1番人気想定のスターズオンアースは危険な人気馬か(c)netkeiba.com、撮影:下野雄規
春の最強牝馬決定戦としてすっかり定着したヴィクトリアマイル、直線の長い東京芝1600メートル・コースということで末脚自慢がそろうレースです。特に前週の(同コースGI)NHKマイルカップでは派手な追い込みが決まることも少なくはないだけに、その再現を狙う向きも少なくはないのでしょう。
しかし創設から17年が経過して見えてきたヴィクトリアマイルの傾向は、意外なほどの前残り。“前走上がり最速、もしくは2位”でヴィクトリアマイルを優勝できた馬は過去17年で2017年アドマイヤリードの1頭だけであり、延べ65戦1勝というちょっと信じがたい数字にもなっています(勝率1.5%)。
しかし上がり3ハロンのタイムが「速いから良くない」と言うのもおかしな話ですね。それだとヴィクトリアマイルを勝たせるためには、直線をゆっくり走らせたほうが良いということにもなってしまいます。
そうではありません。速く走るのが良くないのではなく、つまりは後方で末脚に賭けるようなレース運びが良くないということです。そこで調べてみたのが“4コーナー10番手以下”での勝ち鞍を持っていた馬の、ヴィクトリアマイルでの成績。やはりこれらの馬は人気を集める割に走れてはいませんでした。
■ヴィクトリアマイル出走馬、4コーナー10番手以下での勝ち鞍
あり 128戦【 5- 4- 8-111】勝率4% 単回収 16% 複回収 51%
なし 174戦【12-13- 9-140】勝率7% 単回収105% 複回収135%
合計 302戦【17-17-17-251】勝率6% 単回収 68% 複回収 99%
※JRA競走のみ
今年の出走メンバーで“4コーナー10番手以下”での勝ち鞍を持っている馬はイズジョーノキセキ、ソングラインとサブライムアンセムの3頭だけなのですが、1番人気想定のスターズオンアースは先に“65戦1勝”というデータを出した“前走上がり最速、もしくは2位”に該当する馬。4角9番手での桜花賞勝利や大阪杯2着、4角14番手での秋華賞3着があることから、それらに準ずる危険な人気馬とカウントしても良いのではないかと考えていますが如何でしょうか?
闇雲にデータだけを見るのではなく、まずは仮説を立て、そこから裏付けとしてのデータ・リサーチ。ウマい馬券では、ここから更に踏み込んでヴィクトリアマイルを解析していきます。印の列挙ではなく『着眼点の提案』と『面倒な集計の代行』を職責と掲げる、岡村信将の最終結論にぜひご注目ください。
■プロフィール
岡村信将(おかむらのぶゆき)
山口県出身、フリーランス競馬ライター。関東サンケイスポーツに1997年から週末予想を連載中。自身も1994年以降ほぼすべての重賞予想をネット上に掲載している。1995年、サンデーサイレンス産駒の活躍を受け、スローペースからの瞬発力という概念を提唱。そこからラップタイムの解析を開始し、『ラップギア』と『瞬発指数』を構築し、発表。2008年、単行本『タイム理論の新革命・ラップギア』の発刊に至る。能力と適性の数値化、できるだけ分かりやすい形での表現を現在も模索している。
1995年以降、ラップタイムの増減に着目。1998年、それを基準とした指数を作成し(瞬発指数)、さらにラップタイムから適性を判断(ラップギア)、過去概念を一蹴する形式の競馬理論に発展した。『ラップギア』は全体時計を一切無視し、誰にも注目されなかった上がり3ハロンの“ラップの増減”のみに注目。▼7や△2などの簡単な記号を用い、すべての馬とコースを「瞬発型」「平坦型」「消耗型」の3タイプに分類することから始まる。瞬発型のコースでは瞬発型の馬が有利であり、平坦型のコースでは平坦型に有利な流れとなりやすい。シンプルかつ有用な馬券術である。