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【父の日特別企画】父の背中を追いかけ騎手に…木幡3兄弟が語る「優しいお父さん」

  • 2020年06月21日(日) 18時02分
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ソーシャルディスタンスを保ちつつ、史上初の3兄弟揃ってのインタビューをお届け!(撮影:藤井真俊)


“父の日”特別インタビュー。JRAで現役唯一の“3兄弟ジョッキー”である木幡初也(25)、木幡巧也(24)、木幡育也(21)騎手に、父であり元ジョッキーの木幡初広さん(現調教助手)について、幼少期の思い出や、父の背中、感謝の気持ちなど、それぞれの思いを聞きました。

(取材・文=東京スポーツ・藤井真俊)

※このインタビューは、屋外で十分な距離を取り実施しました。

「1番お父さんに似てるのは誰? せ〜のっ…!」


――本日は“父の日特別インタビュー”ということで、お集まりいただきありがとうございます。こういう3人揃っての取材はよくあるんですか?

初也 いや、初めてじゃないかな。巧也と2人ってのはあったけど。

巧也 うん。

育也 初めてだと思います。

――お、それじゃあレアなエピソードも聞けるかもしれませんね。

初也 どうだろう。面白い話なんてあるかな(笑)。

――まずはお聞きしたいのはジョッキーを目指そうと思ったきっかけ。やっぱりお父さんの影響が大きかったのでしょうか?

初也 そうですね。小学校1、2年の頃には意識してたかな。父がレースで乗る姿を見て格好いいと思いました。

巧也 初也はよく競馬を見てたもんね。新聞記事を切り抜いてスクラップしたりしてた。

――具体的に印象に残っているお父さんのエピソードはありますか?

初也 やっぱりレースで勝つ姿ですよね。ファンの方々から大きな声援を受けて…。レースではサクセスストレインで勝った2001年のGIIIクイーンC。その時の写真が実家の和室に飾ってあったんですが、馬主さんと一緒に写る父の笑顔が本当にうれしそうだったんですよ。

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クイーンC優勝時のサクセスストレイン ※中央(撮影:下野雄規)


――巧也くんもお父さんの影響?

巧也 いや、僕は全然(笑)。小5まで野球をやっていて競馬はほとんど見てなかったです。漠然とオートレーサーが格好いいな〜なんて思ってましたよ。

――オートレーサーですか! では騎手を目指そうと思ったのはいつから?

巧也 小5で乗馬を始めてからですね。初也がすでに乗馬をやっていたので、自分もやってみようかと思いました。あとは小学生はバイクに乗れなかったので(笑)。でもいざ始めてみると楽しくて…。それからですね。父のレースも見るようになったし、騎手になりたいと思いました。

――では育也くんは?

育也 僕は初也と一緒で小学校低学年くらいから。ボートレーサーもいいな〜なんて思った時期もありましたけど、兄2人も乗馬をやっていたので、自然と意識するようになりました。小5で乗馬を始めてからは、ますますその思いが強くなって、父の背中を追うようになりました。

巧也 まぁでも実際に乗馬を始めると、騎手を目指す以外の選択肢がなくなっちゃうんですよね。

育也 確かに(笑)。

――どういうことでしょう?

初也 土日はまるまる乗馬漬けになりますし、ジュニアチームに入ると平日も練習。夏休みや冬休みも関係ありません。だから高校や大学への進学など、考えるヒマがないというか…。

巧也 まぁ僕は勉強したくなかったのもありますけど(笑)。

――アハハ。そんな3人に影響を与えた木幡初広・元ジョッキーですが、家庭ではどのようなお父さんだったのですか?

初也 優しかったですよね。もちろん怒る時には怒るけど、怖くはなかったです。

巧也 うん。優しいイメージ。

育也 よく遊んでくれたし、色んなところに連れていってくれた思い出があります。

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育也「よく遊んでくれて優しいお父さんだった」(撮影:藤井真俊)


――ちょっと意外ですね。騎手時代の木幡(初広)さんは、ちょっと取っつきづらいイメージだったんですよ。個人的には取材でよくお世話になりましたけど、レース後は結構ピリピリしていたというか、ちゃんと空気を読まないと話を聞けないような感じで。

初也 そんな感じだったらしいですね。でも家庭では優しかったです。

育也 海に行ったり、一緒に釣りをしたり、キャッチボールをしてくれたり…。

巧也 母の実家が新潟だったので、夏の滞在競馬の時はみんなで遊びに行ってたよね。

――へ〜。すごく優しいお父さんだったんですね。そんな初広さんに兄弟の中で最も似ているのはどなたなんですか? 3人同時にお答えください。せ〜のっ!

初也 自分!

巧也 初也!

育也 初也!

――なんと! 満場一致で初也くんですか。どこが似てるんですか?

