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高岡調教師がシンガポールで刻んだ記録

  • 2018年07月24日(火) 18時00分


◆歴史的名馬を管理し、レース名に名を残すまでに

 北海道からシンガポールに移籍した高岡秀行調教師が、7月15日に行われたシンガポールダービーをジュピターゴールドで制し、同レース3勝目となったことはニュース記事(http://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=139941)でもお伝えしたとおり。

シンガポールダービーを制したジュピターゴールド(Photo by Singapore Turf Club)


 今回は、高岡調教師がシンガポールに移籍してからの足跡と、同地で残した偉業について振り返ってみたい。

 高岡秀行調教師は、騎手としてホッカイドウ競馬でデビューし通算524勝。1993年に調教師となり、2002年までに地方355勝、中央1勝という成績を残した。その勝利の中には、タキノスペシャルでの北海道3歳優駿(1999年)、ナミでのエーデルワイス賞(2000年)というダートグレードのタイトルもあった。また2000年にはホッカイドウ競馬のリーディングにも輝いている。

 そして2002年のホッカイドウ競馬シーズン終了後、日本での既出走馬18頭とともにシンガポールに渡り、2003年元日付で厩舎開業となった。

 当初は日本から連れて行った馬が思った以上に高いクラスに格付けされるなどで勝ち星が伸びず苦戦。しかし開業4年目となった2006年2月24日、日本産ながらシンガポールでデビューしたダイヤモンドダストがG3(グレードはシンガポールのローカルグレード、以下同)のコミッティープライズを制し、シンガポールでの重賞初勝利。この年は42勝を挙げ、シンガポール・リーディングでも6位と、飛躍の年となった。

 高岡調教師にとって大きな出会いとなったのが、2006年のひだかトレーニングセールで、シンガポール在住日本人の大谷正嗣オーナーが競り落としたエルドラド。同馬は、シンガポールの国内限定戦では最高賞金となる伝統のシンガポールゴールドCを2008,09,11年と3度制した。1924年から記録が残っているシンガポールゴールドCで、同レース3勝という記録は、1954,56,57年に勝利したスリーリングス以来史上2頭目の快挙となった。

 エルドラドにはさらなる功績もあった。2004年生まれのエルドラドは父ステイゴールドの2世代目の産駒。今となってはにわかに信じがたいことだが、ステイゴールドは自身の馬体が大きくないこともあって、種牡馬としては当初はあまり注目されていなかった。

 エルドラドと同い年のドリームジャーニーが2006年の朝日杯フューチュリティSでG1制覇を果たしていたが、エルドラドによる2008年のシンガポールゴールドC制覇が、父ステイゴールドにとってはドリームジャーニー以来2年ぶり2頭目のG1タイトル。ドリームジャーニーにとってG1・2勝目、3勝目となる宝塚記念、有馬記念は翌2009年のこと。そして2011年に三冠馬となったオルフェーヴル、さらに翌年のゴールドシップの活躍で、ステイゴールドは種牡馬としてブレイクすることになった。なおエルドラドは現在、北海道に戻って日高町で功労馬として余生を送っている。

 2009年、高岡調教師は、2007年のひだかトレーニングセールでシンガポール人オーナーに買われたジョリーズシンジュ(牝、父ジョリーズヘイロー)で、シンガポール4歳三冠(G1パトロンズボウル=1400m、G2シンガポールダービートライアル=1600m、G1シンガポールダービー=2000m)を制覇。同年後半、ジョリーズシンジュはコックスプレートを目指してオーストラリアに遠征したが、残念ながらオーストラリアでは勝利を挙げることはできなかった。

 さらに高岡調教師は2012年、オーストラリア産、日本人オーナーによるベターライフ(牝、父スマーティジョーンズ)でもシンガポールゴールドCを制覇。これによって、エルドラドでの同レース3勝に続き、2008年から2012年の5年間でシンガポール最大のレースを4勝という快挙となった。ベターライフは翌2013年のシンガポールダービーも制覇。牝馬でもあり、それ以上狙うべきタイトルもないことから繁殖入りとなった。

 その後、高岡調教師は2015年にG2、G3を制したが、今回のジュピターゴールドでのシンガポールダービー制覇が、2013年のベターライフ以来5年ぶりのG1およびダービー制覇となった。

シンガポールダービー3勝目、G1・9勝目となった高岡秀行調教師(右から4人目、Photo by Singapore Turf Club)


 2003年にシンガポールで厩舎を開業して今年で16年目。この間、シンガポール国内では最高賞金のシンガポールゴールドCを4勝。さらに同レースに次ぐ2番目の高額賞金となっているシンガポールダービーを3勝。これらを含めてG1は9勝。シンガポールの歴史的名馬となったエルドラドは、現在G3エルドラドクラシックとしてレース名に名を残し、2013年には自身が管理するマスケティアでそのレースを制している。

 高岡秀行調教師は現在62歳。シンガポールの競馬の歴史に確実にその名を刻み続けている活躍は、まさに“大あっぱれ”であろう。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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