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今年のケンタッキーダービーは過去最高の顔触れ!?

  • 2018年04月11日(水) 12時00分


◆タレントが豊富な上に強力な遠征馬も加わる

 4月8日付けのサラブレッド・デイリー・ニュース(TDN)の一面に、”The Best Kentucky Derby Field Ever? (=今年のケンタッキーダービーは過去最高の顔触れか?)” という見出しが躍った。開催まであと3週間余りとなったGIケンタッキーダービー(d10F)は、確かに、実に魅力的なラインナップが整いつつある。

 7日にケンタッキー州のキーンランドで行われたGIIブルーグラスS(d9F)を制したのは、グッドマジック(牡3、父カーリン)だった。昨年11月、未勝利の身でGIBCジュヴェナイル(d8.5F)に挑み、ここを4.1/4馬身差で快勝して、BCで初勝利を挙げた初めての馬となったのがグッドマジックだ。

 今季初戦となった3月3日のGIIフォンテンオヴユースS(d8.5F)は3着に終わったが、昨年の成績からも窺えるように、つまりは叩き良化型なのであろう。ブルーグラスSでは前走と一変した動きを見せ、4コーナーの途中で先頭に立って優勝。抜け出してからの競馬振りに、それほど大きなインパクトは感じなかったが、昨年の2歳チャンピオンが地元の前哨戦を快勝しての参戦となるのだから、有力馬の1頭であることは間違いない。

 センセーショナルな話題となったのが、同じ7日にカリフォルニアで行われたGIサンタアニタダービー(d9F)を制したジャスティファイ(牡3、父スキャットダディ)だ。このレースはそもそも、3月10日にサンタアニアで行われたGIIサンフェリペS(d8.5F)で、1着入線後2着降着になったマッキンジー(牡3、父ストリートセンス)と、2着入線後に繰り上がりで1着となったボルトドーロ(牡3、父メダグリアドーロ)の、リマッチが話題となっていた一戦だった。

 ところが、レース1週間前(3月31日)にマッキンジーに後肢の跛行が見られ、サンタアニタダービーの回避が決定。これを受け、当初は4月14日のGIアーカンソーダービー(d9F)に向かう予定だった同厩のジャスティファイが、ここに駒を進めてくることになったのだ。

 2月18日にサンタアニタのメイドン(d7F)でデビューし、ここを9.1/2馬身差で制した段階で既に、一部の関係者やファンの間で「大物出現か」と話題となったのがジャスティファイだ。同馬は、3月1日にサンタアニタで行われた条件戦(d8F)も6.1/2馬身差で快勝。2戦2勝の成績で臨んだのがサンタアニタダービーだった。

 そこに待ち構えていたボルトドーロは、3歳時は4戦し、GIデルマーフューチュリティ(d7F)、GIフロントランナーS(d8.5F)と2つのGIを含む3勝。圧倒的1番人気に推されたGIBCジュヴェナイル(d8.5F)では、外枠からの発走となり、道中も終始外を廻らされる競馬で3着に敗れたが、実質的に一番強い競馬をしたのはボルトドーロだったというのが、大方の見るところだった。

 これだけの実績馬がいたゆえ、ジャスティファイがサンタアニタダービーで1番人気になったことが、筆者にはまず驚きだったが、結果はファンの期待通りとなった。単騎で逃げたジャスティファイを、2番手で競馬をしたボルトドーロが3コーナーから追いかけていったが、馬体を併せるところまで行かず、最後は逆にジャスティファイがボルトドーロを突き放し、3馬身差をつけて優勝。無敗の3連勝でGI制覇を果し、ケンタッキーダービー戦線の最前線に躍り出ている。本番では決して、この日のように楽に先行させてはくれないだろうが、ジャスティファイが底知れぬスケールを持つ逸材であることは間違いなく、ファンの期待は否応なく高まっている。

 新興勢力と言えば、デビューから無敗の3連勝で、3月17日にオークローンパークで行われたGIIレベルS(d8.5F)を制したマグナムムーン(牡3、父マリブムーン)にも、触れておかねばなるまい。ジャスティファイ同様、マグナムムーンも2歳時の出走がなく、1月13日にガルフストリームパークのメイドン(d6F)でデビューし、ここを4.1/2馬身差で制して緒戦勝ち。続いて出走したのが2月15日にタンパベイダウンズで行われた条件戦(d8F40y)で、ここも2馬身で制して連勝。同馬の3戦目となったGIIレベルSで1番人気に推されていたのは、GIBCジュヴェナイル2着馬ソロミニ(牡3、父カーリン)だったが、同馬に3.1/2馬身という決定的な差をつけてマグナムムーンが快勝。重賞初制覇を果した。

 同馬は、今週土曜日(4月14日)にオークローンパークで行われるGIアーカンソーダービー(d9F)に出走を予定しており、その結果と内容次第では、この馬が戦線の主役となる可能性もある。

 そして、マグナムムーンが所属するトッド・プレッチャー厩舎には、ダービー戦線における東海岸における大将格と目される、オーディブル(牡3、父イントゥミスチフ)がいる。昨年11月15日にアケダクトのメイドン(d8F)を制し、デビュー2戦目で初勝利を挙げると、12月6日に同じくアケダクトで行われた条件戦(d8F)を9.3/4馬身差で制して連勝。年明け初戦となったのが2月3日にガルフストリームパークで行なわれたGIIホーリーブルS(d8.5F)で、ここも5.1/2馬身差で快勝して重賞初制覇。そして、3月31日に同じくガルフストリームパークで行なわれたGIフロリダダービー(d9F)も3馬身差で制し、4連勝でGI初制覇を果している。

 自在な脚質と抜群の安定感を誇り、普通の年であれば大本命になってもおかしくないのがオーディブルであろう。これだけタレントが豊富なところに、更に1頭、強烈なプロフィールを誇る遠征馬が加わるのだ。言わずもがな、3月31日のGIIUAEダービー(d1900m)で、18.1/2馬身差勝ちという異次元のパフォーマンスを見せたメンデルスゾーン(牡3、父スキャットダディ)である。

 TDNが「過去最高か?」と称するのも納得の好メンバーが揃うケンタッキーダービーまであと3週間余り。その喧騒を筆者もおおいに楽しもうと思っている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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