先生から学んだ人との繋がり、コミュニケーションの大切さ
6月30日にスウェーデンで行われたウィメンジョッキーズワールドカップで、藤田菜七子騎手が2勝を挙げ、総合優勝したとニュースで聞き、驚きと感激でいっぱいです。おめでとうございます。
日本競馬を世界にアピールした、記録にも記憶にも残る素晴らしい快挙です。日本の競馬界にとって大きな財産が生まれましたね。
海外初勝利と総合優勝を果たした藤田菜七子騎手(撮影日は2018年12月2日、撮影:下野雄規)
コメントを聞いても「勝ちたいです」ではなく「勝ちます」と言い切ることが大事だと強気な発言が印象に残りました。
我が同期の細江純子元騎手も香港で勝利をあげていますが、女性騎手の活躍は、幅広い分野での競馬ファンが増えてくれるでしょう。
福島競馬場では、菜七子騎手と同期の菊沢一樹騎手が、3番人気のミッキースワローで重賞初制覇。父が管理する馬での勝利だっただけに、一樹騎手の大きな財産になり、糧になっていくでしょうね。
久々のミッキースワローとのコンビで重賞初制覇を果たした菊沢一樹騎手(撮影:下野雄規)
同期でありライバルである関係のなか、競い合って成長していくのはうれしいですね。これからが楽しみだなー。
そして中京競馬場では、プロキオンSが行われアルクトスが3連勝で初重賞勝利を挙げました。
この馬の名前の由来は、北斗七星という意味があるそうです。七夕の日に大きな星が輝きました。夏競馬の活躍から秋競馬へつながっていく楽しみな馬が増えましたね。
3連勝で重賞初制覇を果たしたアルクトス(c)netkeiba.com
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2018年に調教師試験を合格され、2019年1月1日付けで調教師免許を取得、そこから僅か2ヶ月後の3月1日付けで厩舎を開業された長谷川浩大調教師に取材させていただきました。
常石 開業おめでとうございます。今日はよろしくお願いします。中村均先生が引退され、厩舎解散後にそのまま引き継ぎができたことはよかったですね。それでも開業に準備期間がなく忙しくされたでしょうね。
長谷川 今でもバタバタしていますが、大切な馬を引き継がせていただき、預かることが出来て光栄です。
常石 スタッフの方々は、中村厩舎の方々がそのまま引き継がれているのでしょうか? 長谷川先生が騎手時代から知っている方が多いのが気になりまして。
長谷川 全員が全員というわけではありませんが、ほとんどの方が残ってくださったのでとても助かります。あんちゃんと呼ばれるときからお世話になっている方が多いなかで、新人もいて刺激もあり、コミュニケーションが多く安心して馬を任せられますので助かっています。
調教師として、自分をちゃんと持っておかないと運営できないと思っているなか、助けてもらうことばかりですね。
スタッフ同士コミュニケーションも多く、昔からの繋がりも多いという
常石 今後はどのような厩舎にしていきたいですか
長谷川 コミュニケーションがしっかりとれることを大事にしていきたいです。牧場の方々にも感謝しています。先日も北海道まで行ってきましたが、皆さんでどの馬もしっかり仕上げてくださいますので、とても助かります。感謝しかないですね。
それからオーナーさんの方々にもお世話になっています。僕が乗せていただいていた時からのオーナーさんもいらっしゃるのでありがたいですね。もちろん中村先生とのつながりのオーナーさんの馬も預からせていただいています。それに甘んじてないで、信頼される馬作りをして、多くのオーナーさんの馬を管理できるようになりたいと思っています。
常石 騎手時代も活躍されていましたよね。騎手時代の長谷川さんもすごいなぁと見ていたんですよ。デビュー戦でいきなり勝利され、8月には落馬されたにもかかわらず、28勝で新人賞受賞は凄い記録です。なかなか取れないですからね。
2004年からは4年連続でフェアプレー賞を受賞されているでしょう。なかなかできない事ですよね。凄い!
