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控えめな取引続いたセプテンバーセール 2つの市場のバランスを懸念

  • 2021年09月23日(木) 18時00分

牡牝ともに最高価格馬はシルバーステート産駒


 9月21日(火)、22日(水)の日程で、セプテンバーセールが開催された。二日間で478頭(牡204頭、牝274頭)が上場され、346頭(牡163頭、牝183頭)が落札、合計16億9015万円を売り上げた。売却率は72.38%、落札馬1頭当たりの平均価格は牡568万2209円、牝417万4590円、全体で488万4827円であった。

 昨年と比較すると、上場頭数で123頭の減少。落札頭数でも105頭の減少となり、売却率は2.66%のマイナス、さらに売り上げ総額では5億2107万円、平均価格も18100円の微減であった。

 最高価格馬は、339番アマルフィターナの2020(牡青鹿毛、父シルバーステート、母の父シンボリクリスエス)の3410万円(落札価格3100万円)。(有)アクセス・ワンの所有、販売申込馬で、生産は(有)平野牧場、飼養者は(有)チェスナットファーム。落札者は了徳寺健二ホールディングス(株)。

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▲セールを通じて最高価格馬となったシルバーステート産駒のアマルフィターナの2020、▼その落札の様子


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 牝馬では95番ルドラの2020(黒鹿毛、父シルバーステート、母の父Cape Cross)の2640万円(落札価格2400万円)が最高価格馬であった。生産・販売申込者は土田農場。落札者は二宮幸三氏。

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▲牝馬の最高価格馬となった、こちらもシルバーステート産駒のルドラの2020、▼その落札の様子


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 大盛況に終わったサマーセールが終了してから1ヵ月後に開催された本セールは、牡馬よりも牝馬の方が多く、加えて、サマーセールである程度頭数を確保できた購買者が少なくなかったせいもあり、前年から大幅に数字を伸ばすということにはならなかった。

 中間価格は牡で440万円、牝馬で330万円。牡牝合わせた中間価格は357万5000円。生産コストは個々によって異なるので一概には言えないが、種付け料に飼養管理費250万円〜300万円を加えたあたりが損益分岐点と考えると、この中間価格を下回った馬は収支がマイナスになっている可能性がある。

 セリは概ね順調に推移したものの、全体的なムードとしては、サマーセールが5日間を通じてかなり熱気のみなぎる熱いセールだった記憶が未だ生々しく残っている分、やはり控えめな淡々とした取引が多かった印象がある。

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▲控えめな淡々とした取引が続いた印象のある今年のセプテンバーセール


 また、種牡馬によって人気度が極端に偏る傾向があり、今回目についたのは牡牝ともに最高価格馬を輩出したシルバーステート産駒の評価の高さであった。二日間で上場されたシルバーステート産駒は牡6頭、牝3頭の計9頭(欠場1頭)で、全馬が落札された。9頭の売り上げ合計は1億3431万円。1頭平均は1492万3000円である。

 シルバーステートは今年初年度産駒がデビューしており、JRAでは28頭が出走、7頭が勝ち上がっている。稼ぎ頭はベルウッドブラボー。8月7日新潟でダリア賞を制し現在3戦2勝である。半妹のマチャプチャレの2020(父リアルインパクト)は、先月のサマーセールにおいて牝馬の最高価格馬(2640万円、落札価格2400万円、同価格がもう1頭いた)で取引されている。

 とはいえ、こういう注目種牡馬は少なく、サマーセール以上にセプテンバーセールでは、日高(を中心とした)の平均的な生産牧場から上場された“普通の1歳馬”が多数を占めていたことから、落札価格の伸びには繋がらなかった。

 サマーセールは1413頭、今回のセプテンバーセールでは530頭、合わせて1943頭が上場を申し込んでいた。結果的には疾病、怪我その他の事由によりサマーで77頭、セプテンバーで52頭、それぞれ欠場馬が出たが、ざっくり言うと合計約2000頭がこの二つのセールでの販売を希望していたわけである。

 サマーセールの平均価格が688万4860円、そしてセプテンバーセールは前述の通り488万4827円。この差200万円は、やはり生産者にとってはかなり大きく、来年はますますサマーセールの申し込み頭数が増えて、その分セプテンバーセールが減少に向かうのではないか、との懸念も指摘されている。

 日高軽種馬農協の木村貢組合長はその辺を考慮して「サマーとセプテンバーのバランスをどう考えるか、修正すべき時期に来ている」とこの点について触れ、「購買者からもサマーセール5日間の日程は長いという意見を伺っており、できることならサマー4日、セプテンバー3日くらいの配分にしたい。そのためには、何らかの方法を講じなければならないだろう」と話す。

 いずれにせよ、サマー、セプテンバー両市場に合計2000頭の申し込み頭数は、来年も減ることがなさそうなので、セリを主催する日高軽種馬農協には非常に難しい舵取りが求められる。

 なお、今回のセプテンバーセールの売り上げを加算すると、オータムセールを待たずに、現段階で日高軽種馬農協主催の各市場の売り上げが昨年の年間売り上げ記録127億8233万円を上回ったことを付記しておく。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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