ジャパンカップに参戦する予定だった凱旋門賞馬アルピニスタが故障のため、来日せずに現役を退くことになった。日本の競馬と凱旋門賞が本当に「同種目だが別競技」なのかを示してくれるチャンスだと思っていたのだが、残念だ。いいお母さんになってほしい。
エリザベス女王杯でしんがりに終わったマジカルラグーンも回避することになったが、それでも今年のジャパンカップには5頭の外国馬が参戦する。うち3頭が、勢いがあって斤量面でも有利な3歳馬というのが面白い。
その1頭のオネストは、今年の凱旋門賞で10着。シムカミルは、ニエル賞を勝ったが凱旋門賞をスキップしてここへ。テュネスも凱旋門賞には出ていないが、昨年凱旋門賞を制し、今年は3着だったトルカータータッソの半弟だ。
そして、6歳牝馬のグランドグローリーは、昨年のジャパンカップで5着、今年の凱旋門賞でも5着。6歳牡馬のブルームは、昨年の凱旋門賞で11着、今年は8着。
これら5頭の陣営も、「別種目」だと思っていたら、いくら招待レースとはいえ、リスクの伴う遠征などしないと思うのだが、どうだろう。
ともあれ、久しぶりにジャパンカップらしいジャパンカップになりそうで、楽しみだ。(編集部注:コラム公開後にブルームの回避が発表されました)
そのジャパンカップの前週、今週末に行われるマイルチャンピオンシップで人気になりそうなソダシの肌に、黒い斑点が出はじめたと話題になっている。発信源は東京スポーツの記事だった。
写真を見ると、なるほど、母のブチコのダルメシアン柄ほど大きなものではないが、ポツポツと小さな斑点がある。伯母であるユキチャンの目元にもそれがあって、ちょうどアイラインのようになっていたのを思い出す。これは色素が沈着したシミのようなものなのか。
芦毛は成長するに従って白くなっていくことで知られているが、これも加齢による変化なのだろうか。加齢といっても、ソダシはまだ4歳だ。秋になったとはいえ、人間ならまだ20代だろう。
最近、人間界では「老化細胞」なるものが注目されており、若い人にも発生するのだという。にわか勉強したところによると、若いうちは癌の抑制や傷の修復など体を守るプラスの働きのほうが強いようだが、中高年になると老化を加速させるマイナスの作用のほうが強くなるようだ。
「老化細胞除去ワクチン」なるものを開発した大学の研究グループもあるという。そうした研究は人間の臨床での実用化を目指して行われているわけだが、ドーピングとはまた別の厄介な問題も起きそうだ。さらに、競走馬にも有効だとなったら、とんでもないことになってしまうのではないか。
できる前から悪用されることを心配しても仕方がないので、このくらいにしたい。が、楽をするために平気で悪さをするやつは本当にいるものだ。と、反ワクチン団体の代表が生活保護費を不正受給して逮捕されたニュースを見てつくづく思った。
楽をして儲けたい。一度もそう考えたことのない人は、まずいないだろう。
私もだ。一度ならず、二度、三度、いや、正直に言うと、いつもである。
反論を恐れずに言うと、競馬が好きな人は、楽をして儲けたいという考えに引きずられやすいのではないか。なぜなら、たまたま高配当にありつき、楽をして儲けた人間をたくさん見ているからだ。
私の仕事も、印税での収入があるので、楽をしていると思われるのかもしれない。確かに、本が何十万部、何百万部と売れれば左うちわだろう。が、初版数千部の場合、年単位の時間をかけて一冊書き上げても、印税は数十万円にすぎない。
本を一冊書くのが大変なのは、文筆業ではない人でも想像がつくと思う。これが、例えば、ネコをキーボードの上で遊ばせて入力したものでもいいならともかく(それもまた大変そうだが)、脂汗を流しながら睡眠時間を削って執筆と推敲を繰り返し、取材のある場合はときに人間関係をこじらせるなどしながら書き上げているのだ。
楽をして儲けたいと思うのだが、楽をすると一銭も入ってこなくなる。
さて、コロナの第8波が、どうやら始まっているようだ。コロナウイルスが典型なのだが、自分の力ではどうにもできない「運」や「流れ」のうち、マイナスのものは、わりと頻繁に向こうのほうからやってくる。
いいほうの「運」や「流れ」は、黙っていても向こうから来てくれるものではないから楽ではないのだが、自分が強くなれば、そうしたものを引き寄せることができるのだと、先週のエリザベス女王杯を大外枠から馬場のいいところだけを回って勝ったジェラルディーナを見て思った。
あの馬だって、自然に強くなったわけではない。頑張ったから強くなったのだ。
人間もそうで、頑張った人だけが楽をできるのだ――という、当たり前の話になってしまった。