上位4着までを4歳馬が独占

天皇賞(春)を制したヘデントール(c)netkeiba
1番人気ヘデントール(父ルーラーシップ)の勝ち時計3分14秒0は、2016年キタサンブラックの3分12秒5、2006年ディープインパクトの3分13秒4、2012年ビートブラックの3分13秒8に次ぐ、京都の天皇賞(春)の史上4位の速いタイムだった。
長丁場だけに芝コンディションの差が大きく影響するが、速い時計を記録した2頭は大変な名馬なので、かなり高いレベルの京都3200mだったことは間違いない。5歳以上馬にビッグネームが限られていたため、上位4着まで4歳馬が独占。3着までを4歳馬が独占したのは「テイエムオペラオー、ラスカルスズカ、ナリタトップロード」で決着した2000年以来のことだった。
一番の好スタートを決め、そこから鞍上のD.レーン騎手が理想のポジションと考えた中団のインを確保したのがヘデントール。向正面でマイネルエンペラー(父ゴールドシップ)、2番人気サンライズアース(父レイデオロ)が早めに動き、さらにはジャスティンパレス(父ディープインパクト)、ショウナンラプンタ(父キズナ)などライバルと思える馬が動くのを確認しながら、包まれる危険を避けるように進路を少し変えつつ外へ。4コーナー手前までヘデントールをうながすことはほとんどなく、動かなかった。
外に回るタイミングが絶妙。もちろんヘデントールに高い能力があってこその天皇賞(春)の勝利だが、道中でまったく馬に負担をかけない騎乗はあまりに見事だった。
父ルーラーシップのGI勝利は香港のクイーンエリザベス2世C2000mだけだが、2000mを超えるGIでも再三好勝負。菊花賞を制したキセキを送っている。
母は海外遠征で抜群の勝負強さを全開するステイゴールド産駒。すでに凱旋門賞の登録は済ませているとされる。まだ9戦[6-2-0-1]。さらに成長する可能性に満ちているヘデントールの秋に注目したい。
勝ち馬をアタマ差まで追い詰めたのはビザンチンドリーム(父エピファネイア)。いつも置かれる脚質で、今回もスパートのタイミングが難しかったが、菊花賞で0秒5差の5着の際に騎乗していたA.シュタルケ騎手は持ち味を十分に承知。繰り出した上がりは最速の34秒9。わずかアタマ差なので見方は分かれるが、残り1ハロン手前では直後まで接近していたので脚を余したとは言えず、ビザンチンドリーム(A.シュタルケ騎手)も能力をフルに爆発させた素晴らしい内容だったとしたい。こちらもヘデントールと同じく今回が9戦目[3-1-0-5]。本格化はこれからのはずだ。
2番人気のサンライズアースは、前走の阪神大賞典より道中の2000m通過が「3秒3」も厳しいペースになったのが苦しかった。3コーナー過ぎから果敢にスパートしたマイネルエンペラーを、手を動かして捕まえに出る流れは想定外だったかもしれない。それでも大バテしたわけではないからスタミナはある。
ただ、パドックでは落ち着き払っているように映ったが、直後のへデントールのように研ぎ澄まされた鋭い馬体ではなかった。530キロの大型馬だけにそう映ってしまうのかもしれないが、4歳馬が上位を独占した今年、スケールはあっても、もっとも完成の途上と思わせる頼りなさが感じられた。鍛え上げれば変身するはずだ。
レース全体の前後半バランスは、「1分37秒9-1分36秒1」=3分14秒0。年によって差は大きいが、2等分すると前半の方が少し楽な流れが、最近増えてきたバランス。
前半に無理がかかっていないから速い走破時計になったと考えることはできる。5着マイネルエンペラー、4着サンライズアースの早めのスパートは必ずしも悪くはなかったが、スタートと直後の1ハロン以外はすべて「11秒台、12秒台」のラップで、息を入れる部分がない流れの中で動いたのが痛かった。
ショウナンラプンタ(父キズナ)は、ほぼ勝ち馬と同じようなレースの進め方で、さすが天皇賞の武豊騎手だったが、勝ち馬、2着馬と約3馬身差は現時点での能力差か。
ジャスティンパレス(父ディープインパクト)は、流れは異なるが2年前の勝利は3分16秒1。確かに脚の使いどころが難しいが、ほぼ同じようなスパートで今年は3分15秒1。これであのあと10連敗。長距離戦でのスケールアップはなかった。