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八戸市場が開催、2007年以来となる1000万円超えの落札馬も

  • 2019年07月03日(水) 18時00分
生産地便り

7/2に開催された八戸市場をレポート

のんびりとセリを楽しめるようなスケジュール


 今年度の八戸市場が昨日(2日)開催された。未明から早朝にかけて降雨があったらしく、会場の八戸家畜市場(三戸郡南部町)はところどころ水たまりができていたが、幸い雨も上がり、朝から夏の太陽が輝いていて、北海道と比較するとやはり気温が高かった。

 このところ八戸市場は上場頭数確保が大きな課題となっており、今年も名簿上では39頭いたが、当日になり4頭が欠場し、最終的な上場頭数は35頭であった。

 因みに過去10年間の上場頭数の推移を見ると、2010年75頭、2011年64頭、2012年67頭、2013年70頭、2014年36頭、2015年54頭、2016年42頭、2017年40頭、2018年36頭ときており、ややばらつきはあるものの、漸減し続けている。

 しかし、その一方で、購買登録者数は昨年が112名、今年はやや減少したがそれでも97名を数え、上場頭数の3倍近い数に達した。

 比較展示の開始時刻は午前10時半。35頭ならば、北海道市場では一度に全頭を展示する頭数だが、八戸ではこの頭数でも12頭〜14頭ずつ3回に分割しての展示である。これにはもちろん理由があり、1頭ずつ丹念に見て頂こうというのはもちろんのこと、上場者側の都合で、1人が掛け持ちで複数の上場馬を引かねばならないケースがあり、やむを得ない事情でもある。

 各グループの展示の最後には、常歩で時計回りに1周半周回し、展示場の奥から市場に隣接する馬見場に向かって1頭ずつ速歩を披露するという念の入れようだ。

 こうしてたっぷりと時間を取り展示を行った後は、昼食タイムとなる。心づくしの豚汁とお弁当が配られ、小一時間休憩を兼ねての食事の時間が確保されている。全てにおいて、八戸市場はのんびりとセリを楽しめるようなスケジュールなのだ。

 セリ開始は午後0時半。主催者の青森県軽種馬農協・山内正孝組合長の挨拶が冒頭行なわれ、さっそく1番の上場馬が入場してきた。

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主催者の青森県軽種馬農協・山内正孝組合長

 八戸市場は、例年どちらかというと前半は比較的静かな取引が続き、中盤以降に盛り上がってくるのだが、今年は最初からいきなり活発な競り合いが次々に現出した。

 2番スイートフィズの2018は、父クリエイターIIの牝栗毛でシンボリ牧場生産馬(飼養者[株]門別牧場)だが、複数の購買者が激しく争い、740万円(税込799万2000円)で高橋福三郎氏によって落札された(これが牝馬最高価格馬)。

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2番スイートフィズの2018立ち写真

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2番スイートフィズの2018速歩の様子

 いつもの年ならばこれがだいたい最高価格馬になりそうな金額だが、今年はいささか様子が異なり、セリ半ばの18番ワンダーサークルの2018(父ゼンノロブロイ、牡黒鹿毛、販売申込者・所有者・飼養者[株]タイヘイ牧場、生産・山口義彦牧場)が上場されると、場内はさらにヒートアップ。ついに2007年以来となる1000万円超えの落札馬(1100万円、税込1188万円)となった。

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18番ワンダーサークルの2018立ち写真

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18番ワンダーサークルの2018速歩の様子

 その後も20番スイートマルセルの2018(父アジアエクスプレス、鹿毛、シンボリ牧場生産、飼養者[株]門別牧場)が620万円(税込669万6000円)で前田清二氏に、25番ミネルバローズの2018(父アルデバランII、牡鹿毛、生産、飼養者・谷川博勝牧場)が950万円(税込1026万円)で中辻明氏に、29番シェーンブリッツの2018(父エキストラエンド、牡鹿毛、販売申込者・飼養者[株]門別牧場、生産者・村上進治牧場)が600万円(税込648万円)で高橋福三郎氏に、37番セイントムーンの2018(父アルデバランII、牡鹿毛、生産者・織笠時男牧場、飼養者・猪股トレーニングセンター)が610万円(税込658万8000円)で蔀英二氏に、それぞれ激しい競り合いの末に落札された。

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20番スイートマルセルの2018立ち写真

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25番ミネルバローズの2018立ち写真

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29番シェーンブリッツの2018立ち写真

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37番セイントムーンの2018立ち写真

 これらの高額落札馬のあおりを最も受けたのがJRAで、八戸市場では例年3頭〜4頭程度を落札し、宮崎育成牧場に輸送してJRA育成馬として翌年のブリーズアップセールに上場するという流れであったが、今年はやや風向きが変わり、チェックした上場馬を落札し切れないケースが続出で、最終的には1頭(3番シアトルハッピーの2018、父トーセンラー牝黒鹿毛、生産・飼養者、谷川博勝牧場)を300万円(税込324万円)で落札できただけであった。

 目ぼしい上場馬がこれだけ高額になってくると、予算内での購買が原則のJRA育成馬は、やや分が悪くなる。「7頭競りましたが、1頭しか落とせませんでした」と購買官も渋い表情であった。

 最終的には35頭中24頭が落札され、売却率は前年比9.2%落ちたものの、68.6%とまずまずで、総売り上げも昨年より205万2000円増の9439万2000円、平均価格も前年比63万5143円高い393万3000円と大健闘であった。

 この結果に山内正孝組合長は安堵の表情を浮かべながら「地元の市場でも、良い馬を出せばこのように高い評価が得られ高額で落札されるということを示すことができたと思います。今後、上場頭数をいかに確保するかが大きな問題ですが、この結果を参考にさらに多くの馬をこの市場に出してもらえるよう努力したいですね」とコメントしていた。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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