グレード制導入後、初めての快挙

オールカマーを制したレガレイラ(撮影:下野雄規)
完勝したのは4歳牝馬レガレイラ(父スワーヴリチャード)、2着したのは6歳牡馬ドゥラドーレス(父ドゥラメンテ)。レース前から大きな注目を集め、1番人気と2番人気に支持されたが、「きょうだい」による重賞レースのワン・ツーは、グレード制導入後、初めての快挙だった。
別定重量戦の牝馬の57キロは、レガレイラの最大の長所である切れ味の鋭さを削ぐ心配があったが、道中は悠然と後方を追走して、直線一気。54キロでハナだけ差し切った昨年の有馬記念よりはるかに強かった。
近年のオールカマーは牝馬の快走馬が多いことで知られるが、最近10年間、牝馬は20頭の出走で[5-2-1-12]。素晴らしい成績だ。
オールカマーの長い歴史のなか、ハンデ戦当時を含め牝馬の勝ち馬は何頭もいるが、牡馬なら59キロにも相当する57キロで勝ったのは、1995年のヒシアマゾン(エリザベス女王杯など20戦10勝)に次いで史上2頭目になる。
レガレイラ、ドゥラドーレス妹兄の3代母はウインドインハーヘア(IRE 1991)。ブラックタイド、ディープインパクト兄弟を筆頭に、この牝系ファミリーにはブラックタイプの活躍馬は、数多く存在する。
もう3代母にレガレイラの登場する時代になったが、一族の代表馬ディープインパクト産駒(多くの後継種牡馬)たちを筆頭に、「ブラックタイド→キタサンブラック→イクイノックス」のサイアーラインなどを通して、日本馬の血統図にウインドインハーヘアの名前が出現する馬は、現時点でいったいどのくらいの頭数に達しているのだろう。驚くべき数字が予測される。
レガレイラ陣営は、このあと天皇賞(秋)か、エリザベス女王杯か、あるいはジャパンCを使って、有馬記念に出走のプランを示している。夏の宝塚記念では体調一歩もあって凡走したが、立て直しに成功。まだ成長途上の一面もあったこれまでとは一変の鋭さを加えた。帰国し「ジャパンCを目指すことになる」とされるシンエンペラーとの対決もありえる。
2着ドゥラドーレスは、レース中盤で少し前にいたレガレイラの前に出て、前後半「59秒9-(12秒6)-57秒7」=2分10秒2のスローな流れに乗り、非の打ちどころのなしのレースを展開した。ただ、同じ57キロの牝馬レガレイラに並ぶシーンもなく差し切られてしまった。「勝ち馬の強さに脱帽した」と勝者を称えたが、6歳とはいえ、長期休養もあってまだ12戦[5-3-2-2]。重賞未勝利でもあり、これであきらめたわけではない。「これからまだ大きいところでもチャンスのある馬だと思う」。陣営は今後の活躍を展望している。
簡単に引き下がらないのは7歳ヨーホーレイク(父ディープインパクト)も同じ。再三のブランクを乗り越えまだ十分に若い。最終世代ではないが、ディープインパクト晩年の産駒にふさわしい不屈の闘志は十分ある。
前半1000m通過59秒9はこのメンバーにしては明らかにスローだった。それでいながら勝ちタイムの2分10秒2は、レースレコード。コースレコードとも0秒1差だった。芝コンディションが良かっただけでなく。レースレベルが高かったことを示してもいる。
今回は結果が出なかったが、伏兵視された牝馬ホーエリート、コスモキュランダ、シュバルツクーゲルはまだこれからの4歳馬。奮起一転の秋シーズンに注目したい。