ジオグリフを世界へ送り出す木村哲也師(撮影:下野雄規)
昨年はイクイノックスの有馬記念などGI3勝を挙げ、優秀厩舎賞関東1位に輝いた木村哲也調教師(50)。海外でもオーソリティがサウジアラビアのネオムターフCを制すなど、大活躍でした。そんな木村厩舎が今年もサウジに遠征。世界最高賞金レース・サウジカップに皐月賞馬ジオグリフで挑みます。参戦を決めた経緯や、中間の気配、海外遠征から得られるものなど、たくさん話を聞かせていただきました。
(取材=東京スポーツ・藤井真俊)
皐月賞の前、既に世界から注目されていたジオグリフ
──芝のGIホース・ジオグリフでのサウジカップへの挑戦。以前からこのプランは頭にあったのでしょうか?
木村 お父さんが米国で活躍したドレフォンですからね。ダートに対する漠然としたイメージはありましたけど、何と言っても皐月賞馬ですから。昨年はダービーが終わった時点で、下半期は天皇賞・秋から香港に遠征する構想でしたし、具体的な計画は香港カップの後からでした。でもそういった血統背景から、ダート挑戦のオーダーに関して驚きはなかったです。もっとも「いきなりサウジか!」とは思いましたけど(笑)。
──芝で走っていた馬をダートに使うにあたって、調教内容を変えたりするのでしょうか?
木村 そこはまだ試行錯誤というか、研究中ですね。ただそういった部分も解明していかなければならないと思ってるんです。栗東に比べて、美浦の方がダートのトップホースが少ない。そして美浦では高木登厩舎がほぼ独壇場といっていいほどの成績を残している。これらには絶対に理由があるはずですから。
──昨年の暮れには香港カップでジオグリフにとって初めての海外遠征を経験しました。レースでは見せ場十分の6着と健闘しましたが、調整過程は順調だったのですか?
昨年は初の海外遠征を経験(c)netkeiba.com
木村 いえいえ。普段はとてもアグレッシブでカイバ食いもいいタイプなのですが、ほんの100メートルほど離れた検疫厩舎に入った途端にナーバスになってしまったんです。
──え!? 普段のジオグリフの姿からは想像できません。
木村 ですよね。食いが落ちて体もしぼんで、ドーンと体調が落ちました