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高知初の1億円に王手、スペルマロン

  • 2021年09月21日(火) 18時00分

売上が急激なV字回復を見せた今でこその活躍


 20日、高知競馬場で行われた珊瑚冠賞は、単勝1.3倍の断然人気に支持されたスペルマロンが勝利。珊瑚冠賞は昨年に続いての連覇となり、重賞は今年だけで6勝、通算では11勝目とした。

 スペルマロンはスタートで出遅れたものの、そこは1900m戦。ペースはそれほど速くはならず、無理せずすぐに2番手にとりついた。

 単勝1.3倍といっても、今回は未対戦の有力馬が何頭かいて、スペルマロンにとっては不確定要素も少なくなかった。2番人気のクラウンシャインは下級条件から目下9連勝で、前走はオープンの準重賞を制していた。3番人気のハイクアウト、4番人気のペイシャクレアは、ともに中央2勝クラスから転入して、前者は初戦2着のあと4馬身差の圧勝、後者は2連勝。高知ではいずれも底を見せていない成績といっていい。

 ハイクアウト、ペイシャクレアともに、スペルマロンの直後をマークする位置で追走。しかしハイクアウトは馬群の中で前半引っかかるような素振りを見せ、ペイシャクレアも力んだような走り。向正面半ばでハイクアウトが徐々に後退し、3コーナーではペイシャクレアも脱落。そして4コーナー手前、スペルマロンが、逃げていたモルトベーネをとらえ先頭に立ったところで、直後に迫ったのが連勝中のクラウンシャインだった。

 直線を向いて、スペルマロンをとらえにかかったクラウンシャインがそのまま交わしてしまうのではという勢いにも見えた。しかし逆にそこで突き放したのはスペルマロンだった。クラウンシャインに1馬身半差をつけての勝利。3着のグリードパルフェにはさらに8馬身差をつけた。他馬に並びかけられても抜かせない、それこそがスペルマロンの強さなのだろう。

 スペルマロンは、今年5月3日の福永洋一記念を勝った時点で、高知所属馬の高知所属時における獲得賞金の記録を更新していたが、今回の勝利で高知移籍後に稼いだ賞金は9634万5千円となった。

 高知ではこのあと古馬重賞は、11月7日に黒潮マイルチャンピオンシップ、大晦日に高知県知事賞が予定されている。が、スペルマロンはそれより前、次走に予定しているという10月9日の準重賞・アドミラブル賞(1着賞金400万円)を勝てば、大台の1億円達成となる。

 高知競馬といえば、売上がどん底だった時代、1着賞金は高知県知事賞でも135万円で、それ以外の古馬重賞(JpnIIIの黒船賞は除く)は50万円という時代があった。現在の1/10以下だ。

 スペルマロンの存在とその活躍は、高知競馬の売上が急激なV字回復を見せた今であればこそ。売上も賞金も厳しかった時代のことを思えば、高知で賞金1億円などというのは夢のような話だ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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