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【桜花賞】3戦3勝で桜花賞馬となったデアリングタクト

  • 2020年04月13日(月) 18時00分

みんなさかのぼると19世紀後半の牝祖が同じ


 雨の重馬場を制したのは、もっとも少ない戦歴2戦2勝で挑戦したデアリングタクト(父エピファネイア)だった。種牡馬エピファネイア産駒の重賞勝ちは初めて。それがGIだったからすばらしい。自身と同じようにビッグレース向きの大物を輩出するサイアーとして成功するのだろう。

 サンデーサイレンスの血のクロスを持つ馬はあふれるように出現しているが、クラシックを勝った馬はデアリングタクトの「サンデーサイレンスの4×3」が初めてだった。

 1番人気レシステンシア(父ダイワメジャー)の牝系は、もう一世紀以上も南米アルゼンチンで発展したことで知られるが、デアリングタクトのファミリーもちょうど一世紀前からGB→USA→ARG→CAN→USAを経た牝系。「6、7、8」代前の母はARGで育った牝系だった。2016年の日本ダービーを1着、2着したマカヒキ、サトノダイヤモンドの牝系がともにアルゼンチンで発展した牝系として話題になったが、今年は桜花賞がアルゼンチン育ちのファミリー出身馬のワン・ツーとなった。

 ファミリーナンバーという分類は、サラブレッドの創世記から長い時間が経過し、世界共通の牝系やサイアーラインが枝を伸ばしている現代ではもうあまり意味を持たないと考えられるが、デアリングタクトの牝系は、同じように「GB→ARG→」の移動を経たあと日本で脚光を浴びることになった点で、150年ばかりさかのぼるとマカヒキと同じ牝祖をもつ同じ「1号族-l」という区分になる。

 3戦3勝で桜花賞馬となったデアリングタクト、3戦3勝で日本ダービー馬となったフサイチコンコルド、4戦4勝で皐月賞馬となったアグネスタキオン(その母アグネスフローラは5戦5勝で桜花賞馬)。みんなさかのぼると19世紀後半の牝祖が同じなので、このファミリーは「無敗のままクラシックまで突き進む…」共通点があるのかもしれない。

重賞レース回顧

もっとも少ない戦歴2戦2勝で挑戦したデアリングタクト(写真提供:デイリースポーツ)


 3戦3勝でクラシックホースとなったのは、2歳戦が創設された1946年以降、日本ダービーのフサイチコンコルド、桜花賞デアリングタクト。たった2頭だけである。

 重馬場に悪化し、レース全体は「46秒5-49秒6」=1分36秒1。後半800mが3秒1も時計を要し、1000m通過58秒0-上がり38秒1。3歳牝馬の桜花賞が重=不良馬場になるとめったに追い込みは効かない。伏兵スマイルカナ(父ディープインパクト)が寸前まで粘ったように、渋馬場の巧拙より、先行力がモノをいうことが多い。

 だが、勝ち馬デアリングタクトは「59秒5-36秒6」=1分36秒1。途中で詰まって後退しかけたが、ただ1頭だけ猛然と追い込んできた。ピッチ走法にも近いので、馬場は苦にしない。祖母デアリングハートは東京1800mの府中牝馬Sを2連勝の記録があり、その半兄には米ダート10FのG1スーパーダービーを完勝したEcton Park エクトンパーク(父フォーティナイナー)がいる。同じく半兄のピットファイター(父Pulpit)は、通算10勝の中にダート2000mのJpnIIIマーキュリーC(盛岡)を7馬身差で独走の星もある。

 重馬場を、ただ1頭だけ上がり36秒台で伸びたエピファネイア産駒。間違いなくスタミナ能力もあるだろう。折り合いは自在。パドックでも前のリアアメリア(父ディープインパクト)の挙動が途中から怪しくなったのに、戦歴2戦のこちらは平然としていた。最近10年のオークス馬のうち7頭は桜花賞出走馬である。

 2着レシステンシアは好位の外から巧みにペースを上げていったが、自身のバランスは「58秒1-38秒2」=1分36秒3。レースの最後の1ハロンは13秒8なので、レシステンシアの最後は14秒0にもなる苦しいレースだった。豊かな先行スピードでこの馬場を乗り切ってはみせたが、重馬場はいかにもつらかった。マイラータイプの印象が濃く、桜花賞でこそ…だったはずが、天は味方しなかった。オークス向きではないように思える。

 3着スマイルカナは、自身の前後半バランス「46秒5-50秒1」=1分36秒6。内枠から宣言通りの果敢な逃げを打ち、懸命にがんばった快走だった。

 M.デムーロ騎手らしくインから差を詰めた4着クラヴァシュドール(父ハーツクライ)、好位から後半失速した8着マルターズディオサ(父キズナ)は、阪神JF→チューリップ賞の好タイム快走が示すようにこの日の馬場では苦しい。厳しいレースが続き、ともにギリギリの馬体に映ったから、このあとは体調が最大の課題だろう。

 6着サンクテュエール(父ディープインパクト)は、馬体重以上に非力な印象が濃く、最後まであきらめなかったが、良馬場でこそ、と思えた。

 5着ミヤマザクラ(父ディープインパクト)は、もまれて終始スムーズな追走にならなかったのが痛い。全兄のポポカテペトル、マウントロブソンなど、距離延びても平気なタイプが多いので、2月のクイーンCを勝っているこの馬は、オークスが展望できるだろう。

 好馬体のリアアメリアは、気性が幼いのではなく、2戦目にスローを下げたあと、次の3戦目は一転、押して超ハイペース追走のレースになるなど、馬がレースを嫌がっているように思えた。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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