いよいよ今週末に迫った日本ダービー。今年はJRA史上初の無観客での開催となります。そこで、おうちにいながらでもダービーの興奮と感動を味わっていただこうと、4名の競馬カメラマンによるWEB写真展を開催します。
今日から2日間登場するのは宮原政典カメラマン。作品テーマは『勝者の涙』(5/27、28公開)です。ジョッキーの涙はなかなか見る機会がありませんが、ダービーだけはやはり特別。4人のダービージョッキーの感情が溢れた胸打つ瞬間…ぜひ、ご覧ください。
5/28公開分
2011年池添謙一騎手
池添騎手といえば、絵になるガッツポーズで感情を爆発させるイメージがあるが、涙も実にストレート。GI初制覇となったアローキャリーの桜花賞、スイープトウショウの秋華賞、ドリームジャーニーの有馬記念などなど、幾多のレースで涙とともに喜びを爆発させてきた。その裏側にあるのは、おそらく「自分をとことんまで追い込んで勝負に向かうスタイル」。二冠が懸かったダービーともなればなおさらで、ウイニングランでも晴れやかな笑顔と涙を見せ、一緒に戦ってきたスタッフの前では子供のように泣きじゃくった。
2012年岩田康誠騎手
フサイチジャンク(2番人気11着)、アドマイヤオーラ(4番人気3着)、アンライバルド(1番人気12着)、ヴィクトワールピサ(1番人気3着)、サダムパテック(2番人気7着)。中央に移籍して以降、ダービーでは立て続けに有力馬を託されてきた岩田騎手だが、なかなかその栄冠には届かず。「ダービーというレースは、乗れば乗るほど遠くなる…」と胸の内を明かしたこともあった。そんな中で巡り合ったのがディープブリランテ。中間は付きっきりで調教をつけ、絶対の信頼を築いて挑んだ大一番。鬣(たてがみ)に埋めた顔は、しばらく上がることはなかった。
5/27公開分
2016年川田将雅騎手
サトノダイヤモンドかマカヒキか──。春のクラシックを前に、トップジョッキーならではの選択に迫られたルメール騎手が選んだのは、きさらぎ賞を制したサトノダイヤモンドだった。マカヒキの鞍上として白羽の矢が立ったのは、着々とトップジョッキーへの道を歩み始めていた川田将雅騎手。皐月賞はディーマジェスティの2着に甘んじたが、ダービーで見事に大輪の花を咲かせた。ゴール後、顔を歪めて天を仰いだ川田騎手。「泣くつもりはなかったけど、グワーッと込み上げてくるものがあった」と振り返った。
2018年福永祐一騎手
普段から涙もろいという福永騎手だが、意外にもレースに勝って泣いたのは、1999年の京都牝馬特別をマルカコマチで勝ったときだけだったという。そのときは、負けても負けても乗せ続けてくれた北橋修二師の顔を見たら込み上げてきたというが、ダービーの涙は少々違った。ウイニングランを終えて、スタンド前に戻ってきたところで相好を崩した福永騎手。のちにあのときの涙を振り返って、「今でもあのときの感情は言葉にできない。それまでは普通でいられたのに、なぜだか急に込み上げてきて…」。説明のできない涙、それこそがダービーの重みなのかもしれない。
【本人コメント】
ジョッキーの涙はなかなか見る機会がありませんが、ダービーだけはやはり特別ですね。普段はあまり感情を表に出さない福永騎手や川田騎手でさえ、やはり込み上げてくるものを抑えられない。そんな姿を見ると、「ああ、これがダービーというレースなんだな」と思います。
今回の4人のなかで一番印象に残っているのは、やはり川田騎手。当時から僕のなかでは“鉄の男”でしたが(笑)、ゴール後、ずーっとアップにして追っていたら、そんな彼が天を仰いで堪えていた。だいぶ昔の話ですが、トウカイテイオーでジャパンCを勝ったとき、普段は首元をポンポンするだけの岡部騎手が、思わずという感じでガッツポーズをしたんです。「あっ!」と目を見張ったものですが、川田騎手の涙は、そのときに近い衝撃がありました。
ダービーの日は、ゴール後、厩舎のスタッフとジョッキーが合流するシーンも印象的です。ウイニングランを終えて、一度は収まった涙が、スタッフの顔を見た途端、またグッと込み上げてきてしまう。確か福永騎手も、その瞬間に笑顔が泣き顔に変わったし、池添騎手もウィナーズサークルに戻ってきてから、また号泣していたような気がします。そういうシーンに遭遇すると、改めて競馬は一人で闘っているんじゃないだなと思いますね。
【プロフィール】
1970年生まれ、埼玉県出身。大学在学中からカメラマンとして競馬誌の仕事を開始。これまでに携わった競馬誌は、『競馬アクション』『競馬フォーラム』『競馬大予言』『馬券ブレイク!』『UMAJIN』など多岐に渡る。勝ち馬のゴールシーンを撮るのが使命も、馬券を買っている馬をついつい狙ってしまうのが目下の悩み。