頭の中で、最も気になっているのは、昨年夏のサマーセールにて520万円(税抜き)でJRAが購買した「北斗」(父バゴ、母ゴートゥザノース、牡栗毛)だ。道立静内農高の生産馬といった方が分かりやすいかもしれない。
最も気になっているのは、道立静内農高の生産馬「北斗」
ゴートゥザノースの仔は、今年の2歳馬を含め、これで3頭連続JRA育成馬として購買されており、いずれも日高育成牧場で調教されてきた。1歳上のハヤブサカノンは美浦・尾形和幸厩舎に入り、昨年6月にデビュー。10月まで3戦を消化したものの、未だ未勝利である。またそのさらに1歳上のミンナノユメノセテは、昨年3月に川崎競馬でデビューし1着となったが、その1戦で引退しており、今のところ姉2頭は中央で勝利を挙げていない。その分、現2歳の牡馬には期待がかかる。
最近の調教の様子についてJRAに伺うと「実は昨年11月に肺炎を発症したのですが、その後は順調に回復しており、内視鏡検査でも異常ないという診断結果が出ています。今のところ他馬よりはほんの少しだけ調教進度が遅れていますが、これからピッチを上げて行けば、本番のブリーズアップセールまでには追いつけると思います」とのこと。
先週火曜日に、BTC坂路にて単走で追われているところを見学できた。ハロン18秒平均で比較的ゆったりとしたペースでの調教であった。今の段階で将来性を占うのは難しいのだが、走るフォームそのものはバランスが良く、無駄がなさそうだ。
坂路にて単走で追われているところを見学できた
なお、JRA育成馬は、毎週火曜日と金曜日が坂路の追い切り日で、進度の早い組は、坂路でハロン15秒程度までは進んでいる。追い日には1000mの坂路を2本、駆けあがる。
調教にメリハリをつけるため、追い日以外は比較的軽めのメニューで、敷地内の800mインドアコースをダクとキャンターで周回する。また、調教前と後には、覆馬場内に設置されているゲートをくぐる訓練も行う。前扉を閉めた状態でゲートに入り、後扉を閉めた状態で大人しく中で駐立できれば合格である。
800mインドアコースをダクとキャンターで周回する様子
ゲート練習の様子、騎乗者は研修生の青木泉水さん
今後の日程としては、まず4月9日(月)に、日高育成牧場にて展示会が開催される。そこで各馬の生産者や関係者の前で騎乗供覧が実施されることになる。中山に向けて移動するのはその後である。
ところで現3歳世代のJRA育成馬の成績について簡単に触れておくと、今日現在で、1勝以上している馬は全部で13頭いる。その他、地方競馬交流指定競走で勝ち上がっている馬が2頭おり、合わせて15頭が勝ち馬となっている。
ただ、さらにその上の2勝以上となると、現段階では、ヒシコスマーが「万両賞」(12月3日阪神)を制したのみで、他は未だ1勝クラスにとどまっている。
過去にはセイウンワンダー(2008年朝日杯FS)を筆頭に、ダイワパッション、ブライトアイザック、ナイキハイグレード(南関)、エイシンオスマン、モンストール、ダンツミュータント、クリスマス、サウンドリアーナ等々、活躍馬を多数輩出しており、そろそろ大物の出現が待たれるところだ。
なお、今年も展示会にはBTC育成調教技術者養成研修第35期生16名が、JRA職員とともに育成馬の騎乗供覧に参加することになっており、目下、日高育成牧場で奮闘中である。彼らは4月13日に修了式を迎える。すでに全員の就職先が決定しており、来月には彼らのことについて書く予定でいる。