▲ netkeiba Books+ から『丸ごと! ディープインパクト』の1章、2章をお届けいたします。
馬券検討をする際、取捨選択の判断材料として考慮しない人は皆無といっていいほど、重要なウエイトを占める「血統」。本書では1頭の種牡馬についてさまざまな角度から取り上げ、馬券検討に必要な要素を過去3年間のデータに基づいて精査。買える条件、買えない条件を抽出した。第1弾は、言わずと知れた大種牡馬ディープインパクト。「なるほど!」と納得できるデータもあれば、目からウロコの新事実もあるはず。きっとアナタの馬券検討の一助になるはずだ。 (文:netkeiba Books+編集部)
(写真:下野雄規、高橋正和、JRA、netkeiba)
1章 現役時代はほぼパーフェクトな成績だった優等生
ディープインパクトは2004年12月29日阪神・新馬戦(芝2000m)でデビュー。上がり33秒1の強烈な末脚を使い、4馬身差の完勝で競走生活をスタートさせた。次走の2005年1月の若駒Sでは、絶対に届かないような位置から、レースの上がりより2秒5も速い常識外れの末脚を繰り出して、2着に5馬身差をつける圧勝劇。2戦連続でファンに見せつけた異次元のパフォーマンスにより、一躍、クラシックの主役に名乗りをあげた。
その後の3冠ロードも「圧巻」の一語に尽きるレースが続く。前哨戦の弥生賞を勝った後、皐月賞は2馬身半差、ダービーは5馬身差、神戸新聞杯を2馬身半差、菊花賞を2馬身差でいずれも楽勝。日本競馬史上6頭目の3冠馬、シンボリルドルフ以来史上2頭目の無敗の3冠馬になる。
過去の3冠馬と比較してもディープインパクトの人気は凄まじく、皐月賞で1.3倍あった単勝オッズは、ダービーでは1.1倍、菊花賞では単勝1.0倍の元返しにまで下がっていた。
しかし、好事魔多し。初の古馬戦となった2005年の有馬記念で、先に仕掛けたハーツクライを捕らえ切れずに2着に惜敗。シーズンの疲れが出た影響によるものといわれているが、まさかの敗戦に日本中の競馬ファンが騒然となった。このレースで「競馬に絶対はない」ことを思い知ったファンも多い。
4歳になると、さらにパワーアップ。休養明けの2006年阪神大賞典は向正面から馬なりで上がっていき、直線もほとんど追うところなく楽勝。天皇賞・春も後方から馬なりで上がっていき、4コーナーで先頭に立つと後は楽勝。
返す刀で宝塚記念も勝利して5つ目のGIタイトルを奪取。その圧倒的なレースぶりに、もはや日本競馬史上最強の馬であることを疑う者はほとんどいなくなった。
4歳春シーズンを完璧な成績で締めくくると、秋の目標をフランスの凱旋門賞に据える。8月中旬からシャンティイ競馬場側の調教場で約1カ月半にわたって調整。前哨戦を使わず10月1日の凱旋門賞に挑んだ。
現地オッズでも圧倒的な1番人気に支持され、残り300m地点ではいったん先頭に立ったものの、残り100mでレイルリンクに、ゴール前でプライドにも交わされて3着。しかも、後に禁止薬物イプラトロピウムが検出され、最終的に失格処分になってしまう。
2006年の凱旋門賞
薬物騒動を払拭するためにも、残りの日本のレースを必勝態勢で臨んだディープインパクト。ジャパンCでは欧州年度代表馬のウィジャボードらを下すと、有馬記念でも3馬身差をつけて他馬を一蹴。牡馬3冠に加えて、天皇賞(春)、ジャパンC、春秋グランプリ制覇と、当時のJRA記録であったGI7勝の最多タイ記録を成し遂げて、07年から社台スタリオンステーションへスタッドインした。
ディープインパクトの生涯成績
(2章につづく)
▲ クラシック初戦の皐月賞を制したディープインパクト
第2章 SSの最優良後継種牡馬として枝葉を広げ続ける
