「激走レンジ」を駆使して秋GIレースを立て続けに的中させた棟広良隆氏。その予想理論とは?
馬場レベルを基本とする「激走レンジ」を駆使して、数々の高配当馬券を的中させ続けてきた棟広良隆氏。近年は、レギュラー出演しているグリーンチャンネルの『KEIBAコンシェルジュ』での活躍ぶりが広く知られるところだが、展開する持論の激走レンジ<range>の新刊を只今執筆中だとか。近年の馬場傾向や時計の出方の大きな変化、含水率発表など新たに取り入れられた試みに対応した、これまでの著書よりもさらに精度の高い内容になるようである。―――(取材・文=日夏ユタカ)
秋GIを4週連続的中!
棟広氏へのインタビューは、彼が『ウマい馬券』で11月末のジャパンCを皮切りに、チャンピオンズC、阪神JF、朝日杯FSと、4週連続で的中を続けていたタイミングで行なった。ところが、もっともファンの注目度の高いGIを連勝中ながら、棟広氏は意外にもそれに浮かれてはいなかった。それどころか逆に、ジャパンCでのアーモンドアイ本命を悔やむのだ。ちなみに◯スワーヴリチャード、▲キセキ(◎→▲→◯決着)という、ほぼ完璧な予想だったにもかかわらず。
それは何故か……!?
「キセキを本命にできなかったかと、ずっと後悔しています。
単勝1倍台のアーモンドアイ本命を、私のファンは絶対に求めてないでしょうから。」
それでも、敢えて本命を打った。そうせざるを得ない強さをアーモンドアイから感じたからだろう。そして大レコードでの余裕の勝利。凡百の予想家ならば大満足な予想であっても、“馬券穴リスト”“大穴ハンター”の異名をもつ棟広氏のプライドはそれを許さない。
「キセキから入るべきだった」的中でも2018年ジャパンCアーモンドアイ◎を悔やむ棟広良隆氏。勝負馬券を見てくれたファンをガッカリさせないこと、いつもそのことを考えているという(写真=下野雄規)
だから反対に、チャンピオンズC8番人気で2着のウェスタールンドに本命を打っての3連複的中には、笑顔を見せる。あるいは朝日杯FSで、9番人気2着のクリノガウディーに☆印(5番手評価)をつけての3連複的中のほうをより誇る様子もうかがえた。
「基本的には、誰も印を打たないようなノーマークな馬に本命を付けたいんです。ただ、注目度の高いGIではそれはなかなか難しい。この『ウマい馬券』ではメインレース・最終レースを対象にすると決めていますが、もし自由にレースを選べるならば、GI自体の予想はかなり少なくなるかもしれません(苦笑)」
馬場と馬の個性を融合させて、新春早々に大的中!
そして、そんな棟広氏の穴馬へのこだわりは年明け早々に爆発する!新年最初の重賞である中山金杯だ。9番人気3着となるタニノフランケルを本命にして3連複を的中。420.7倍の馬券を合計400円購入する予想を構築し、回収率1600%超を記録したのだった。棟広良隆の中山金杯予想は
こちら9番人気3着のタニノフランケルを本命にして3連複420.7倍をGETした
もちろん、その的中は棟広氏の最大の武器である馬場読みを礎とした「激走レンジ」の賜でもあった。まずは、年が明けてAコースからCコース替わりとなったことに注目し、最内枠で揉まれ弱い先行馬タニノフランケルの逃げに期待しつつ、外枠11番でも前年の覇者ウインブライトを対抗にして、さらに外枠15番のステイフーリッシュも押さえるという盤石ぶり。メディアが近年の外枠不利を煽るなか、内枠に寄せるのではなく、各馬の適性を重視して裏の裏に張った見事な的中といえるだろう。
なお、中山金杯の棟広氏の「ウマい馬券」予想で注目したいのが、重い印を打った馬の情報量の豊富さだ。基本的には競馬予想に求められるのは的中か否か。しかし、棟広氏には別の思惑もあるようなのだ。
「私はファンや読者に、伝えたい・教えたい・成長して欲しい、という気持ちも強くあります。もうひとつの本職である教師体質(編注:棟広氏は実家が経営する学習塾で教鞭をとっている)なのかもしれませんが。お金を払って予想を買ってくれた方が、たとえ予想が外れたときでも、何かを得てほしい。そんな思いもあって、最近は重賞などでの個別の馬情報のボリュームを増やしています」
さらには、自分が当たらなくとも、その情報を使って勝ってくれた人がいればいい、と語る棟広氏。プロでもすべてのレースを読み切れるわけではないが、一般のファンよりも見えている部分は間違いなく大きいので、それを巧く利用して欲しいからこその長文の見解になるようだ。確かに、中央の重賞レースだけでなく、地方・海外のレースにおいても比較的かなり多い文字数になっていることが確認できる。ここからも少しでも多くの情報を届けたいという強い信念が伝わってくる。
しかも、その内容はすべてロジックで納得したものしか書かない、という徹底ぶり。京都大学工学部卒の頭脳から繰り出される予想は、時に流行のAIよりもデジタルに、競走馬たち1頭1頭の個性に迫るのだった。(後編に続く 1/15公開)
「お金を払って予想を買ってくれた方が、たとえ予想が外れたときでも、何かを得てほしい。そんな思いもあって、最近は重賞などでの個別の馬情報のボリュームを増やしています」と語ってくれた棟広良隆氏