生え抜きの有力馬が出てきてもおかしくない
昨日は高知競馬で唯一実施されている交流重賞「黒船賞」が行われた。ネット中継でレースの模様を見ていたが、先行するグリム(武豊騎手)を追って二番手につけたテイエムサウスダン(岩田康誠騎手)が、4コーナーで先頭に出るとそのまま2着馬スリーグランド(福永祐一騎手)に8馬身差をつける圧勝であった。
2着に8馬身差をつけ圧勝したテイエムサウスダン(C)netkeiba.com、撮影:武田明彦
岩田騎手はこのレース5勝目と相性が良く、まったく危なげのない強い勝ち方でテイエムサウスダンに二つ目の重賞勝ちをもたらした。3着には南関から遠征したモジアナフレイバー(繁田健一騎手)が入り、上位を占める中央勢に食い込んだ。グリムは4着、5着にサクセスエナジー(松山弘平騎手)という着順である。
2018年サマーセール取引時のテイエムサウスダン
すでに報じられているように、このレースは、6億4180万8500円を売り上げて、高知競馬の1レース当たりの記録を更新した。のみならず、この日1日の売り上げも、今年1月27日に記録した13億8487万円余を大幅に上回る16億2188万2700円に達し、W更新となった。
コロナ禍にあって、多くの業界が売り上げ減に苦しむ中でも、競馬は、(笠松競馬は自粛中だが)開催休止に追い込まれることなくひじょうに堅調に推移しており、その中でも、この高知競馬は、今まさに「この世の春」といった追い風が吹きまくっている印象だ。
高知競馬は、他の地方競馬と同様に、4月〜翌年3月までの会計年度で収支を算出しているので、今月末までの売り上げを見極めなければならないが、令和2年4月〜令和3年2月までの売り上げは、地全協によると、95日間開催で706億5918万1500円。前年比で151.1%。また1日当たりの売り上げも、7億4378万900円と、前年比149.5%という成績である。
前年同期(平成31年4月〜令和2年2月)の高知競馬の売り上げは94日間で467億6963万3000円と500億円に届いていなかったので、いかに数字が伸びているかがうかがえる。
高知競馬の今月開催は、1日、2日、7日、9日、10日、14日、16日、17日、21日、23日、24日、28日、30日、31日の計14日間。日曜日、火曜日、水曜日と週3日間日程が月初めから月末まで続く。
今月に入っても、10億円を超える日が多いのと、昨日が16億円もの上積みとなったので、ざっくり年間総売り上げを予測すると、概ね850億円までは行きそうだ。ひと昔前の苦境に喘いでいた時代が嘘のような奇跡の大躍進で、ただただ驚く他はない。
開催日数が違うので、総売り上げの単純比較はあまり意味をなさない。そこで1日当たりの売り上げについてみると、高知は、今や南関4場に次いで、全国5位の位置まで上り詰めている。
さすがに南関4場は、いずれも1日平均で10億円を超えており、この4場の牙城は簡単にくずせないだろうが、しかし、かつて南関に次ぐ売り上げを誇っていた兵庫県(園田、姫路)を上回るレベルまできたというのは、以前の厳しかった時代を知るだけに、隔世の感がある。
今年春以降のことはなかなか予測が難しいが、この売り上げを維持できているのならば、そろそろ全国に向かって名乗りを上げるような高知競馬生え抜きの2歳馬、3歳馬が出てきてもおかしくない。潤沢な売り上げが、賞金増額に繋がり、賞金レベルが上がれば、それに伴って入厩馬のレベルもまた上がる。そうなることで、さらに高知競馬の存在感はよりいっそう増してくるはずだ。
ちなみに黒船賞では、地元高知所属馬が7着スペルマロン(セン7歳)、8着アイアンブルー(セン7歳)、11着ブラゾンドゥリス(セン9歳)という結果であった。
いずれも、中央や他の地方からの転入馬ばかりで、高知で立て直されて元気に走っている馬たち、ということになるだろうが、そろそろ高知デビュー馬の中から、中央勢を迎え撃つような実力馬が出て来ることを切に願いたい。また、それを実現するための環境が整ってきているように思うのだ。