一競走・一日ともに発売金額のレコード更新
いよいよ今週でホッカイドウ競馬も最終週となる。昨日は、北海道2歳優駿がJBC2歳優駿として生まれ変わった記念すべき第1回目を迎え、また春以来続けられてきた無観客開催から、ようやく人数限定ながら一般ファンを迎え入れることになり、非常に注目が集まった。
私たち取材陣に対しても、事前申し込みが義務付けられた。さらに駐車場は競馬場西側の一般用駐車場が指定され、そこからスタンド近くの臨時入場門までシャトルバスでの移動となった。マスク、検温はもちろんのことで、いつにも増してコロナ対策が徹底している。午後2時に競馬場入りした時には、すでに多くの人々が場内に詰めかけ、パドックを囲んで熱心に出走馬に視線を送る光景が見られた。
この日のホッカイドウ競馬は、全11レースで、JBC2歳優駿は第9レースに組まれている。最終第11レースには、牝馬2歳による第8回ブロッサムカップと、重賞2本立てである。さらに、それ以外の第1〜第8レース、および第10レースは、サラブレッド生産地である胆振日高の各町がそれぞれ町長杯を出し、「安平町長杯・未来へ駆けるまち安平特別」(第1レース)「新冠町長杯 レ・コードな町新冠特別」(第7レース)などという名称が付けられている。因みに我が浦河町は「馳星周直木賞受賞記念浦河町特別」となっていた。
また第8レース発走は午後4時5分だが、その後、メインの第9レースJBC2歳優駿は午後5時50分発走。実に1時間45分もの空き時間となる。その間は、大井でJBCレディスクラシック(4時30分)、JBCスプリント(5時10分)が組まれており、JBC2歳優駿終了後の6時30分に大井でJBCクラシックが発走を迎える。要するに、JBCデーとして、最大限に注目度を高めようというスケジュールである。もう一か所の園田競馬も、最終12レースを午後4時15分に終えており、4時30分以降は、大井と門別のJBC競走4レースに集中してもらおうということなのだ。
昨日は報道陣も多かった。テレビ局などの動画チームも複数競馬場入りしており、そのために臨時のプレスルームが設置されていた。
第8レース後の空き時間を利用して、ウイナーズサークルでは、第1〜第8レースまでの表彰式が行われた。しかし、コロナ禍での開催中という事情もあり、勝ち馬の馬主や生産者が来場していないレースも多く、やや間の抜けたような表彰式であった。
第1〜第8レースまでの表彰式がメインレースまでの空き時間に実施された
それにしても、一般ファンよりも数が多かったのが、いわゆる来賓で、各町の町長はじめ、背広着用のお役人と思しき人々の姿が目に付いた。各町の協賛レースを実施するなどの事情があったにしても、これにはやや違和感を覚えずにはいられなかった。本当に来たいと強く願うファンが抽選に漏れて入場できないでいる反面、立場上、あるいはお役目として来場したような背広組が多数いる光景は、いかにも本末転倒の感が拭えなかった。
JBC2歳優駿には、中央勢5頭を含め全14頭が出走した。人気はやや割れ加減で、1番人気は9番タイセイアゲイン(栗東・松下武士厩舎、吉田隼人騎手)の2.3倍。その後に6番ルーチェドーロ(美浦・高橋裕厩舎、横山武史騎手)の6.4倍、さらに地元ホッカイドウ競馬の10番シビックドライヴ(田中淳司厩舎、赤岡修次騎手)の7.7倍、13番レイニーデイ(美浦・矢野英一厩舎、岩田望来騎手)7.9倍と続く。発送時刻が近づいた頃に突然の通り雨に見舞われたものの、幸いにもすぐに止んだ。ただし、前日に降った雨のために、馬場状態は不良の発表である。この時期の北海道は、気温の低下と日照時間の短さにより、一度悪化すると馬場状態がなかなか回復しない。
発走時間が迫り、熱気高まるパドック
定刻の午後5時50分。東京トゥインクルファンファーレ隊の生演奏によるファンファーレが鳴り響く。距離1800m。各馬がゲートに続々と導かれ、いよいよJBC2歳優駿がスタートした。各馬が一斉に最初のゴール前を通過して行く。5番菱田裕二騎手のカズカポレイを先頭に、各馬が1コーナーから2コーナーを回る。しかし、カズカポレイは3コーナーで失速し、代わって12番ブライトフラッグ(桑村真明騎手)、13番レイニーデイが4コーナーを回ったところで先頭に立つも、直線半ばで両馬を交わして抜け出したのは8番ラッキードリーム(石川倭騎手)であった。その外から11番トランセンデンス(岩橋勇二騎手)が強烈な追い込みを見せて迫るも、首差及ばずであった。1馬身遅れて3着にレイニーデイ。4着ブライトフラッグ、5着14番サハラヴァンクール(松井伸也騎手)と、レイニーデイ以外の掲示板を地元馬が占める結果となった。
初代チャンピオンに輝いたのはホッカイドウ競馬所属のラッキードリーム
ラッキードリームの口取りの様子
終わってみれば、上位を道営勢がほぼ独占し、10着以下に大井からの遠征馬カイカセンゲンと1番人気のタイセイアゲインを含む中央勢が二桁着順に沈むという、他の交流重賞とは真逆の結果であった。
レース後引き上げてくるラッキードリームと石川倭騎手
「最後まで気が抜けませんでした」と語った石川倭騎手
騎乗した石川倭騎手は「非常にうれしいです。行く馬を行かしてその後ろくらいで進めろと先生から指示されていました。手ごたえ良く4コーナーを回ったので全力で必死に追いました。抜け出してから、外から来ているのを分かっていましたので、最後まで気が抜けませんでした。僕の指示に従ってくれる非常に乗りやすい馬。今後はまたいろいろなところに挑戦することになりますが頑張って欲しいです」とレース後の表彰式で語っていた。
また同馬を管理する林和弘調教師は「前走よりは具合が良く仕上がりました。とにかくうれしいです。一応、全日本2歳優駿に行くことになると思います。明日、明後日、レースが終わってから考えようと思っています。第1回JBC2歳優駿を勝たせて頂いてありがとうございます。これからもJBCが続いて行って大きな祭典になるように望んでおります」と話した。
記念すべき第1回JBC2歳優駿を制したラッキードリームは、牡2歳鹿毛、父シニスターミニスター、母サクラスリール、母の父ファンタスティックライトという血統で、新ひだか町の谷岡牧場生産。馬主は林正夫氏。これで通算成績を6戦4勝、獲得賞金は3820万円となった。
表彰式後には記念撮影が行われた
また、この日の最終11レースに行われた第8回ブロッサムカップは、ホッコータルマエ産駒のモリノオーシャンが優勝した。桑村真明騎手、角川秀樹厩舎の管理馬で、馬主は森和久氏。生産は浦河・田中スタッド。
最終レースのブロッサムカップはモリノオーシャンが優勝
モリノオーシャンの口取りの様子
なお、記念すべき第1回JBC2歳優駿は、1レースの売り上げが9億7489万8000円、一日の売り上げも17億3609万7980円となり、従来の記録(今年8月13日、ブリーダーズゴールドカップ当日に記録)をそれぞれ大幅に塗り替えた。そして、この日、春の開幕以来の売り上げ総額が、ついに500億円を突破して、506億円余となったことを付記しておく。