端々にコロナ禍の影響が見られた
2歳戦の開始時期が早まるに伴って、生産地の育成牧場から2歳馬が移動する時期も徐々に早まりつつある。現在、2歳の新馬戦は日本ダービーの翌週からスタートし、翌年3歳夏になると、その世代の未勝利戦がなくなる。かつて秋の福島開催まで実施されていた3歳未勝利戦が、夏の北海道シリーズで姿を消すようになり、どの陣営もできるだけ早期にデビューさせ、まずは何とかひとつ勝たせておきたいと考えるようになっている。
新馬戦開始時期の前倒しは、当然のことながら、POG(ペーパーオーナーゲーム)の関連本を刊行する媒体にも影響を与えている。関連本の刊行時期が確実に早まっており、最近は大型連休前に発売というところが増えてきた。
そのため、私たちのような、カメラマンやライターの現地取材もまた早まってくることを意味する。かつては4月に入ってからでもあちこち取材して回った記憶があるが、今では概ね3月のうちに終了するスケジュールになってきている。
今年、いち早くPOG取材(2歳馬撮影)のニュースを耳にしたのは、確か3月9日ノーザンファームであった。まだ雪の残る時期だが、一部のスポーツ紙などではさっそくその一部が公開され、予想以上の早い始動に驚かされた。
私の場合は、地元浦河周辺での取材がほとんどになる。BTC周辺に点在する育成牧場を中心に、今年は3月22日〜27日の週にまとめて日程が組まれた。
大まかなスケジュールを決めるのは、東京のいくつかの媒体の仕事である。有力どころの大手育成牧場の撮影日程をまず決めて、その前後に他の育成牧場の取材が組み込まれて行く。さながら、難解なパズルを解くようなものだ。
ここ何年かは、東京から「週刊Gallop」の編集者兼ライター(浦河方面担当)が出張してくるので、その人と一緒に1週間行動する。取材は、基本的に牧場の調教担当者や経営者などから推奨馬1頭ごとのコメントを頂くことと、立ち写真の撮影の2本立てである。
ここで問題になるのは立ち写真撮影の方で、こればかりは天候に左右されるため、なかなか予定通りには片付かない。それで、しばしばコメントを頂く方が先に進み、撮影は「後ほど」ということになる。また大手育成牧場の場合は、他の媒体との「合同撮影」になるので、この日程を変更するのはかなり厄介な仕事だ。雪でも降ってしまえばどうしようもないが、曇りがちならば強行することが多い。日を改めて、となると、複数媒体の取材陣の都合を合わせることが難しくなるからだ。もちろん牧場側の意向もあって、我々、取材を「させて頂く」立場では、わがままなことは言えない。当然ながら、先方の希望、予定を最優先しなければならないのである。
コロナ禍の今年は、東京方面からの遠征を諦めた媒体もあった。また育成牧場によっては、合同の「囲み取材」に代わり、各馬のコメントを文書化して配布する方式に変更したところもある。できるだけ密になるのを防ぐ目的で、やむなくそうしたのだ。
浦河地区の最大手である吉澤ステーブルは、あらかじめ「カメラマンは北海道在住組だけにして頂きたい」との希望があり、例年より少ない5人での合同撮影であった。
吉澤ステーブルでは北海道在住のカメラマンのみで合同撮影が行われた(写真はディープインパクト産駒の牝馬、ロールアップ)
例年ならばそれに東京から遠征してきた数人が加わるのだが、今年は「なるべく少人数で」という申し合わせにより、こうなった。いずれも良く知るメンバーで、ここ10年、ずっと変化がない。改めて見渡すと、競馬のメディアの世界はあまり新陳代謝が進んでいないように思う。依然として同じような面々がコメントを取り、文章化し、写真を撮っているのだ。これはいったいどういうことか。新人が入ってこないのは、どこに原因があるのか。
ところで「新人が入ってこない」のは、生産地の牧場でも同様で、今回BTC周辺の育成牧場を取材して歩いても、日本人騎乗者の割合がますます減ってきているように感じた。
直近の浦河町における外国人登録者数の国別内訳は、次の通り。インド人208人、フィリピン人44人、ベトナム人9人、ネパール人8人、マレーシア人7人、韓国人8人。以下数国あるがいずれも5人以下と少ない。
圧倒的多数を占めるのがインド人で、その大半が育成牧場で調教に従事する騎乗者と思われる。フィリピン人、マレーシア人もおそらく同様だろう。夫人や子供など、家族も一緒に来日している例もあるが、ざっと計算するとインド人やフィリピン人、マレーシア人など約250人前後が牧場で働いていると考えられる。
そうした流れを受け、最近、BTC近くに、インドカリーのお店が誕生した。「BAHARAT RESTAURANT」という。本場のカレーが売りのお店で、日本人の利用客も多いという。
▲▼インドカリー店「BAHARAT RESTAURANT」
一度だけ入店したが、カレーを提供するだけではなく、店内にはインドから直輸入した多くの食材も販売されている。インド人の増加とともに、ますます高まるインド食材の需要にも応えるべく、こうしたお店ができているのである。この流れはおそらく今後も変わらないだろう。コロナ禍が収束(いつのことになるか、今のところまったく目途が立っていないが)したら、さらに一気に多くの外国人が流入してくるのではないか、と思われる。