▲阿部調教助手からイクイノックスへの手紙(撮影:下野雄規)
引退が発表された“世界ナンバーワンホース”のイクイノックス。今春、ドバイシーマクラシックを制覇した後から世界ランク1位として歩み続け、栗東滞在からの宝塚記念、同世代のダービー馬・ドウデュースと再戦した天皇賞(秋)、そして三冠牝馬リバティアイランドと対決したジャパンCと、全てにおいて勝利を収めました。そのプレッシャーたるや想像に難くありませんが、共に歩んだ日々は陣営にとってかけがえのない日々でもありました。
一番近くで寄り添ってきた人たちは同馬の引退、種牡馬入りをどんな思いで迎えたのでしょうか。担当の楠友廣調教助手(前編)、調教担当の阿部孝紀調教助手(後編)がこれまでの思い出を手紙にしたためました。
前編はこちら▼
【独占手記】電撃引退のイクイノックスへ(前編)「最後まで最高のパフォーマンスをしてくれてありがとう」楠調教助手より(取材・構成:大恵陽子)
イクイノックスへ。
これだけ強くて顔も可愛くて、すごくファンの多い馬でしたね。ファンの皆様にも感謝していますし、牧場関係者や、僕たちに気遣って言葉をかけてくださったオーナー関係者など、本当にみなさんあってのイクイノックスだと思います。感謝しています。
僕はと言うと、実は燃え尽きちゃって(苦笑)。この手紙を書いているのは引退が発表された翌日で、いつもならトレーニングで走っている時間帯。176cmと身長が高いので、イクイノックスを含めて騎乗馬に負担にならないように体重を抑える意味でも走っていたけど、今日だけは休みました。
この春にドバイシーマクラシックを勝ってレーティングが世界1位になってから、「もう負けられない」というプレッシャーの日々でした。そんな中でも、調教は何でもポジティブに取り組んでいたよね。それで僕も気分が良くなって「本当にいい子だね」と言いながら首を撫でると、またそれでルンルンになっちゃって。大げさに言うと人間がスキップするくらい歩きのリズムが良くなって、首を上下に上手くバランスを取りながらスタスタ歩いていたのを懐かしく思います。首を撫でられるのがそれくらい好きで、木村先生が「褒めて伸びるタイプ」と言っていた通りです。怒ったことはあんまりなかったけど、古馬になって色気を少し出すようになって、牝馬を見つけるとブブブと鳴いたり馬っ気を出した時には「ダメだよ、まだ早いよ」と言いましたね。