先週の土曜日、石神深一騎手がアサクサゲンキで小倉サマージャンプを制し、史上初の障害重賞完全制覇(10レース)をなし遂げた。同時に、高田潤騎手、森一馬騎手に次ぐ、史上3人目の「障害重賞全6場制覇」も達成。さらに石神騎手は代替開催となった中京でも障害重賞を勝っているので、ただひとりの「障害重賞7場制覇騎手」にもなった。
これが石神騎手にとって障害通算101勝目だった。3週前、8月13日に、小倉で史上29人目、現役9人目の障害通算100勝を達成している。もちろんこれでも十分素晴らしい数字なのだが、私は、もっとたくさん勝っているように感じていた。
というのは、通算勝利数より先に、石神騎手の「障害重賞通算勝利」が史上最多の20勝台である、という情報が頭にあったからだ。先週の小倉サマージャンプが、障害重賞通算23勝目。それだけ重賞を勝っているのだから、障害通算の勝ち鞍は、歴代最多の熊沢重文騎手の256勝とそう大きな差はないように思い込んでいたのだ。
が、実際は、半分にも満たない101勝。そのうち、23勝が重賞で、うち10勝がJ・GIというのが石神騎手らしさだ。実に効率よく、大きな舞台を勝っている。
この人の勝率はどうなっているのだろう。
先週終了時で、障害では通算1033戦101勝。勝率は9.8%。
意外と低いが、大舞台になると数字が跳ね上がる。
重賞では77戦23勝で29.9%。J・GIでは20戦10勝で50.0%と、凄まじい。J・GIIでは28/6%、J・GIIIでは19.4%であるから、舞台が大きくなればなるほど勝率が上がっているのだ。
オジュウチョウサンの主戦であるから、J・GIの勝率が高くなるのは当然だとしても、驚くべき数字である。
もうひとり、データを調べていて気になった騎手がいる。石神騎手よりひと足早く「障害重賞全6場制覇」をなし遂げた森一馬騎手だ。
石神騎手がデビュー22年目の40歳なのに対し、森騎手はデビュー12年目の29歳。石神騎手より10期も下でありながら、これだけ各地で重賞を勝っている森騎手の勝率はどうなっているのか。
調べてみると、石神騎手とは対照的な、イーブンな勝ち方をしていることがわかる。
障害での通算は558戦84勝で、勝率は15.1%。重賞では60戦9勝で15.0%。J・GIからJ・GIIIまでグレードごとの勝率も、13%台から15%台と大きな差はない。連対率、複勝率も同じような傾向だ。平場でも重賞でもまんべんなく、比較的高い確率で上位に来ている。
石神騎手にとってのオジュウチョウサンのように、森騎手のお手馬には、2020年の中山大障害と21年の中山グランドジャンプを勝ったメイショウダッサイがいる。石神騎手が障害通算101勝のうち16勝をオジュウで挙げているように、森騎手は障害通算84勝のうち9勝をダッサイでマークしている。こう見ていくと、森騎手の成績にはもっと偏りがあってもいいように思われるが、バランスの取れた勝ち方をしている。いつでもブレイクする準備はできている、といったところか。
この「障害重賞全6場制覇」を初めてなし遂げたのは高田騎手で、2001年の小倉サマージャンプ(ヒサコーボンバー)から10年の新潟ジャンプステークス(コウエイトライ)まで足かけ10年で達成した。
次が森騎手で、15年の京都ジャンプステークス(ダンツミュータント)から21年の阪神スプリングジャンプ(メイショウダッサイ)までの足かけ7年。
石神騎手は、2013年の新潟ジャンプステークス(アサティスボーイ)から今年までの足かけ10年でなし遂げた。
障害の記録を見ていると、いろいろ発見があって面白い。
熊沢騎手は、2021年10月に障害通算255勝目を挙げ、星野忍元騎手が1996年の中山大障害(ポレール)でマークした障害通算254勝という記録を25年ぶりに更新した。その後は怪我もあって1勝しかできておらず、現時点でも僅かに2勝上回っているだけだ。
石神騎手が持っている障害重賞通算勝利記録も接戦で、2位が白浜雄造騎手の21勝、3位が西谷誠騎手の20勝、4位が高田騎手の19勝、5位が熊沢騎手の17勝とつづく。
小倉サマージャンプの翌日、日曜日の札幌では、武豊騎手がWASJ(ワールドオールスタージョッキーズ)を優勝。前身のWSJS(ワールドスーパージョッキーズシリーズ)で92年に優勝して以来、30年ぶり、2度目の制覇として注目された。
南北で、騎手が脚光を浴びた週末だった。