初也 顔ですね。

巧也 顔(笑)。

育也 顔(笑)。

――え? そんなに似てます? 個人的には巧也くんの方が似てる気がするんですけど。

初也 いやいや。昔の父と、子供の頃の僕がソックリなんですよ。

巧也 そうそう。騎手になってから初也はアカ抜けたから(笑)。確かに最近は僕の方が父に寄っていっている感じですけど、もともとは初也が1番似てるんですよ。

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初也騎手のJRA初勝利時、お父さんが祝福に駆けつけた(C)netkeiba.com


育也 性格は巧也が似てる気がするけどね。逆に自分は性格はあまり似てないと思う。父ほど固い人間じゃないので(笑)。

――育也くんは?

育也 僕はあんまり似てないですね。どちらかと言えば母親似なんで。あ、でもたまに初也に似てるって言われることはあります(笑)。

騎手名の表記に隠された息子達への愛情


――父としてではなく、先輩騎手として初広さんから教わったことや、印象に残っているエピソードはありますか?

初也 う〜ん…。

巧也 あんまり向こうからそういう話はしてこないんですよね…。

育也 騎乗の姿勢とか、しっかり追ってくるようにとかは言われましたが、あまり細かくは…。

――へ〜。事あるごとに助言やアドバイスをしてくるタイプではないんですね。

初也 そうですね。そもそも騎手になることを勧めたり、あるいは止められたりということすらなかったですから。

――それもちょっと意外です。というのも初也くんがデビューするにあたって、個人的に印象に残っているエピソードがあるんです。騎手名の表記に関する話なんですけど、聞いたことあります?

初也 何となくは聞いたことありますけど、詳しくは知らないです。

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初也騎手のデビューを前に、お父さんがとった行動とは…(撮影:藤井真俊)


――初也くんがデビューする時には、すでに木幡姓のお父さんがいたため、木幡ファミリーの表記は分けないといけない。そこで過去の例をひも解くと、お父さんを木幡初か木幡広と表記し、初也くんが木幡也となるのが自然なわけです。

初也 そうですね。

――しかしそこで初広さんは動いたんです。初也くんの後にも弟たちが騎手を目指していて、みんな名前に“也”がついている。すると全員がデビューした際には父が木幡初か広で、長男が木幡也、次男が木幡巧、三男が木幡育という、ちょっと変な感じになってしまう。だからそういう事情を説明したうえで「自分の表記を木幡広にして、長男を木幡初にしてください」とマスコミ各社に要望したんですよ。

初也 え、そうなんですか?

――うん。自分もその相談をしている場にいたから間違いない。どちらかと言えばぶっきらぼうな印象のある木幡(初広)さんだったのに、子どものためには積極的に動くんだなぁ〜って感心した覚えがあります。だからてっきりデビュー後も細かくダメ出ししたり、アドバイスしたりしてるのかと思ったんですが…。

初也 いや〜。そんな感じじゃないんですよね。でもいい話ですね(笑)。

巧也 うん。全然知らなかった。

――あとは巧也くんにも聞きたいことがあります。3兄弟の中では唯一ご結婚していて、お子さんもいらっしゃいます。ご自身が父親となったことで、改めてお父さんに対して芽生えた気持ちや感情はありますか?

巧也 そうですね。まずは命がけでお金を稼いで、自分たち家族を養ってくれたことに対する感謝。そして自分も父のように一家の大黒柱として頑張らねばならないと思いました。あとは母に対しても改めて感謝しています。

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巧也「父のように一家の大黒柱として頑張らねば…!」(撮影:藤井真俊)


――それはどういうことでしょう?

巧也 自分は父と同じ職業に就いて、どうしても週末だったり、長く家を空けることもあるわけじゃないですか。

――はい。

巧也 そうすると育児の部分だったり、どうしても妻に頼らなければならない部分が多くなるわけです。そんな時に自分の母親もそうやって頑張ってくれていたんだなぁ〜って。まして自分たちは3兄弟でしたから、どれだけ大変だったろうって思うんです。

――なるほど。それでは最後に“父の日”に何かお父さんにプレゼントなどを贈る予定はありますか。

初也 え…。いやとくにないかな(笑)。

育也 これまでもあんまりそういうの贈ったことないかも(笑)。

――3人で一緒に…とかもなかったですか?

初也 はい(笑)。いや、何もしてないってわけじゃないですよ。実は父の誕生日が6月14日なんで、あまり“父の日”っていうのは意識してなかったんですよね。あとはその時期はちょうど函館開催で、父が出張に行ってることも多くて…。

――なるほど〜。

育也 でも今年はなにか贈ってみてもいいかもしれないですね。

巧也 うん。ウチは子供の写真でも贈ろうかな。

初也 僕はどうしよう。お年玉かな(笑)。

――きっと喜んでくれるでしょうね。今日は長々とお付き合い頂いてありがとうございました。

初也 こちらこそありがとうございました。でもこんな内容で大丈夫でしたか? “母の日特集”だったら、もっと面白いエピソードがたくさんあったんですけど(笑)。

育也 確かに(笑)。

巧也 じゃあ今度はぜひ母の日に呼んでください(笑)。

(※文中敬称略)

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