長谷川 ありがとうございます。初心を忘れずに頑張っていきます。
騎手時代には重賞3勝を挙げ、4年連続のフェアプレー賞にも輝いた(写真は2005年のフェアリーS優勝時、撮影:下野雄規)
常石 活躍されていたなか、調教師になろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
長谷川 乗り役は、今でも楽しいしやりたいと思うときもあります。いつまででも高いレベルにいることが出来たらよかったのですが、土日で休みの日が続いたりと、家族のことや体力のことなどいろいろ考えました。
騎手仲間にも相談し、たくさん悩みましたが、最終的には自分自身で調教師を目指すと決めました。
常石 すごく勇気のいる決断でしたね。2012年に引退され、調教助手になられたんですね。
長谷川 中村厩舎所属からフリーになったのですが、助手になったとき、中村先生に「うちの厩舎に来い」と言っていただいて嬉しかったですね。中村先生のおかげです。感謝でいっぱいです。
しっかり馬を育てて恩返ししていかないといけないですね。頑張ります。
常石 人との出会いは、とっても大切ですよね。僕もお世話になり迷惑をかけてしまった中尾正先生には感謝しかないです。今でも「常石、元気か? どうしてるんや」と声かけいただき、お家にお邪魔させていただいています。
中村先生は、厩舎に来られますか?
長谷川 時々きてくださいます。先生のお顔を見ると気合いが入りますよ。調教助手として働きだしてからは、多くの方が関わって組織化され、成り立っていることを再認識することが出来、人に感謝するべきやと実感し、人間として成長させていただきました。
騎手の時は、結果を出すことだけを考えていたなーと反省です。
人との出会いを大切に、騎手時代から人としても成長
常石 いい報告もできますよね。6月16日の阪神4R(障害未勝利戦)では、植野騎手を背にブレイクスピアーが優勝されました。おめでとうございます。まだ4歳とこれからの活躍が楽しみな馬ですね。
植野騎手も「2周目で差を詰めていき、最後の障害で2番手まで上がり直線で押し切る。飛びも安定し成長している。パワータイプの馬なので楽しみだ」と仰っていました。
いつもニコニコ笑顔で話してくれるのでいい馬なんだなと実感できます。年末の中山が楽しみですね。
長谷川 ひとつひとつ積み重ねていきたいですね。
常石 ところで、ちょっと気になっていたのですが、厩舎カラー服は、どのように決められたのですか? グリーン系の迷彩柄がかっこいいですね。
長谷川 トレセンだけではなく、普段の時も着られたらいいなと思ってこの柄を選びました。いろんなところでアピールできるでしょう(笑)。
常石 長谷川厩舎ここにあり! ですね。いいなー。(厩舎服をゲットするのを忘れたの残念)
長谷川 一人でも多くの方と巡り合っていきたいですね。
常石 今日はありがとうございました。最後にファンの方へメッセージをお願いします。
長谷川 新馬も楽しみな馬がいます。まだまだこれからですが、ひとつひとつ積み上げていけたらと思います。応援おねがいいたします。
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中村厩舎時代から長谷川さんを見てきた厩舎スタッフさんにもその当時の印象をおうかがいしたところ、少しの変化でも確かめるため、毎朝馬を見に来るほど真面目で、馬の担当厩務員の方にもにもよく話を聞いていたそうです。
長い付き合いだからこそ、先生のことがよく理解出来て、コミュニケーションを大事にされて和気あいあいとしているなと思いました。
長谷川先生・スタッフの皆さんありがとうございました。まじめで一生懸命に取り組む姿勢に感動しました。トレーニングセンターのなかでも調教の合間にいろんな方とコミュニケーションをとっておられます。
鞭を片手に馬に跨る長谷川調教師は今でも騎手さながらですよ。調教に行くときが一番いいお顔をされていますね。ぐっと引き締まって顔の奥に馬に乗れる快感を感じてることでしょう。(僕の勝手な予感)
取材後の6月6日に行われた北海道スプリントカップ(JpnIII・門別ダ1200m)を中村厩舎から引き継いだヤマニンアンプリメで制覇されました。
北海道SCを制し、厩舎に初重賞タイトルをもたらしたヤマニンアンプリメ(c)netkeiba.com
2戦連続で2着と悔しいレースが続いた後に3馬身差の快勝。この勝利がヤマニンアンプリメ、そして長谷川厩舎にとって待望の初重賞制覇となっただけに、厩舎スタッフらと一丸となって喜ばれたことでしょう。おめでとうございます。
このコラムが出る頃には、僕もドイツユーバーヘルンに向かって飛行中です。パラリンピックへの権利を勝ち取るための挑戦です。一人でドイツへ渡航するのは初めてです。ここからいよいよ本格的な挑戦が始まりです。
菜七子騎手にいい刺激を受け頑張ってきます。競馬の合間に僕のことも応援してくださいね。よろしくお願いします。
つねかつこと常石勝義でした。