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【岩田康誠×藤岡佑介】第4回『石橋脩騎手に浜中俊騎手も…! 岩田騎手に救われた後輩たち』

  • 2018年10月03日(水) 18時01分
▲「行けるなら行きたかった」岩田騎手が語る海外遠征の意義

職人気質で見た目も強面な岩田騎手。しかし、仲間や後輩想いなエピソードがあちこちから聞かれます。今週は、岩田騎手の意外な一面からスタートします。後半のテーマは“海外競馬”。現在、坂井瑠星騎手や野中悠太郎騎手が長期遠征中ですが、若くして海外へ行くことの意義を語ります。最後には自身が勝った海外GIの、今だから話せる裏話も! (構成:不破由妃子)

ほら、俺自身が繊細やから……(笑)


佑介 以前、(石橋)脩ちゃんにゲストにきてもらったとき、岩田さんの話になったんですよ。すごく落ち込んでいたとき、何も話していないのに岩田さんが励ましてくれたって。覚えてますか?

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▲岩田騎手の心配りに救われたと語る石橋脩騎手


(→石橋脩騎手との対談記事はこちら)

岩田 うん。確か乗り替わりかなんかがあったあとで…。

佑介 そうです、ドゥラメンテの共同通信杯のあとです。たとえば、5年目くらいの若手が落ち込んでいるように見えたら、「何かあったの?」って声を掛けてあげようかなと思うけど、中堅以上になると、なかなか声を掛け合うことってないじゃないですか。普段から飲みに行くような仲ならともかく、そもそも岩田さんと脩ちゃんは関西と関東やし、あんまり話したこともないですよね?

岩田 そうやね。

佑介 そんな岩田さんが「頑張れ、頑張れ」って言ってくれたって。ビックリしたけど、すごくうれしかったって言ってましたよ。

──意外といっては失礼ですが、岩田さんはそういった機微を敏感に感じ取られる方なんですね。

岩田 ほら、俺自身が繊細やから……(笑)。

佑介 言った本人が笑っちゃダメじゃないですか(笑)。

岩田 でも俺、ホンマに繊細やで。人に対してもけっこう観察しているほうかもしれん。

佑介 だから脩ちゃんのちょっとした変化に気付いたんですね。

岩田 うん。彼は巧いからね。真面目やし。何よりカッコいいし(笑)。何も考えてへんような子には、そんなこと言わへんよ。

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▲「何も考えてへんような子には、そんなこと言わへんよ」


佑介 よく考えたら、中央に移籍してきた頃からそんな感じでしたよね。それこそ当時の僕は若手でしたから、岩田さんにはよう声を掛けてもらいました。10年くらい前だったかな、たしか夏競馬が終わるまでに僕が何勝するか賭けをしたんです。僕がその数を達成できたら岩田さんが坊主なるっていう約束で。で、その年の秋、ブラックエンブレムで秋華賞を勝ったとき、岩田さん丸坊主でしたよね(笑)?

岩田 ああ、そんなこともあったな。秋華賞を勝ったとき、「勝ってもうたー!」と思ったもん。勝ったらみんなの前でヘルメットを脱がなアカンやん。あれ、めっちゃ恥ずかしかったわ…(苦笑)。

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▲ブラックエンブレムの秋華賞で…まさかの坊主頭! (C)netkeiba.com


佑介 懐かしいですねぇ。でも、そうやって僕ら若手を鼓舞してくれたというか。岩田さんはそういう存在だったような気がします。ハマ(浜中俊騎手)なんて、岩田さんに相当面倒をみてもらいましたよね。だいぶ助けられたはずですよ。

岩田 浜中の場合、「岩田さん、〇〇競馬場はどないして行ったらいいんですかね?」とか、そこからやからね(笑)。

佑介 岩田さんは、若手の面倒をみてあげよう、励ましてあげようと意識してやっているというより、黙っていられない感じでしたよね(笑)。競馬も一緒やけど、考える前に動くタイプやから。

今思い返してもデルタブルースっていう馬は…


──石橋脩さんの変化にいち早く気付かれたように、ここ数年の佑介さんの変化についても、岩田さんなりに感じ取られていたのではないですか?

