▲勝者だけが知る“ダービー”を勝つ意味とは
福永祐一騎手のダービー制覇を記念いたしまして、『祐言実行』が限定復活します。公開は19日、20日の2日連続。後編の今回は、勝者だけが知る“ダービー”を勝つ意味。ただ勝つだけではなく、「誰と勝つか」にこだわってきた福永騎手。友道康夫厩舎の馬で勝てたこと、共に戦ったライバル陣営の思い、父・福永洋一のこと…様々な想いが胸をよぎったといいます。今週末の宝塚記念では同じ友道厩舎のヴィブロスに騎乗。「上半期の最高の締めくくり」へ、意気込みも語ります。
2着藤原英昭厩舎の、熱いスポーツマンシップ
ジョッキーである以上、ひとつでも多くの勝利を目指すのは当然だが、ここ1、2年、同じくらい大事に思っていたのが、「誰と勝つか」ということ。
友道先生は、北橋先生、瀬戸口先生が引退してからの苦しい時期を支えてくださった調教師のひとりで、ずっと「祐一をダービージョッキーにしてやりたい」と本当に強く思ってくれていた。ヴィブロスで初めて一緒にGI(2016年秋華賞)を勝てたときもものすごくうれしかったが、やはり先生の強い思いに応えることができたダービーは格別。そこに歴史があり、お互いへの信頼を感じられるなかでダービーを勝てるなんて、これ以上の喜びはない。
昨年7月のデビューからここまで、先生だけではなく、スタッフとも本当に密なコミュニケーションが取れてきた。「今度は攻めてくださいね」と発破をかけてくれた大江くん、ゲート裏で「祐一さん、信じています」と言ってくれた藤本くん…。彼らの存在は間違いなく大きな力になった。技術があるのはもちろん、熱意に溢れる彼らが大好きだ。
皐月賞からダービーまでの6週間は、“精神面の安定を図りながら攻める”というとても難しい調整だったと思う。しかし、その課題を見事にクリアしてくれたことで、ダービーのあの走りにつながった。自分も御せたという自負はあるが、それもそういう走りができるように厩舎が馬を作ってくれたからこそ。改めて友道厩舎の技術力の高さを感じたし、心から喜びを共有できる人たちと勝ち取ることができたという実感がある。
▲ダービーのウイニングラン (撮影:下野雄規)
▲同じものを目指して戦ってきた3人、夢の結実に涙があふれた (撮影:下野雄規)
▲最高の舞台での口取り写真 (撮影:下野雄規)
もうひとつ、驚きとともにうれしかったのが、検量室に入ったとき、藤原英昭調教師と藤原厩舎の調教助手・荻野さんが、真っ先に祝福にきてくれたこと。「ホンマによかったなぁ!」と満面の笑みで迎えてくれ、心から祝福してくれているのが伝わってきた。実はそのときの自分は、2着にどの馬がきたのかわかっていなかったのだが、直後にエポカドーロが2着と知り、本来なら一番悔しいはずなのに…と胸が熱くなった。