子供たちと触れ合う由美子(提供:ノースポールステイブル)
由美子の観光馬車 クラウドファンディング達成!
「人と馬との共生を目指して 希少馬 由美子の観光馬車を走らせたい!!」と題してNPO法人あしずりダディー牧場が実施していたクラウドファンディングは、前回お伝えした段階で残り1週間を切って達成率が50%台とかなり厳しい状況だった。しかし日を追うごとに支援者がみるみる増えて、16日には目標額3,900,000円を達成。さらに支援は続き、最終的(1月18日23時締切)には401名から4,593,000円が集まった。
この奇跡的な追い上げにより、移転先である土佐清水市の足摺宇和海国立公園内にある唐人駄場において、由美子が曳く観光馬車の実現が可能になった。ちなみに目標額の3,900,000円の内訳はクラウドファンディングのページにもしっかりと記載されているが、余剰分は由美子の健康管理に使用するとSNS上でも発表されている。
また新天地移転を前に、2頭のスターホースもあしずりダディー牧場に仲間入りをしている。昨年5月にまずやって来たのが、2008年のファルコンS(GIII)を制したアメリカ生まれのダノンゴーゴー。競走馬を引退後、2011年から熊本県の村山牧場(現ストームファームコーポレーション)で種牡馬として繫養され、2019年まで種付けを行っていた。あしずりダディー牧場代表・宮崎栄美さんの“牧場の存在を多くの人に知ってもらいたい”という願いもあり、重賞勝ち馬を迎え入れることを希望していたが、ダノンゴーゴーの種牡馬引退にともない、縁あってやって来たのだった。(
ダノンゴーゴーが仲間入り! 高知・あしずりダディー牧場)
お手入れ中のダノンゴーゴー(提供:あしずりダディー牧場)
2021年3月13日で満16歳になるダノンゴーゴーは、さすがに種牡馬時代のように筋骨隆々ではなくなったが、のんびりと健康に毎日を過ごしている。
「ダノン君は本当に大人しいですね。噛んだりもないですし、特に問題はないですね。ただ他の子と喧嘩をする時があります。相性が悪い子がいて、その子と一緒になると噛み合いをするので、隣同士にしたらダメですね。人間にも好き嫌いがあるように馬にもあるのだなと思います」(宮崎さん)
クラリティスカイ、第三の馬生へ
昨年12月に移動してきたのは、2015年のNHKマイルCの覇者クラリティスカイだ。こちらは競走馬引退後は乗馬として第二の馬生を送っていたが、飼養されていた乗馬クラブの閉鎖が決まり、こちらも縁が繋がってダディー牧場の一員となった。
「実はその乗馬クラブの閉鎖を知って、1番高齢の馬を引き取りますよと電話をかけたんです。先方はありがとうございますと仰っていましたが、高知まで輸送する体力がないので難しいですと言われました」
クラブとは一旦縁が途切れたかと思われたが、結局そのクラブにいたクラリティスカイが牧場に来ることになった。
クラリティスカイは、2012年3月7日に北海道新冠町のパカパカファームで生まれた。父は先日亡くなったクロフネ、母はタイキクラリティ、その父がスペシャルウィークという血統だ。2014年7月に中京競馬場の芝1400mでデビューし4着。初勝利は3戦目で阪神の芝1800mの未勝利戦だった。その後、出世レースと言われるいちょうS(現サウジアラビアロイヤルC)に優勝。続く朝日杯フューチュリティSではダノンプラチナの3着に入った。3歳になってからは弥生賞6着、皐月賞5着とまずまずの走りを見せると、NHKマイルCではアルビアーノ以下を抑えて、見事にGI制覇を成し遂げた。同じ母系からは、第1回NHKマイルCを制したタイキフォーチュンが出ており、クラリティスカイの勝利も血筋によるのかもしれない。
NHKマイルCを制したクラリティスカイ(撮影:下野雄規)
だがNHKマイルC後は惨敗するレースも多く、勝ち星を重ねられないまま2018年8月25日のBSN賞(OP)10着を最後に競走馬生活にピリオドを打った。
宮崎さんは、今年9歳になるクラリティスカイがどのような毎日を過ごしているのかを楽しそうに教えてくれた。
「厩舎の木の部分をよく噛んでいるんですよ。ですから馬房の中も噛んでガリガリになってます(笑)。最近は好んで噛む部分にボールを吊るしてあるので、別の場所を探して噛んでいますが、そこは彼にとってポイントではなかったようで、馬房の中では噛む回数が減っています。噛む場所にこだわりがあるみたいですね(笑)。
噛む場所へのこだわりが強いクラリティスカイ「あの部分が好きなんだ!」(提供:あしずりダディー牧場)
無口も噛んできますし、人間も噛むんです(笑)。これは今に始まったことではないという感じはしますね。例えばカプッと服を噛んだりするのですが、それをなかなか放してくれないんです。なので手で開けることもありますが、その時も耳を伏せて怒ったりせずに素直に従ってくれます。馬は遊んでいるのだと思いますし、喜んで人間の相手をしているという感じですね。これが攻撃だったら大変ですよ、あの歯ですし(笑)。
運動も足りてないのでしょうね。4カ所の放牧地に15頭全頭を交代で放しているので、1頭あたりが半日ほどになりますから」
だが唐人駄場に移転すれば、運動不足は解消されそうだ。
「馬の相性もありますのでエリアは分けますけど、移転先は広いので何頭も一緒に放すようになると思います。ゴルフ場のようにアンジュレーション(起伏)がついていますので、今度は運動にもなりますし、筋肉もつくでしょう。クラリティスカイも、さほど噛まなくなるのではないかと思っています。でも穏やかな気性ですし、手入れの時も大人しくて、可愛らしい性格をしています。そして何よりGIホースが来てくれたということも嬉しいですね」
宮崎さんとクラリティスカイ(提供:あしずりダディー牧場)
競馬ファンや観光で訪れる人に喜んでもらえるように、重賞を勝った有名馬などの受け入れを今後も増やしていきたいと宮崎さんは意気込んでいる。そして由美子の曳く花で飾り付けをした観光馬車も、人気を博することだろう。
(つづく)
▽ NPO法人 あしずりダディー牧場 命の会 HP
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