ビーアストニッシドは血統的に〇戦法、POGは新種牡馬が多く混沌状態
先週の血統ピックアップ
・3/20 スプリングS(GII・中山・芝1800m)
ハナを切ったビーアストニッシドがアライバルの追撃をハナ差抑えて逃げ切りました。これまで重賞で2、3、4着の成績があったのですが、勝ったのは初めてです。
父アメリカンペイトリオットは現3歳が初年度産駒。父系はウォーフロントを経てダンジグにさかのぼります。ウォーフロントの系統は、ザファクター、デクラレーションオブウォーなど、このところ日本で供用される種牡馬が増えています。切れ味よりもスピードの持続力が持ち味なので、今回のような逃げ戦法は血統的にも合っていました。
母マオリオは不出走馬ですが、その兄弟にライジングリーズン(フェアリーS)、ゴライアス(オープン)、グランフィデリオ(3勝クラス)、リーピングリーズン(現3勝クラス)がいる良血。デビューからここまで6戦、着順が人気を下回ったことが一度もありません。走っても走っても人気にならないタイプなので、次走の皐月賞でも人気を上回る好走が期待できます。
ちなみに、生産牧場のヴェルサイユファームは、旧名を三城牧場といい、ミスパンテールやウインラディウスなど多くの活躍馬を出してきました。夫の死によって代表取締役会長に就任した岩崎美由紀さんが元タカラジェンヌなので、「ベルサイユのばら」にちなんでヴェルサイユファームに改名したという次第です。
・3/21 フラワーC(GIII・中山・芝1800m)
好位を追走したスタニングローズがニシノラブウインクを半馬身とらえて快勝しました。父キングカメハメハはこの世代がラストクロップ。2006年生まれの初年度産駒から14世代すべてで重賞勝ち馬を出したことになります。
フランス産のローザネイを始祖とするファミリーは「薔薇一族」との愛称で親しまれ、3代母ロゼカラーはデイリー杯3歳Sを、2代母ローズバドはフィリーズレビューとマーメイドSを勝っています。ただしここ数年、その愛称を耳にする機会が減っていたのも事実です。
あれだけ華やかだったファミリーが少しずつ活躍の機会を減らし、重賞勝ち馬は2011年の京都大賞典(勝ち馬ローズキングダム)を最後に途絶えていました。スタニングローズは11年ぶりの重賞勝ち馬となります。このファミリーはキングカメハメハ系との相性に優れ、ローズキングダム(最優秀2歳牡馬)とスタニングローズは父が同じで母同士が親子という4分の3同血です。
スタニングローズの姉ロサグラウカ(オープン)は父がルーラーシップで、その父はキングカメハメハです。ローズキングダムがジャパンCを勝っているように、スタニングローズも2400mは問題ないでしょう。
今週の血統注目馬は?
・3/26 春風S(3勝クラス・中山・ダ1200m)
中山ダート1200mに強い種牡馬はアジアエクスプレス。これまでに産駒が93回走って28回連対しています。連対率30.1%。2012年以降、当コースで産駒が20走以上した183頭の種牡馬のなかで第3位という好成績で、当レースに産駒が登録している種牡馬のなかではトップです。
産駒のシゲルヒラトリは、当コースでこれまでに6回走って[3-1-1-1]。3勝クラスに昇級後は12、6着と大敗していますが、前者は1400m、後者は阪神遠征と、それぞれ敗因がありました。最も得意とするコースに戻ればチャンスはあります
今週の血統Tips
先週終了時点で現3歳世代のJRA重賞勝ち馬は17頭を数えます。そのうち5頭は父が新種牡馬です。
ジオグリフ(父ドレフォン)、ウォーターナビレラ(父シルバーステート)、イクイノックス(父キタサンブラック)、プルパレイ(父イスラボニータ)、ビーアストニッシド(父アメリカンペイトリオット)。17頭中5頭はかなりのハイアベレージです。デビュー直前の昨年春時点では、正直なところそれ以前の2世代と比べて、新種牡馬のラインナップが強力とは思えなかったのですが、蓋を開けてみれば大健闘しています。
上記の5頭だけでなく、ラブリイユアアイズ(父ロゴタイプ)、リメイク(父ラニ)、デシエルト(父ドレフォン)、ジャスティンスカイ(父キタサンブラック)といった有望株も控えています。現2歳世代からディープインパクト産駒がほとんどいなくなり(この世代がラストクロップで血統登録頭数は6頭)、種牡馬界はますます混沌としています。軸となる種牡馬が見えづらい状況なので、有能な繁殖牝馬がいろいろな種牡馬に分散していることも、混戦にますます拍車を掛けています。
POGはきわめて難解なものになるでしょう。