単勝オッズ58.7倍(8番人気)のポタジェが勝利(c)netkeiba.com
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
ごく近年は上位人気馬の好走率が非常に高い
AIマスターM(以下、M) 先週は大阪杯が行われ、単勝オッズ58.7倍(8番人気)のポタジェが優勝を果たしました。
伊吹 1〜5着の5頭は、いずれも4コーナーを6番手以内で通過した馬。結果的に、道中のポジションが明暗を分けましたね。ポタジェはインの5番手を追走し、先行勢の外に持ち出しながらゴール前の直線へ。粘るレイパパレ(2着)をかわしつつ、後ろから伸びてきたアリーヴォ(3着)の追撃も凌ぎ切ったわけですから、鞍上の吉田隼人騎手にとっても会心の勝利だったのではないでしょうか。
M 2着のレイパパレは単勝オッズ9.2倍(3番人気)、3着のアリーヴォは単勝オッズ47.5倍(7番人気)で、3連単の配当は53万7590円。2週前の高松宮記念(3連単278万4560円)に続き、2週連続でGIが高額配当決着となりました。
伊吹 単勝オッズ1.5倍(1番人気)のエフフォーリアは9着に、単勝オッズ3.7倍(2番人気)のジャックドールは5着に敗退。両馬が揃って崩れると予想していた方は多くなかったと思います。競馬という競技の性質上、どんな馬にも多かれ少なかれ不安要素はあるものですが、エフフォーリアもジャックドールも「結果に影響する可能性は低いと思われた不安要素が顕在化してしまった」という印象です。
M 勝ったポタジェはGI初制覇。母のジンジャーパンチは現役時代にアメリカのG1を6勝した名牝で、半姉にはJRA重賞を4勝したルージュバックがいます。
伊吹 1歳時のセレクトセールでは1億9000万円(税込み2億520万円)の値がついていましたね。GIどころか重賞のタイトルにもなかなか手が届かず、もどかしい思いをしていたはずですし、陣営にとっても感慨深い一勝だったのではないでしょうか。
M 今後のGI戦線でも活躍を期待できそうですね。
伊吹 既に5歳とはいえ、まだキャリア15戦。これだけの良血馬ですから、更なる上積みがあったとしても驚けません。伸びしろの部分をしっかりと意識しつつ、各レースで取捨を検討していこうと思います。
M 今週の日曜阪神メインレースは、3歳牝馬クラシック競走の桜花賞。昨年は単勝オッズ3.6倍(2番人気)のソダシが優勝を果たしました。2021年は2着も単勝オッズ3.3倍(1番人気)のサトノレイナスで、3連単の配当は1万400円どまり。どちらかと言えば堅く収まりがちな印象です。
伊吹 一応、過去10年の単勝人気順別成績を見る限りだと、上位人気馬の好走率が極端に高いわけではありません。
M 単勝1番人気馬は1勝どまりで、3着内率も50.0%。あまり信頼しない方が良いのでしょうか。
伊吹 ただ、2017年以降の単勝1番人気馬は3着→2着→4着→2着→2着と、それぞれ上位に食い込んでいます。2016年以降の過去6年に限ると、単勝3番人気以内の馬は[5-5-3-5](3着内率72.2%)、単勝4番人気以下の馬は[1-1-3-83](3着内率5.7%)。ごく近年の傾向からは、堅く収まりがちなレースと言って良いでしょう。
M そんな桜花賞でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、アルーリングウェイです。
伊吹 今週も人気薄を狙ってきましたね。実績は十分にある馬なのですが、今回のメンバー構成でどこまでやれるのかについては、意見が分かれるところだと思います。
M 前走のエルフィンSを快勝し、収得賞金の上積みに成功。デビュー2戦目の万両賞で2着に敗れていますが、このレースの勝ち馬は後にシンザン記念を制すマテンロウオリオンでした。重賞初出走とはいえ、未知の魅力に溢れた一頭です。
伊吹 AiエスケープはいきなりのGI挑戦でも十分にチャンスがあると判断した模様。これまでのレースデータから、その根拠となるような強調材料を見つけ出したのでしょう。私は桜花賞の傾向から、この馬の好走確率を見積もっていきたいと思います。
M エルフィンSから直行してきたため、今回は中8週での参戦となりますが、この点についてはどうお考えですか?
伊吹 まったく問題ないでしょう。過去10年の3着以内馬30頭中27頭は、前走との間隔が中4週以上。逆に、前走から中3週以内の馬は苦戦していました。
M はっきりと明暗が分かれていますね。
伊吹 前走との間隔が中3週以内だったにもかかわらず3着以内となった3頭は、いずれもフィリーズRを経由してきた馬。ただし、前走のレースがフィリーズRだった馬も2012年以降[1-0-2-49](3着内率5.8%)ですから、あまり強調できません。フィリーズR組・アネモネS組・フラワーC組よりは、チューリップ賞以前の前哨戦から直行してきた馬を重視したいところです。
M なるほど。ならば、実績面はいかがでしょうか。やはり重賞初出走である点は気になるところですが……。
伊吹 この点もあまり心配しなくて良いと思います。実績馬の方が信頼できるのは確かで、“JRA、かつGIのレース”において3着以内となった経験のある馬は2016年以降の過去6年に限ると[3-4-3-8](3着内率55.6%)。ただし、この経験がなかった馬のうち、前走の距離が1600m、かつ前走の上がり3ハロンタイム順位が2位以内だった馬はまずまず健闘していました。
M アルーリングウェイは前走のコースが中京芝1600m、そして前走の上がり3ハロンタイム順位が2位です。
伊吹 このコースが合いそうなタイプであることは前走で証明したわけですし、相応に高く評価して良いでしょう。
M 逆に、不安要素と考えているポイントは何かありますか?
伊吹 2走前の万両賞で2着にとどまった点ですね。2016年以降の3着以内馬18頭中17頭は、重賞を除く右回りのレースで一度も敗れたことがない馬でした。
M これはなかなか興味深い傾向ですね。
伊吹 戦績の安定感を重視すべきなのだと思います。左回りや重賞のレースにおける敗戦は状況次第で度外視可能ですが、その他のレースはすべて勝っているくらいの馬でないと、積極的には狙えません。
M ただ、先程も触れたとおり、万両賞で敗れた相手は後の重賞ウイナーであるマテンロウオリオン。大きく評価を下げる必要はなさそうにも思えますが……。
伊吹 まったくもっておっしゃる通り。人気サイドの馬ならともかく、人気薄の馬であれば許容範囲内の減点だと思います。Aiエスケープも狙い目と見ているわけですし、妙味ある伏兵の一頭として買い目に組み込みたいです。