JRAでの入場再開は延期に…その背景には
中央競馬でも8月15日の新潟開催から限定した形でファンの入場再開を発表したが、一転取り止めの発表にはちょっと驚いた。“新潟県在住のお客様限定”ということならリスクも低いかと思われるが、「全国規模での新型コロナウイルスの感染拡大傾向が顕著となっていること等を踏まえ……」ということでの措置となった。
地方競馬では、ばんえい帯広で7月11日(土)から、岩手競馬で12日(日)から、開催本場への一般客の入場を再開。これはプロ野球やサッカーJリーグでの入場再開とほぼ同時期のことだった。
そしてこれに続くのが南関東だ。浦和競馬では8月12日の開催から、1日最大331名に制限しての入場を再開。この331名というのは、特別観覧席636席の約半数という数字。入場は事前申し込みで抽選となる。
大井競馬場では、9月の開催から一般客への正式オープンに向け、8月中に有料会員等を対象として「招待制」でのプレオープンを実施すると発表された。
また川崎競馬場でも、9月以降の入場再開に向け、8月24日(月)に、事前予約制による来場者数を限定したプレオープンを実施すると発表。正式オープンについては、プレオープンの実施状況を踏まえたうえで、後日あらためてお知らせとなっている。
いよいよ地方競馬では、首都圏の競馬場でも観客を入れての競馬が始まることになりそうだ。とはいえ陽性者・感染者が急激に増えるようなことがあれば中止ということもありえるのだろう。
地方競馬全体の今年度4〜6月の馬券の売上げは、前年同期比で127.2%と、無観客にもかかわらずかなりの伸びを見せている。しかもすべての主催者で前年比より増加。もともと分母の大きい南関東では4場の合計で前年比111.0%だが、それ以外の主催者は125〜165%という伸び。もっとも増加率が大きいのは相変わらず高知の165.3%で、次いで155.0%で佐賀、さらにばんえい帯広が153.7%というのには驚かされる。
それだけ売上が伸びていれば、無観客ならお客さんを入れるための経費もかからず、主催者は儲かっているようにも思えるが、必ずしもそうとは限らない。
地方競馬では、JRAの場外発売所(WINS、J-PLACE)として機能している競馬場も少なくなく、それはごく一部を除いてまだ再開されていない。再開されたところでも人が滞留・密集しないように、発売時間や発売レースを限っての発売となっている。
WINSやJ-PLACEとしても機能している地方競馬では、コロナ以前にはあったその手数料収入が途絶えたまま。地方競馬の売上は増えていても、その分の収入がなくなり、経費削減を迫られる主催者もあると聞く。
一方でJRAでは、PATでの地方競馬の馬券発売を続けており、引き続きその手数料収入はあり、しかも地方競馬全体の売上が上がっていることから、JRA-PATでの売上も増加しているものと想像できる。
無観客開催における馬券の売上げは、中央競馬より地方競馬で顕著な増加となっているが、相互発売分の収入も合わせると、むしろ厳しいのはJRAより地方競馬のほうなのかもしれない。
まずは感染拡大予防を最大限図ったうえで、有観客での自場開催。次いで、WINS/J-PLACEでの発売再開。地方競馬の主催者が財政的に昨年度レベルに戻るのは、それが実現してからのようだ。