◆南関東だけが厳しい減量規定に
昨年に続いて今年も見習(減量)騎手によるヤングジョッキーズシリーズ(YJS)が行われる計画だ(まだ正式な発表はない)。昨年は4月26日の高知からスタートしたが、今年はやや遅れてのスタートになるらしい。さすがに4月中では、地方騎手はデビューして1カ月も経っていない騎手も出場する可能性があり、新人騎手にとっては少しでも時期が遅くなるのは歓迎だろう。
YJSが始まるにあたっては、地方競馬の主催者ごとにバラバラだった減量規定が、昨年、かなり変更された。2016年度までは減量が通算30〜50勝以下となっていた北海道、岩手、金沢では、2017年度から揃って100勝以下となった。これによってすでに減量がなくなっていた騎手にも減量が復活し、YJSに出場した騎手が何人かいた。
2017年度に減量が100勝以下ではなかった地区は、南関東(50勝未満)、東海(80勝以下)、兵庫(20勝未満)だったのだが、2018年度からは東海、兵庫でも減量は100勝以下となることが発表された。また減量の適用を受ける期間も、南関東を除くすべての主催者で、騎手免許取得後5年未満で統一された。
JRAでは2016年から減量の適用期間が、それまでの3年未満から5年未満に延長されたが、これによって今年度から南関東を除く地方競馬のすべての主催者で、下記のとおりJRAと同様の減量規定となった(なお、女性騎手の1kg減や、重賞に騎乗可能な勝利数などは主催者によって異なる)。
減量期間:騎手免許取得後5年未満で100勝以下
▲(3kg減):30勝以下
△(2kg減):31勝以上50勝以下
☆(1kg減):51勝以上100勝以下
ちなみに南関東は、▲1年未満・10勝未満、△2年未満・25勝未満、☆3年未満・50勝未満、となっている。
それにしても地方競馬のなかでももっとも激戦区、つまり若手騎手にとっては騎乗機会を得るのが難しい南関東だけ厳しい規定となっているのはどうなのだろう。近年では期間限定騎乗の制度で所属地区以外での騎乗も容易になっており、うがった見方をすれば、「騎乗機会が得られないなら他地区で修行してこい」ということを暗に示しているのではないかと思えなくもない。
冒頭で、減量規定の改定によって減量が復活した騎手がいた、と書いた。ところが兵庫の規定変更だけは厳しく、「平成29年度以前の騎手免許取得者の負担重量は、旧減量規定の10勝以上20勝未満1kg(表示☆)とする。」とあり、つまり兵庫では減量の復活がない。
余談になるが、先に触れたとおり2017年度までの規定では兵庫だけ20勝で減量卒業と、地方競馬の中でも突出して厳しい規定となっていたわけだが、これについて園田競馬場での取材のついでに主催者や元騎手などに話を聞いてみたことがある。そして返ってきた答えは意外なものだった。「体重を落とす苦労があるから減量は早くなくなったほうがいいと考えているらしい」というもの。
あくまで外から見ている者の想像としては、「減量のアドバンテージで少しでも騎乗数を増やしたい」と考えるのではないかと思っていたのだが、そうではないらしい。デビュー前の新人騎手からは「たくさん勝って早く減量をなくしたい」という目標はよく聞くが、「体重の調整が厳しいから減量が取れてほしい」というのはずいぶんと後ろ向きな希望だなあと思う。若手騎手のみんながみんな、そう考えているわけではないのだろうが。
さて、今年度のYJSの出場資格が、何月何日現在の見習(減量)騎手なのかという発表はまだないが、仮に昨年度と同様に4月1日現在とすると、地方所属騎手では昨年度出場した24名のうち9名が減量卒業(もしくは引退)となっており、4月1日に新たに騎手免許を受けた騎手が6名。地方からは21名が出場ということになりそうだ。
そもそも期間限定騎乗の制度などによって騎手がある程度自由に動けるようになった時代に、主催者ごとに減量規定が違うのでは矛盾が起こっていた。たとえば2016年に船橋所属でデビューした岡村健司騎手は、期間限定騎乗している佐賀ではリーディング上位を争う活躍で、現在通算87勝。佐賀では☆(1kg減)で騎乗しているが、南関東に戻るとすでに減量はない。仮にそのまま佐賀に完全移籍すれば、おそらくYJSに出場できるのだろうが、本来は船橋所属なのでおそらく出場はできない。
中央・地方を通じても、南関東だけに異なる減量規定が残されてしまうことになったが、来年度以降の対応を見守りたい。