▲計7名が処分を受け、2名が騎手引退(撮影:下野雄規)
「騎手とスマホ」は、2024年の競馬界を語る上で不可欠なアイテムとなってしまった。事態の発端と言える昨年5月に発覚した若手騎手6人によるスマートフォンの不適切使用以来、JRAは様々な再発防止策を打ち出してきたが、同様の問題は後を絶たず、24年だけで7人の処分者が出て、うち2人はムチを置く異常事態に発展した。本来は競馬の公正を守るためのスマホ規制が、「競馬が公正に施行されているか」という本質的な問題と別個の問題領域として立ち上がってしまった感がある。こじれにこじれた問題を改めて整理してみたい。
稚拙な偽装で9カ月騎乗停止
発覚時点で見ると、問題は下半期に集中している。7月10日に水沼元輝騎手(22、美浦・加藤和宏厩舎)がスマホの不適切使用で騎乗停止処分を受けた。3月から5月末にかけて居室内に端末を持ち込み、飲食店の予約やネット、SNSの閲覧をしていたほか、5月25日には美浦の調整ルームで外部との通話・通信をしていたことが発覚した。この件では、本人が偽装工作をしていた。入場の際にケースだけを預けるというお粗末な水準だったが、後に決定した処分期間は9カ月(25年2月28日まで)に及んだ。23年に発覚した若手6騎手の処分期間は一律30日(開催日10日)だったが、この件がメディアで大きく取り上げられ、JRAも再発防止策を打っていた状況で起きた問題で、処分期間も長くなった。処分の決定当日、水沼騎手は加藤和調教師とともにメディアの取材に応じ、「恩を仇で返すことなく、これからは行動していきたい」と反省の弁を述べたが、ここで始まった「スマホ騒動」は年末まで続いた。
親族への予想行為、調査非協力…
広い意味で騎手を巡る不祥事と言えば、8月初の「函館芝コース車両侵入事件」があった