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注目新種牡馬も多数紹介された、2019種牡馬展示会が終了

  • 2019年02月27日(水) 18時00分
生産地便り

JBBA展示会全景


一連の種牡馬展示会は、この冬最も厳しい寒さの中での開催になった


 今月は、前半と後半とで極端に気温が変化し、体の調子が狂ってしまうような落差が生じた。前半は例年と比較してもかなり寒い冬で、朝の最低気温はほとんどマイナス二桁を記録した。日中も気温が上がらず、0℃に到達しない真冬日の連続で、とりわけ寒さが厳しかったのは8日(金)のこと。日中の最高気温が浦河の私宅でマイナス10度にしかならず、終日震えながら過ごした。

 おおむね15日(金)あたりまでは気温の低い状態が続いたが、週が変わり18日(月)以降はずっと例年よりも高めの気温で推移している。日中も5度〜6度という日が多く、雪解けが一気に進んだ印象だ。後半に入ってからはずっと雪らしい雪も降っていない。

 今思えば、5日(火)社台スタリオンに始まった一連の種牡馬展示会は、この冬最も厳しい寒さの中での開催になったと言える。中でも12日(火)〜15日(金)までの4日連続の展示会はいささかきつい日程であった。

 14日(木)は静内地区3か所を時間差で巡回する合同展示会で、午前9時JBBA静内種馬場、10時アロースタッド、11時半レックススタッドと最も過密スケジュールであった。

 JBBA静内種馬場は今年新たに供用開始となるデクラレーションオブウォー(米国産10歳)が最初に展示され、その他マクフィ、ヨハネスブルグ、クリエイターII、エスケンデレア、ケープブランコ、バゴ、サニングデールの計8頭でシーズン入りする。

生産地便り

新種牡馬デクラレーションオブウォー


 先週、当コラムで触れたフェブラリーステークス優勝馬インティの父ケイムホームも、かつてはここ静内種馬場にて繋養されていたが、昨年より九州種馬場に移動した。突然の産駒の大活躍により、民間の種牡馬ならば急きょ繋養先を北海道に変えるなどの措置が講じられるところだが、JBBAは全国組織の生産者団体であり、すでに昨年秋のうちに今年の種牡馬の配置が決定しているため、そのまま九州種馬場で繋養されることになる。

 ただ、仄聞するところによれば、インティの母キティは、今年、ケイムホームを交配すべく、九州に送られて種付けシーズンをかの地で過ごすことになるらしい。無事、受胎することを祈りたい。

 JBBA静内種馬場では比較的ゆったりとした流れで展示が行なわれたが、終了後ほとんどの見学者がそのまま一斉に車でアロースタッドへ移動するため、二十間道路は大変な交通渋滞が発生する。ようやく係員の指示に従い、アロースタッド構内に駐車して展示会場に辿りついた頃には、すでに何重にも人垣ができており、ベストポジションを確保するのが難しい。だがアロースタッドは日本一の繋養頭数を誇る種馬場で、カタログ上では実に40頭もの種牡馬が記載されており、通り過ぎるわけにはいかない。

 この日、実際に展示されたのはうち31頭にとどまったが、それでも次から次に目まぐるしく種牡馬が登場し、ひじょうに慌ただしかった。

 今年のアロースタッドの新種牡馬は、シャンハイボビー、ダンスディレクター、ネオアトラクション、ネロ、ヤマカツエースの5頭。また新入厩馬としてナカヤマフェスタが加わった。

 これだけの頭数になると、手帳に馬名とカメラの駒ナンバーをその都度記して撮影しなければ後になって区別がつかなくなる。派手な特徴のある種牡馬ならば分かりやすいが、流星がなく、脚元にも特徴がない種牡馬が複数いる場合などは混乱の元である。

 たっぷりと種牡馬を見た満腹感を抱えたまま、また次のレックススタッドに移動したのが11時10分頃のこと。

 レックススタッドの展示会は11時半開始であった。今年の新種牡馬はアグニシャイン、コルヴァッチ、ビーチパトロール、レガーロ、レーヴミストラル、ロイカバードの6頭。それにエイシンフラッシュ、トーセンラー、フェノーメノ、ラブイズブーシェが新たに移動してきて、これらを含め全27頭の陣容で交配シーズンを迎える。

 この地区の3ヶ所の種馬場だけでも、全部で75頭(JBBA8頭、アロースタッド40頭、レックススタッド27頭)もの種牡馬が繋養されている。正直なところ、これは聞いたことのない馬名だなと感じる種牡馬も複数いる。だが、それぞれたとえ頭数は少なくとも産駒を取ってみたい、というオーナーの思い入れのようなものが伝わってきて、心を動かされる。こうしたマイナーな種牡馬(と言っては失礼だが)でも、それなりに種牡馬生活を続けられるような懐の深さがあっても良い。昨今は人気種牡馬になれば250頭を超える配合頭数をこなす時代になっていて、新たに種牡馬入りする馬たちにとっては生き残りがより難しくなっているとは思うが、彼らに幸多かれと祈らずにはいられない。

 ところで余談をひとつ。ビッグレッドファームのダノンバラードとアロースタッドのヴィットリオドーロの産駒成績について、それぞれパンフレットでも展示会でも、北海道2歳優駿の優勝馬を輩出している旨の紹介があった。

生産地便り

ビッグレッドファームで種牡馬生活を送るダノンバラード


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アロースタッドで種牡馬生活を送るヴィットリオドーロ


 ダノンバラードの産駒はウィンターフェル、ヴィットリオドーロの産駒はイグナシオドーロで、この2頭が昨年11月1日門別の北海道2歳優駿においてハナ差の好勝負を演じ、ウィンターフェルが優勝、2着にイグナシオドーロと「確定」したものの、それが誤審であったことが直後に判明、大騒動になったことは記憶に新しい。

 その後、主催者は誤審であることを認め、正しい着順による馬券配当金の支払いにも応じるなどの事後処理に振り回されることとなった。だが、その一方で、地全協の公式記録は1着ウィンターフェル、2着イグナシオドーロのまま未だ訂正されていない。

 しかし、去る2月25日に開催された「NARグランプリ2018」において、2歳最優秀牡馬部門に選出されたのはイグナシオドーロであった。選定理由として「着順ではなく、競走実績(パフォーマンス)を重視して選定する方針」のもと、「ダートグレード競走で唯一の1位入線馬であるイグナシオドーロが選定された」のだという。

 実際の着順と、確定した着順(これが公式記録である)の二通りの結果が、未だにきちんと整理されないままになっており、そろそろ誤審から3ヶ月経とうとしているのに、この分では、公式記録の訂正はなさそうな気配が漂う。ならば、やはりきちんとした説明が必要だろう。上記の「選定理由」が、ひじょうに理解しにくい文章で綴られているあたりにもこの問題の複雑さが見て取れるが、一度確定した結果については絶対に訂正できない、ということであるなら、なぜ訂正できないのかについて説得力のある根拠が知りたいところ。誤審による影響は、種牡馬展示会における種牡馬の評価にも直結しているだけに、とても看過できる問題ではない気がするのだ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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