3冠馬としての注目度
秋華賞のデアリングタクト、強かったですね。何はともあれ、無敗の3冠制覇はお見事でした。
その快挙を、翌日の朝日新聞は一面で取り上げていました(“版”によるかもしれませんが)。同紙の競馬担当・有吉正徳記者にうかがったところ、牝馬が一面の記事になったのは「2000年までさかのぼって調べてもなかった」とのこと。ウオッカもアーモンドアイも一面記事にはならなかったわけです。それ以前の馬ではちょっと考えられないので、今回が史上初だったかもしれません。
では、これまでの牡馬3冠制覇が達成された菊花賞のうち、最初に朝日、毎日、読売新聞のいずれかで一面記事になったのは、どの馬が勝った時だったでしょう?
正解は1994年、ナリタブライアンが制した時。その時も朝日新聞が一面で報じていました。全日本大学駅伝で早稲田大学が3連覇を果たしたニュースと、同馬の3冠とをセットにした記事でした。
逆に言えば、シンザン、ミスターシービー、シンボリルドルフが3冠を制覇した時でも、“朝毎読”の一面記事にはならなかったということです。
ただし、それぞれ“それなり”の扱いは受けています。シンザンの時は、菊花賞を前に朝日のスポーツ面で「けわしい三冠馬への道」と題して、上下2回にわたって特集記事が掲載されました。
そこには、春2冠後に夏を乗り越える調整の難しさ、他馬から受けるマーク、騎手の精神的動揺などがあるため、3冠馬になるのは相当難しい、というような話が書かれています。
しかし同馬はそんな不安を一蹴、23年ぶり2頭目の3冠馬になりました。すると朝日は、スポーツ面のトップでそれを伝え、「ハイライト」というタイトルで好騎乗の栗田勝騎手にスポットライトを当てた記事を載せました。
さらに、一般面の名物・「ひと」欄では武田文吾調教師も取り上げています。記者の方いわく「馬を知っている調教師は多いが、競馬を知っている調教師は案外少ない。その中で光っている調教師である」とのこと。けっこう大胆な書きっぷりだと思いませんか?
ミスターシービーとシンボリルドルフの時は3紙ともに菊花賞を前に“展望記事”を載せていました。もちろん、両馬の3冠制覇はスポーツのビッグニュースとして報じられています。
3紙すべてが3冠を一面記事にしたのは、そう、2005年、ディープインパクトの時。しかも、朝日と毎日の「ひと」欄と読売の「顔」欄が、揃って池江泰郎調教師をクローズアップしました(朝日では有吉記者が記事を執筆)。さすがディープ。一般紙の扱いも他馬より“飛んでいた”んですね。
さぁ、今度はコントレイル。無敗での3冠制覇を達成したら、翌日の一般紙はどのように取り上げるでしょうか?