先日、安倍晋三首相が、持病の潰瘍性大腸炎悪化により辞任を表明した。私の母も生前、潰瘍性大腸炎を患っていた。が、首相も服用して症状が改善したというアサコールという薬を服用するようになってから、ずいぶん状態がよくなった。その後、母は別の病気で世を去ったが、同じ病気に苦しむ家族を持つ者として、同じ薬を使っている首相が精力的に活動する姿にはずいぶん勇気づけられた。安倍首相、長い間、お疲れさまでした。
さて、9月になり、来週からはいよいよ秋競馬が開幕する。
JRAは、スプリンターズステークスが行われる10月4日まで、引きつづき無観客で競馬を開催すると発表した。先週から今週にかけて、川崎と船橋で開催が中止になったばかりでもあるし、まだまだ制限を緩める方向に進むべきではないと判断するのは当然か。
四位洋文調教師の騎手引退式が行われた2月29日から始まった無観客競馬は、ちょうど半年が経過した。四位調教師の引退式は、コロナが落ちついてからにしてはどうかとも打診されていたというが、もしそうしていたら、今年中にできたかどうかも怪しいところだ。今思うと、本人の意向であのときにやっておいて正解だった。
ことコロナに関しては、「今思うと」ということが実に多い。
感染が拡大しはじめてからしばらく、マスクや消毒液のほか、ティッシュやトイレットペーパーまで品薄になった。また、インドで感染者が少なかったこともあり、「コロナにはカレーがいいのでは」と言われ、カレー店が異常な賑わいを見せたこともあった。
近所での散歩を含め、外を出歩くことさえよくない、と言われていた時期もあった。
東京オリンピックの延期が決まったのは3月24日で、その2週間後の4月7日に緊急事態宣言が発出された。緊急事態宣言を先に発出すると、オリンピックは延期ではなく中止にされる恐れもあるとの判断からこの順序になったと見ることもできるのだが、緊急事態宣言を早く出すべきだという声があったなかでも、名目上の可能性としては、オリンピックをこの夏開催する可能性も残されていたわけだ。今思うと、冗談みたいだ。
飲食店などの営業自粛が求められるなか、営業をつづけたパチンコ店と、そこを訪れた客が叩かれた時期もあった。が、私がニュースをチェックした限り、クラスターらしきものがあったパチンコ店は、先月、従業員5人の感染が明らかになった新潟の1軒だけで、それとて客からは出ていない。みなが同じ方向を向いて、しゃべらずに、黙っているぶんには感染リスクは低いのだろう。
コロナと競馬に関しても、そうだ。
はたして無観客競馬で大丈夫なのかと思っていたら、周知のとおり、売上げは好調で、クラシックでは牝牡ともに無敗の二冠馬が出るという歴史的なシーズンになった。
また、JRAは、いつからいつまでと期限を区切って、無観客競馬にすることを発表してきた。ということは、そのあとは客を入れる可能性があるという含みを持たせていたわけだが、開始から半年経った今もこうしてつづいていることを、3月ごろには予想できなかった。今思えば(私だけなのかもしれないが)、楽観的すぎた。
JRAの秋競馬が開幕する中山と中京から地理的に(比較的)近い地方競馬の2場は、有観客競馬に向けて動き出している。名古屋では9月1日(火)から再開され、翌日のスポーツ紙の結果の欄に「▽入場 822人」と、久しぶりに観客数が載った。また、大井では、9月7日(月)から指定席事前当選者に限り入場が再開される。帯広、盛岡、水沢、浦和、川崎につづく有観客競馬の再開である。
南関東の騎手に感染者が出たことで、同じような距離感で仕事をする地方競馬の他地区やJRAの騎手たちにとって、ケーススタディの材料が得られた。ひとり感染者が出たら、どのくらいひろがるのか。濃厚接触者はどのくらい隔離すればいいのか、何日くらいの開催中止になるのか……といったことを、今後判断するうえでの、ひとつの尺度になる。
日本中の、そして世界中の競馬場で有観客競馬が再開されるのはいつになるのだろうか。
「今思えば、コロナで無観客競馬をやっていた時期があったんだよね」と言える日が、早く来てほしいものだ。