岩田 それはもう。フランスから帰ってきてからは、どんどん勢いが増してる感じでね。自信を付けて帰ってきたなと思っていたけど、実際に勝ち出して、この春はGIも勝って。北海道で一緒に乗っていて思ったけど、乗り方自体も変わってきたし、確実に勝ちにくるようになったというかね。なにしろ自分で競馬を作っているし、札幌の最後でも一番目立っていた。佑介を見ていると、海外に行くことの意味を感じるよ。

佑介 岩田さんは、単発のレース以外で海外に行ったことはありますか?

岩田 ないよ、一度も。中央にきてから行きたいと思ったことはあるけど、もうそういう年ではなかったというか。やっぱり若いうちに行かんと。

佑介 年齢というより、岩田さんはずっとGIでお手馬がいたから、海外に行く隙がなかったかもしれませんね。とはいえ、行けば初騎乗でも勝つのが岩田さん。メルボルンCに香港スプリントですからね、すごいとこ勝ってますよね。

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▲「海外に行けば初騎乗でも勝つのが岩田さん」


岩田 客観的に見るとそうなのかもしれんけど、俺からすれば「え〜!?」みたいな感じやからね。メルボルンCのときもさ、オーストラリアに着いて、次の日がレースで。なにもわからんままレース当日になってしもたんやけど、ほかのレースに乗せてもらったときに、外を回ったらボロカス言われて(笑)。メルボルンCは24頭立て(1頭取り消して23頭に)やし、どないしよーみたいな(苦笑)。

佑介 そういう状況でこそ、岩田さんの嗅覚が生きてくるんじゃないですか。

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▲ロードカナロアで2012年、2013年の香港スプリントを連覇 (撮影:高橋正和)


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▲世界最高峰のスプリントGI制覇は、日本馬初の快挙だった (撮影:高橋正和)


岩田 どうなんやろうね。結局、メルボルンCは「逃げろ!」って言われてさ。「そうすれば1頭立てやん」みたいな。俺も俺で「せやな」と思って(笑)。

佑介 たしかに(笑)。実際、すごい好スタートを切ったんですよね。

岩田 そうそう。ペースもわからんまま、とりあえずハナにいって。途中から2番手になったんやけど、早めに本命馬が上がってきたから、「あ、これについて行けばいいや」ってなもんで(笑)。でも、直線に向いたら、その本命馬が全然伸びなくて、あとは「直線なげーよ!」と思いながらひたすら追ったわ。

佑介 そうなったらもう必死ですよね。

岩田 もう必死。で、「外からなんかきたー!」と思ってパッと見たら、「あ、ポップロックやん」て(笑)。今思い返してもデルタブルースっていう馬は、肝心なところで火がつく馬やった。もうこっちがビックリするくらいにね。“バーン!”とぶつけられたら瞬間的に火がついて、“グオーン!”となったからね。

(文中敬称略、次回へつづく)
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JRAジョッキーの藤岡佑介がホスト役となり、騎手仲間や調教師、厩舎スタッフなど、ホースマンの本音に斬り込む対談企画。関係者からの人望も厚い藤岡佑介が、毎月ゲストの素顔や新たな一面をグイグイ引き出し、“ここでしか読めない”深い競馬トークを繰り広げます。

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1986年3月17日、滋賀県生まれ。父・健一はJRAの調教師、弟・康太もJRAジョッキーという競馬一家。2004年にデビュー。同期は川田将雅、吉田隼人、津村明秀ら。同年に35勝を挙げJRA賞最多勝利新人騎手を獲得。2005年、アズマサンダースで京都牝馬Sを勝利し重賞初制覇。2013年の長期フランス遠征で、海外初勝利をマーク。2018年には、ケイアイノーテックでNHKマイルCに勝利。GI初制覇を飾った。

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