【スプリンターズS】今でも瞼に焼きつく偉大なる龍王の姿
スプリンターかくあるべし
秋の中山に快速馬が揃い、各種ある路線に先駆けてスプリント戦のチャンピオンが今週決まる。初秋からやがて夜寒へ、秋雨から紅葉へと次第に秋が深まるにつれ、各路線の顔触れが揃い覇を競うのだが、細やかな季節の変化に応じて野の花が順番を待つのに似ている。秋気澄むという感じに晴れ渡った空を見る思いで、それぞれの頂上決戦に声援を送りたい。
スプリンターズSと言えば、近年の短距離王ロードカナロアの栄光のスタートとなった大一番だが、全てのスプリンターの目標となるこの馬をしっかり知っておくことで、勝ち馬に近づくことが出来るのではないか。
2歳の12月、小倉の1200米の新馬戦で6馬身差の圧巻の勝利をつかみ、翌年4戦目の4月の1200米から4歳の1月のシルクロードSまで5連勝し、スプリント能力をアピール、高松宮記念で初めてGIに登場していた。この時は、前年のスプリント女王で厩舎の先輩カレンチャンに貫録を見せつけられ3着に敗れたが、春は馬体が出来上がってはいないしと、むしろ今後の成長に期待を抱かせていた。
そしてひと夏越した4歳秋、このスプリンターズSに成長した姿を見せていた。だが、中山では不利と言われる大外の16番枠で、デビュー以来12戦目にして初めて1番人気の座をカレンチャンに譲って2番人気だった。ともに安田隆厩舎所属だが、カナロアの長所について、どんな状況にあっても平常心を保っていられる、レースではいつも全力を出し切ってくれると語っていた。
果たしてレースでは、すごいペースの中でも自分のリズムで中団よりやや後ろを追走し、先に仕掛けたカレンチャンを見据えて馬群の外を回って直線に向くと、真っすぐ伸び、力でねじ伏せてレコードで勝利していた。岩田康騎手は、ここで勝たせるのが使命と述べていたが、強すぎる、速すぎるというのが実感だった。
その後は、日本馬にとっては悲願の国際G1香港スプリントを勝ち、翌年の5歳時は6戦して、高松宮記念、安田記念、そしてスプリンターズSと香港スプリントの連覇で有終の美を飾って、種牡馬入りしている。
産駒から、アーモンドアイ、サートゥルナーリアなどを早くも輩出し、その夢はまだまだ広がっていくが、現役時のスピードがあって最後まで走り抜く切れ味こそ、スプリンターとしての類稀な資質であったと言える。
今年のスプリンターズSには、その産駒からダイアトニック、ダノンスマッシュが出走するが、ともに5歳、成長した姿をどう見せてくれるか。いずれも安田隆厩舎というのが面白い。モズスーパーフレア、グランアレグリアのGI馬2頭は、今年強い牝馬の流れに乗って勢いがあるので、これらを含めた考え方でいきたい。