これで国内マイル戦は4戦4勝

安田記念を制したジャンタルマンタル(撮影:下野雄規)
予測された通りあまり流れは速くならず、前後半の半マイルは「46秒7-46秒0」。前半1000m通過は「58秒4」。当日の3歳上1勝クラスが「58秒6」なので、かなり遅いペース。勝ちタイムの1分32秒7は、この10年間で9番目に遅い時計となった。
それも関係して、2着馬に1馬身半(0秒2)の差をつけて快勝したジャンタルマンタル(父パレスマリス)は別に、2着から15着馬までが「1秒0」差以内に入線する大接戦の結果だった。後半800mが前半より0秒7も速い決着になったため、レース運び(脚質)に注文のつく差し馬勢は総じて上位入線は苦しいレースだった。
といっても、強力な先行馬がいなければ東京だからこそ時おり生じるレース展開であり、レースレベルが低かったということではない。1996年に創設されたNHKマイルCの勝ち馬は、早い時期に快時計で東京のマイル戦を激走してしまう反動があるため、安田記念を未勝利だったが、30年も経過してついに勝ち馬が出現した。
3歳時より鋭くシャープな馬体になった印象のジャンタルマンタルは、流れの厳しいマイル戦でも好位につけてレースのできる自在のスピード型。好スタートからたちまち好位の外を確保は理想の位置取り。緩い流れなので少しかかり気味になるほど楽な先行だった。
鞍上の川田将雅騎手が満を持してスパート態勢に入ったのは残り300mを過ぎたあたり。大きな差をつけたわけではなく、走破時計は3歳時のNHKマイルCより遅かったが、歴戦の古馬相手に文句なしの完勝だった。これで国内のマイル戦は4戦4勝。まだ今回が8戦目でGIを3勝。新しいマイルのチャンピオン誕生は衆目一致だ。
坂上から鋭く突っ込んだガイアフォース(父キタサンブラック)は、これで安田記念を「4着(8番人気)、4着(5番人気)、2着(9番人気)」。根強いファンのいる芦毛馬で、初ダートの昨春のフェブラリーSも2着(5番人気)に突っ込んでいる。東京のマイル戦ならもっと人気になっても不思議なかったが、今回は馬体重減だった香港戦よりプラス12キロとはいえ、完調には気配もう一歩と思わせた。いつもより緩いペースになって楽な追走となった展開が味方したのは確かだが、「少々の死角はあってもマイラー型のオープン馬は、ことマイルなら能力通りに激走する」。そんな金言を思い出させた快走だった。
一方、1番人気のソウルラッシュ(父ルーラーシップ)は、かろうじて馬券圏内の3着は確保したものの、これで安田記念「13着、9着、3着、3着」。今年も思わしい結果にはならなかった。追い込みタイプの同馬に流れが不利だったこと、決して大崩れすることなくタフに走り続けてきたが、パドックで前肢の歩様がやや硬く映ったことなど、今回は必ずしも絶好調ではなかったかもしれない。日本の7歳以上馬は2001年のブラックホーク以来、勝っていないこと、東京だとソウルラッシュはスパートのタイミングが難しいことも確かだが、まだ衰えなどなく、コースが変われば勝機はあると思える。
ただ1頭の牝馬だったブレイディヴェーグ(父ロードカナロア)は、このペースなので楽に中位を追走。早めに進出したあと、坂上からもう一回伸びる脚を見せたが、最後にソウルラッシュに競り負けてしまった。残念だが力は出し切っている。
伏兵14番人気のシャンパンカラー(父ドゥラメンテ)が、致命的な出遅れのロスを克服して2着馬と0秒3差の6着。馬群に取り付くのに脚を使ったうえ、直線は大外に回って上がり最速の33秒6だった。5歳馬だがまだ今回が13戦目。展開に恵まれてのたまたまの小差6着ではないので、次走に注目したい。