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前年を上回る売り上げを記録した今年の北海道2歳優駿

  • 2019年11月06日(水) 18時00分

来年からは”JBC2歳優駿”としてリニューアル


 いよいよホッカイドウ競馬は、今週木曜日で今年度の全日程を終える。今年は、台風や地震などの自然災害による開催休止もなく、また春から初夏にかけてこの地方を襲う濃霧によってレースが取り止めになることもなかったのは幸いであった。

 4月17日(水)に開幕したホッカイドウ競馬は、15開催、全80日間の日程だが、開催成績はここ数年ひじょうに好調で、この分ならば、秋の閉幕をもう少し延長すれば、さらなる売り上げ増加が見込めるのではないか、との声もある。

 しかし、いくら温暖化により冬の訪れが以前より遅くなっているとはいえ、11月の北海道は、晩秋から冬への季節の変わり目で、気圧配置ひとつで気候は大きく変動する。道内各地からそろそろ初雪の便りが聞こえてくる今の季節、比較的温暖な地域に立地する(北海道のなかでは、という意味だが)門別競馬場であっても、11月10日前後が限界であろう。中旬以降は、いよいよ朝晩が氷点下の気温になり、馬場が凍結するリスクも出てくる。

 レースに出走する人馬の負担はもちろんのこと、来場するファンにとってもさすがに戸外での競馬観戦はやや辛い季節になってくる。やはり今週あたりがギリギリのところなのだ。

 さて、先週10月31日(木)には、「北海道2歳優駿」(JpnIII)が行なわれた。出走馬は14頭。距離1800mで1着賞金2500万円をかけて争われ、場内は多くのファンが人垣を作り、レースを見守った。

 数えて46回目となるこのレースは、全国交流ダートグレード競走として位置づけられた1997年(平成9年)以降、2018年までの中央と地方の対戦成績がそれぞれ11勝ずつで拮抗しており、珍しく地方所属馬が健闘している重賞だ。

 昨年は、ウィンターフェルとイグナシオドーロがぴったり並んでの決着となり、写真判定の結果、ウィンターフェルに軍配が上がり「確定」となったが、実はこれが決勝委員の誤審によるものであったことが直後に判明し、大混乱に陥る騒動に発展した。

「前代未聞の誤審事件」などと大きく報じられ、その後も年度末(今年3月末)までこの問題は尾を引き、主催者は配当金の二重払いを余儀なくされた結果、億単位の損失を計上したことも記憶に新しい。

 地元勢同士の決着で湧いた昨年の実例からも、今年は1番人気がBGJCを勝ち、札幌遠征でも好走したホッカイドウ競馬所属のヨハネスボーイ(石川倭騎手)が1番人気(3.8倍)に支持された。

 2番人気は中央所属馬のピオノノ(岩田康誠騎手)で4.6倍。3番人気は地元勢タイセイサクセサー(服部茂史騎手)で5.9倍。ティーズダンク(宮崎光行騎手)6.4倍、アジュバント(赤岡修次騎手=高知)も同じく6.4倍、中央馬キメラヴェリテ(福永祐一騎手)7.4倍と10倍を切る出走馬が6頭いて、力量の抜けた主役不在の、予想が難しいレースであった。

 発走は午後8時。この時期らしからぬ暖かな夜で、埒沿いには熱心なファンがズラリと陣取り、スタートを待った。ゲートが開くと各馬が一斉に飛び出し、14頭が眼前を通過して行く。ハナを切ったのはキメラヴェリテ、すぐ後ろをアベニンドリーム、バックストッパー、マイネルアストリアあたりが続いて行く。

生産地便り

北海道2歳優駿のレース序盤


 隊列が変わらないまま、淡々とレースが進む。キメラヴェリテが終始先行し、それをアベニンドリームが追う展開で、3〜4コーナーを回り、直線に差しかかった。キメラヴェリテの脚色は一向に衰えず、ついにアベニンドリームの追撃を抑えて先頭でゴールインした。

生産地便り

キメラヴェリテが逃げ切って勝利


 1馬身2分の1差の2着がアベニンドリーム、3着はゴール前鋭くハナ差まで迫ったピオノノが入り、今年は中央勢の勝利に終わった。期待を集めたヨハネスボーイは8着、3番人気タイセイサクセサーは7着であった。

生産地便り

アベニンドリーム、ピオノノ入線時


 キメラヴェリテは父キズナ、母ルミエールヴェリテ、母の父Cozzeneという血統の牡2歳黒鹿毛馬。栗東・中竹厩舎の管理馬で馬主は加藤誠氏。生産者は(株)ノースヒルズ。父キズナはこれでダートでも初年度産駒から重賞勝ち馬を送り出したことになる。

生産地便り

引き上げるキメラヴェリテ


生産地便り

キメラヴェリテ関係者の方々


 レース後、福永祐一騎手はインタビューに応え「自分の形で競馬ができればチャンスがあると思っていたので、馬が最後まで良く頑張ってくれたと思います。逃げようと思っていましたし、スタートが肝心だなと思っておりました。先手を取ってからは自分のリズムで楽なペースで行けたので、3コーナーあたりから後続馬をあまり引きつけずにスパートできました。

 長く良い脚を使える馬で、期待以上のレースをしてくれたと思います。今日に関してはコンディションが良く、輸送もこなしてくれました。北海道まで来た甲斐がありました。また応援して頂ければと思います」と語っていた。

生産地便り

インタビューに答える福永騎手


 中央所属馬と地方馬が互角に戦うこのレースは、前述のように過去の戦績も五分五分で、地元勢でも十分に太刀打ちできるところに大きな魅力がある。今年は中央勢が勝ち、対戦成績は中央12勝、地方11勝となったが、来年からはいよいよこのレースがJBCに加えられることになっていると聞く。

 従来通りナイターで実施されるのか、それとも、他のJBC3競走に合わせて日中の実施になるのか現時点ではまだ分からないが、今後は注目度がさらに増して、より大きく飛躍しそうな予感がある。賞金の上積みも見込まれるので、期待が膨らむ。

生産地便り

北海道2歳優駿の口取り風景


 なお、この日は、7億1518万円を売り上げて、興行的にもまずまずの成績を残せた。来週改めて触れるつもりだが、今年のホッカイドウ競馬は、前年をかなり上回る売り上げになっており、ひじょうに好調のまま閉幕を迎えられそうだ。何よりである。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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