▲2022年セール最高額の4億5000万円で落札されたモシーンの2021(提供:日本競走馬協会)
今年で25回目の節目を迎えたセレクトセール(日本競走馬協会主催)が7月11、12の両日、北海道苫小牧市のノーザンホースパークで行われた。この市場に関しては、どれほどはね上がった指標が出ても、もはや慣れっこで少々のことでは驚けないが、2日間の売却総額が257億6250万円、1歳、当歳両部門の売却率がともに95.3%と聞けば、呆れるばかりだ。1歳233頭、当歳236頭の上場に対し、未売却が各11頭。売れ残った馬が「訳あり」に見えるほどだ。コロナ禍に直撃された過去2年に比べて、社会が正常軌道に近づいたように見える一方で、ロシアのウクライナ侵攻に端を発する資源高、インフレは世界経済に影を落としており、今後の成長鈍化が懸念される。長く実現しなかった2%のインフレ目標が、輸入品などのコスト上昇で「達成」されてしまう状況下で、一般家計は食料や日用品の10円、20円の単価の差に神経を使う。そんな社会の雰囲気もどこ吹く風の局所バブルの宴に、「悪目立ち」が気になってくる。
父馬不問の過熱市場
1頭平均の売却価格は1歳5797万2973円、当歳5730万円だった。かつて栗東・森秀行調教師が自著で、「中央競馬で馬主として成功するためには、5000万円程度の馬を10頭そろえる必要がある」と記したことがある。5000万円と言えば、競馬のバックヤードを知る人なら10人中10人が「高馬」と思う水準だが、その額でも平均に届かない市場は、もはや理解の範疇を超える。しかも、今回は国内生産を長く支えてきた種牡馬の1頭であるハーツクライが、1歳部門に最後の上場となる6頭を送った。次代の生産界をリードする種牡馬がまだ見えない状況にもかかわらず、平均価格は前年を大きく上回った。昨年は1歳約5147万円、当歳が約5128万円。ここ2年は1歳、当歳の売却総額、売却率とも似通っていて、今年はそれぞれ12%前後もはね上がった。今回、売買された馬の相当部分が、JRAで1勝もできずに終わると予測される点を考慮すれば、全く浮世離れした金額である。
種牡馬ごとに見ると、目立ったのはエピファネイアで、