利便性の高い新たなバス路線の整備を願いたい
昨日、JR日高線の廃止、バス転換が正式に決定するという。新ひだか町静内で開催された沿線7町長による町長会議にて、来年3月で廃止した後、4月より代替バスを運行することで、来月9月中にJR側と最終合意の見通しと報じられている。
馬産地を通過するJR日高線
2015年1月の高波被害により、不通になって以来5年7か月。これまでJR北海道側に全面復旧を求めてきたが、典型的な赤字ローカル線でもあり、86億円もの復旧費用を投じたとしても黒字転換はまず不可能で、JR側より早い時期から、廃止、バス転換の提案があった。
当初は沿線7町が一丸となり、あくまで全面復旧することを要求していたものの、経営の厳しいJR北海道側が難色を示し、交渉が難航していた。やがて浦河町長を除く6町長が廃止を容認するに至り、沿線7町長が6対1の対立構図となって議論が停滞した時期もあったが、今回ようやく正式な廃止合意に至ったということのようだ。
日高線は、苫小牧〜様似間の146.5キロを結び、長らく地域住民の足としての役割を担ってきた。しかし、高度成長期に鉄路から自動車への転換が進むにつれて徐々に国道が整備され、さらに近年は日高自動車道の延伸(現在、日高町厚賀まで開通)も進んできて、利用者の減少が顕著になっていた。不通になる前年の2014年度における日高線の営業収益は1億4300万円。一方の営業費用は16億8700万円。営業損益は-15億4400万円に達し、営業係数はこの年でも1179円であった。
1月の高波被害による不通により、翌2015年度は代替バスの運行を余儀なくされたことから、さらに収支が悪化した。この年の営業収益は前年から6億円もの減収の8200万円。それでいて営業費用はむしろ増加し17億5000万円。営業損益は-16億6800万円にまで拡大し、営業係数は2125円と大きく悪化してしまった。100円の収入に要する費用がいくらかかっているかを示すのが営業係数だが、これでは仮に鉄路を復旧させたところで収支改善は望みが薄い。
北海道新聞によれば、「(JRからの日高線廃止提案に対して)不通が長期化する中で沿線では目立った存続運動は起きず、やがて高波被害を受けた護岸の早期復旧を求めていた新ひだか町、新冠町などから、廃止容認に転じる動きが出てきた」とのこと。
不通になって3年3か月経った2018年4月には、日高自動車道が厚賀インターまで延びた。「災害復旧をするのが当たり前。地域に多様な交通手段を残すべきだ」と、あくまで全面復旧を主張してきた浦河町の池田拓町長とは、このあたりから考え方に温度差が生じてきた。おそらく新冠町、新ひだか町(とりわけ旧・静内町)が廃止容認に傾いたのは、すぐそこまで日高自動車道が延びてきたことと無関係ではなかろう。実際に、札幌や苫小牧東インターから日高自動車道に入ると、比較的スムーズに厚賀インターまでは到達する。厚賀インターを降りて、新冠市街までは10分少々である。新冠市街と新ひだか町静内は近接しており、高速から一般国道に降りても、それほどストレスを感じることなくたどり着く。
浦河町は、その新ひだか町静内から40キロ余り。所要時間にして1時間弱かかる。この1時間の差が日高線への対応の違いとなって表れていたと考える。
日高自動車道は、計画によると、浦河町まで延びることになっている(らしい)が、現状ではそれが果たしていつ頃のことになるのか全く見当がつかない。現在、厚賀インター〜新冠までの間は各所で工事が進んでいるが、それとて、何年後に完成するのかも分からない。そもそも、計画通りに日高自動車道が静内以東まで延びてくるのかどうかさえ、今の状況ではかなり疑わしい。
日高線廃止により来年4月以降は従来の列車代行バスと高速バス、路線バスを再編し、より利便性の高い路線が運行される予定という。日高管内は、過疎化に加え高齢化も進んでいる地域である。自動車の運転ができない住民の生活の足としての役割を、十分に果たせるような新たなバス路線の整備を願いたい。