1800mまでしか勝ち鞍のないダノンキングリーだが…(c)netkeiba.com、撮影:下野雄規
阪神競馬場の芝コースには外回りと内回りがあり、それぞれまったく違うコースと言っても良いぐらいに、ラップ的な特徴が異なってきます。東京競馬場に類する外回りに対し、阪神芝の内回りは中山競馬場に近い、いや、むしろ福島競馬場に近いコース(!)と言ってしまっても良いのではないかとさえ思っています。
阪神は最後に坂があるじゃないかという声も聞こえてきそうですが、阪神ゴール前の上り坂は高低差1.8mほど。あまり気にする人もいないようですが、実は福島芝コースにもゴール前には1.2mほどの上り坂があります。この0.6mをもって「阪神は坂で福島は平坦」と断定できるのでしょうか。計算してみても、1.5%の勾配は中山よりも福島に近いと考えられます。
阪神外 直線476m 直線坂1.8m 勾配1.5%
阪神内 直線359m 直線坂1.8m 勾配1.5%
中山芝 直線310m 直線坂2.2m 勾配2.2%
福島芝 直線300m 直線坂1.2m 勾配1.0%
※数値は概数。
ならば大阪杯は“内回り”という舞台設定、つまりは“適性”が重要なポイントになってくるに違いありません。実は宝塚記念もそう(阪神内回りコース)なのですが、もし仮に大阪杯や宝塚記念が福島競馬場で開催されるとなれば、多くの人が「これは通常のGIとは同列に考えられないぞ」と大いに身構えることになるのでしょう。しかし阪神開催なら誰も特には身構えない。つまりは、その“意識の剥離”こそが狙い目となってくるはずです。
そこで本題に入るのですが、大阪杯で狙うべきは2400m前後を得意とする馬ではなく、1600m〜2000mの馬ではないかという論法が仮説として成り立ちます。その前提として、大阪杯は長距離馬のほうが人気になる傾向。一般的に距離をこなせない馬より、距離をこなせる馬の方が強い(最終的に好成績を収めやすい)というのは競馬の真理なのですが、この大阪杯に限っては、そのグループが過剰人気になっているのです。
■大阪杯出走馬の距離経験別成績(2100m以上に勝ち鞍があるか無いか)
勝鞍あり 117戦【12-11-14- 80】勝率10% 単回収 40%
勝鞍なし 122戦【 7- 8- 5-102】勝率 6% 単回収115%
※2001年以降。GII時代も含む
勝率や好走率は別として、利益を出す買い方を前提とするなら2100m以上に勝ち鞍がある馬は評価を下げてみるべきかと。単勝回収40%は、明らかに手を出してはいけない数値です。今年の出走予定馬で、2100m以上に勝ち鞍があるのは下記の7頭。今年はこのグループに人気馬が多数含まれる辺りが、大阪杯の大きなポイントになりそうですね。
■2020年大阪杯 2100m以上に勝ち鞍を持つ出走予定馬
クロノジェネシス
ステイフーリッシュ
ブラストワンピース
マカヒキ
ラッキーライラック
レッドジェニアル
ワグネリアン
闇雲にデータだけを見るのではなく、まずは仮説を立てて、そこから裏付けとしてのデータ・リサーチ。ウマい馬券では、ここから更に踏み込んで大阪杯を解析していきます。印ではなく『着眼点の提案』と『面倒な集計の代行』を職責と掲げる、岡村信将の最終結論に ぜひご注目ください。
■プロフィール
岡村信将(おかむらのぶゆき)
山口県出身、フリーランス競馬ライター。関東サンケイスポーツに1997年から週末予想を連載中。自身も1994年以降ほぼすべての重賞予想をネット上に掲載している。1995年、サンデーサイレンス産駒の活躍を受け、スローペースからの瞬発力という概念を提唱。そこからラップタイムの解析を開始し、 『ラップギア』 と 『瞬発指数』 を構築し、発表。2008年、単行本 『タイム理論の新革命・ラップギア』 の発刊に至る。能力と適性の数値化、できるだけ分かりやすい形での表現を現在も模索している。
1995年以降、ラップタイムの増減に着目。1998年、それを基準とした指数を作成し(瞬発指数)、さらにラップタイムから適性を判断(ラップギア)、過去概念を一蹴する形式の競馬理論に発展した。 『ラップギア』 は全体時計を一切無視し、誰にも注目されなかった上がり3ハロンの“ラップの増減”のみに注目。▼7や△2などの簡単な記号を用い、すべての馬とコースを「瞬発型」「平坦型」「消耗型」の3タイプに分類することから始まる。瞬発型のコースでは瞬発型の馬が有利であり、平坦型のコースでは平坦型に有利な流れとなりやすい。シンプルかつ有用な馬券術である。