アルゼンチン共和国に出走予定のゼッフィーロ(c)netkeiba.com
伝統のハンデ戦、長距離GIIのアルゼンチン共和国杯。このレース勝ち馬の大多数は、次走GI・ジャパンCやGI・有馬記念に参戦し、2008年にはスクリーンヒーローがジャパンC、2015年にはゴールドアクターが有馬記念を制するなど、近年特に注目度を増してきたレースです。
アルゼンチン共和国杯の特徴と言えばまず第一にハンデ戦、そして2500mの距離でしょう。つまりは長距離戦であるということ。競走馬の長距離適性を見抜く手段として、気性や馬体のつくり、過去の距離経験などを参照する手法がありますが、データ的には"距離延長時の好走率"。特にキャリアの多い古馬の長距離重賞ではここを気にすると良いかも知れません。
たとえば東京競馬場が改修された2003年以降のアルゼンチン共和国杯、同レース出走前に距離延長時の複勝率が60%以上だった馬の成績を抽出してみましょう。
A群 … 距離延長時の複勝率が60%以上だった馬
B群 … 距離延長時の複勝率が59%以下だった馬
C群 … 距離延長を経験したことのない馬
A群 93戦【13-12-11- 57】勝率14% 単回収102% 複勝率 39% 複回収101%
B群 230戦【 7- 8- 8-207】勝率 3% 単回収 24% 複勝率 10% 複回収 38%
C群 1戦【 0- 0- 1- 0】勝率 0% 単回収 0% 複勝率100% 複回収250%
合計 324戦【20-20-20-264】勝率 6% 単回収 46% 複勝率 19% 複回収 56%
※2003年以降、JRA成績のみを集計。
いかがでしょう、このデータだけでもA群とB群の勝率、好走率にかなりの差があることが分かると思います。B群の馬は7勝、15連対の実績があれど、"買ってはいけない"レベルの単複回収率であるとこが見て取れますね。ちなみにC群の1頭は、デビューから3戦連続で1800mを使われたあと、2500mのアルゼンチン共和国杯を使われた2017年3戦3勝の3歳馬セダブリランテス(3番人気3着)でした。
今年のアルゼンチン共和国杯に出走予定馬で"距離延長時の複勝率が60%以上"の馬は下記の11頭。今年は該当馬が例年よりはるかに多く、これだけでは絞り込めない感もあるのですが、これだけではありません。ここからさらにもうひとつ長距離適性を探るデータを併用し、完璧なデータへと仕立て上げる算段があります。
アーティット
グランオフィシエ
ゼッフィーロ
チャックネイト
テーオーロイヤル
ディアスティマ
ニシノレヴナント
ハーツイストワール
プリュムドール
マイネルウィルトス
レッドバリエンテ
闇雲にデータだけを見るのではなく、まずは仮説を立て、そこから裏付けとしてのデータ・リサーチ。ウマい馬券では、ここから更に踏み込んでアルゼンチン共和国杯を解析していきます。印の列挙ではなく『着眼点の提案』と『面倒な集計の代行』を職責と掲げる、岡村信将の最終結論にぜひご注目ください。
■プロフィール
岡村信将(おかむらのぶゆき)
山口県出身、フリーランス競馬ライター。関東サンケイスポーツに1997年から週末予想を連載中。自身も1994年以降ほぼすべての重賞予想をネット上に掲載している。1995年、サンデーサイレンス産駒の活躍を受け、スローペースからの瞬発力という概念を提唱。そこからラップタイムの解析を開始し、『ラップギア』と『瞬発指数』を構築し、発表。2008年、単行本『タイム理論の新革命・ラップギア』の発刊に至る。能力と適性の数値化、できるだけ分かりやすい形での表現を現在も模索している。
1995年以降、ラップタイムの増減に着目。1998年、それを基準とした指数を作成し(瞬発指数)、さらにラップタイムから適性を判断(ラップギア)、過去概念を一蹴する形式の競馬理論に発展した。『ラップギア』は全体時計を一切無視し、誰にも注目されなかった上がり3ハロンの“ラップの増減”のみに注目。▼7や△2などの簡単な記号を用い、すべての馬とコースを「瞬発型」「平坦型」「消耗型」の3タイプに分類することから始まる。瞬発型のコースでは瞬発型の馬が有利であり、平坦型のコースでは平坦型に有利な流れとなりやすい。シンプルかつ有用な馬券術である。