日本競馬の血統図を塗り替えたサンデーサイレンスを父に持ち、母はアイルランド産のGI馬ウインドインハーヘア。2010年にファーストクロップがデビューすると、翌年にはマルセリーナが桜花賞、リアルインパクトが安田記念を優勝。2012年にリーディングサイアーになると、そこから首位に座り続けている。
すでに偉大な父の最優良後継種牡馬としての地位を確立しており、その種付料は日本競馬史上最高額を誇っている。ディープインパクトの活躍を受けて、全兄のブラックタイドや全弟のオンファイアなども種牡馬入り、母が海外で産んだ牝馬もその後すべて日本へ輸入されている。ちなみに、17年日本ダービーを制したレイデオロの3代母もウインドインハーヘアである。
もちろん、すでに数多くの種牡馬も輩出している。トーセンラー、ダノンシャーク、リアルインパクト、スピルバーグ、キズナ、エイシンヒカリ、ミッキーアイル、サトノアラジン、リアルスティール、ディーマジェスティ、サトノダイヤモンドなどが種牡馬になっており、トーセンスターダムやダノンプラチナのように海外でスタッドインした馬もいる。
好走例の多い配合は、「ディープインパクト×ノーザンダンサー系牝馬」。これがディープインパクトのオーソドックスな配合である。そもそも父サンデーサイレンス系の成功の要因のひとつも、世界中で爆発的に増えたノーザンダンサー系牝馬との親和性の高さにあった。
なかでも、最も勝利数が多いのは、「ディープインパクト×母父ストームキャット」の配合。この配合からはアユサン、キズナ、ラキシス、エイシンヒカリ、サトノアラジンといったGI馬が出ている。
「ディープインパクト×母父フレンチデピュティ」も当たりが多い配合で、ショウナンパンドラ、マカヒキ、アンジュデジールなどが出た。この配合は、牝馬の好走率が高いのも特徴だ。
生産頭数はそこまで多くないものの、母父シングスピール(代表産駒・シンハライト)、母父ロックオブジブラルタル(代表産駒・ミッキーアイル)、母父ホワイトマズル(代表産駒・スマートレイアー)なども勝率が高い配合なので覚えておきたい。
近年急激に成績を伸ばしているのは、「ディープインパクト×母父キングカメハメハ」の配合。2018年のダービーを制したワグネリアンや、フローラSやローズSを勝ったデニムアンドルビーがこの配合にあたる。
キングカメハメハがそうであるように、以前は日本には少なかったミスタープロクター系の繁殖牝馬との相性もいい。現在の日本馬産界ではノーザンダンサーの勢いが落ちてきているので、これからは「ディープインパクト×母父ミスタープロスペクター」の好走例が増えていきそうな状況にある。
有終の美を飾った2006年の有馬記念
(続きは
『netkeiba Books+』 で)
- 丸ごと! ディープインパクト ―種牡馬で馬券攻略! 産駒の狙いどころを徹底分析
- 第1章 現役時代はほぼパーフェクトな成績だった優等生
- 第2章 SSの最優良後継種牡馬として枝葉を広げ続ける
- 第3章 クラシックディスタンスに滅法強い一方で短距離、ダート戦は苦手
- 第4章 広く、直線の長いコースと中山芝千八が活躍の舞台
- 第5章 夏競馬での活躍が目立ち、良馬場でこそ持ち味を発揮
- 第6章 1番人気での成績は圧倒的だが、人気騎手が騎乗した際は一考の余地あり
- 第7章 ディープ産駒と相性のいい四天王と裏開催で頼れる騎手は?
- 第8章 ディープ産駒で成績を残している、産駒の扱いに長けた厩舎とは?
- 第9章 ディープ産駒の旬な“買いどき”は2歳戦! 年を追うごとに信頼度は低下
- 第10章 新馬戦の福永ジョッキーはベタ買いで勝負できる!
- 第11章 ディープインパクト代表産駒と総括、BMSとしての今後の可能性